海外競馬ニュース 2020年10月08日 - No.39 - 2
スイススカイダイバー、プリークネスSを制した史上6頭目の牝馬に(アメリカ)[その他]

 スイススカイダイバー(Swiss Skydiver)はプリークネスS(G1)を制した史上6頭目の牝馬となった。10月3日にピムリコ競馬場で施行された同レースで、スイススカイダイバーは最後の直線で後世に語り継がれるほどのスリリングな接戦を繰り広げた末に、ケンタッキーダービー(G1)優勝馬オーセンティック(Authentic)を首差で破るという壮絶なパフォーマンスを見せた。

 オーセンティックは前々で競馬をし、同じ厩舎のサウザンドワーズ(Thousand Words)との先頭争いを演じていた。一方、スカイダイバーはロビー・アルバラード騎手(47歳)を背に、レース前半は内埒沿いをペースに乗って走っていた。そして思い切って先頭に立ち、オーセンティックとの激しい一騎打ちに持ち込んだ。

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 オーセンティックは力強いストライドで進んでいたが、スイススカイダイバーはひるむことなくぎりぎりのところで急襲し、歴史的快挙を成し遂げた。

 アナウンサーのデーヴ・ロッドマン(Dave Rodman)氏は、走破タイムはプリークネスS(約1900m)史上2番目に速い1分53秒28であるとコメントした。なお、セクレタリアトは1973年プリークネスSを1分53秒で制している。

 2009年のレイチェルアレクサンドラの優勝以来の牝馬によるプリークネスS制覇である。このレースを制した他の牝馬には、ネリーモース(Nellie Morse 1924年)、ラインメイドン(Rhine Maiden 1915年)、ウィムジカル(Whimsical 1906年)、フロカーライン(Flocarline 1903年)がいる。単勝12倍でこのレースに臨んだスイススカイダイバーの払戻金は2ドル(約210円)につき25.4ドル(約2,667円)。

 3着のジーザスチーム(Jesus' Team)が9¾馬身も引き離されていたことが、上位2頭の格の違いを示していた。オーセンティック(単勝2.5倍)に次ぐ2番人気のアートコレクター(Art Collector単勝3倍)は3着馬とわずか頭差の4着となった。

 歴史あるピムリコ競馬場において、今年のプリークスネスSは三冠競走の三冠目として秋に開催された。最後の直線に落とされる影は長くなっており、空気はわずかにひんやりし、木の葉は新緑があふれる代わりに黄や赤に色づいていた。

 "オールドヒルトップ"の異名をとるピムリコ競馬場では通常、このクラシック競走は春に施行される。秋のピムリコ競馬場を舞台にした歴史的出来事といえば、1938年11月1日のシービスケットとウォーアドミラルのマッチレースである。それにシーズン終盤にはメリーランドミリオンデー(1986年創設のメリーランド州の種牡馬の産駒限定のレース開催日)が開催される。今年のメリーランドミリオン開催も新型コロナウイルス感染拡大のために遅れて始まった上に無観客開催となったので、歴史的な出来事となるだろう。スイススカイダイバーの馬主ピーター・キャラハン氏が自宅でテレビ観戦を余儀なくされたのは残念なことだ。

 10月までに、3歳馬は5月半ばに比べてずっと大きくなり成熟している。スイススカイダイバーは春にはまだ負かすことができる馬だったが、夏のあいだに力をつけた。そして肉付きが良く万全の態勢で、プリークネスSに挑んだ。

 同馬はガルフストリームパークオークス(G2 3月28日 ガルフストリームパーク)とファンタジーS(G3 5月1日 オークローンパーク)を立て続けに制した。その後西海岸に遠征し、サンタアニタオークス(G2 6月6日 サンタアニタ)で優勝した。マクピーク調教師は春にはすでにプリークネスSについて話しており、スイススカイダイバーを牡馬相手に戦わせるために、ブルーグラスS(G2  7月11日 キーンランド)に出走させ、アートコレクターの2着を確保した。そして、アラバマS(G1 約2000m 8月15日 サラトガ)で楽勝した後、ケンタッキーオークス(G1 9月4日 チャーチルダウンズ)においてシーデアズザデビル(Shedaresthedevil)に1½馬身差の2着となった。

 マクピーク調教師とアルバラード騎手のコンビは、プリークネスSの週はステークス競走出走馬の厩舎で親密に取り組んだ。ケンタッキー州でのレースと調教を通じて旧知の仲である2人は、プリークネスSについては固い絆のようなものがあった。マクピーク調教師はカーリン(Curlin)を購買して同馬の最初のトレーナーとなり、アルバラード騎手が鞍上を務めて2007年プリークネスSを制している。同騎手はこれまで同レースに10回挑戦してきたが、今回が2回目の制覇となった。

 「今週は朝食もランチも夕食も、ロビーとともにしました。私たちは同じ方向性で取り組むことができ、2人の調子もよかったです」。

 「あまり緊張はしませんでした。心構えはできていました。スイススカイダイバーは毎日機嫌がよく、目がキラキラ輝いていました。私を引っ張るように厩舎のまわりを歩いていました」。

 「馬は調子が良ければそれを伝えてくるものです。彼女はいつも機嫌が良いことを示します。本物の牛のようです。自分のやることに得意になっています。馬房の外に出るのが待ちきれないようで、早くから外に出ます」。

 馬群が1周目のゴール板を過ぎた時にレースの主導権を握っていたのはボブ・バファート厩舎のサウザンドワーズとオーセンティックだった。これら2頭は、内埒沿いにいたスイススカイダイバー、外側にいたニューマティック(Pneumatic)、真ん中にいたアートコレクターに追走されていた。400m地点を24秒48、800m地点を47秒65で通過した。

 1000m地点で、アルバラード騎手は牡馬に挑んでいき、オーセンティックの内側を走りながら優位に立った。

 アルバラード騎手は、「向こう正面の半ばで判断しなければならず、すぐに仕掛けて行きました。ずっと内埒沿いを走ることをイメージしていました」と語った。

 一対一の勝負となるには時間はかからなかった。2頭は1600m地点を1分34秒74で通過し、直線の入口に差し掛かった。

 マクピーク調教師は、「1600m地点に到達しようとしているときに不安になりました。このゲームに勝てる保証はなかったからです」と述べた。

 アルバラード騎手は、「相手はケンタッキーダービー馬です。しかるべき敬意を払うべきです。たぶん一度は鞭を入れたでしょうが、彼女は断固として先頭に立っていました」と続けた。

 プリークネスSを7勝、ケンタッキーダービーを6勝しているバファート調教師は今回、貧乏くじを引いた。

 「先頭に立てると思っていました。ベラスケス騎手は"うまく行かなかったので、オーセンティックをサウザンドワーズの後ろに控えさせていた"と言いました。控えるのはあまり得意ではない馬のようです」。

 「優勝馬は素晴らしい牝馬です。オーセンティックは彼女をとらえるチャンスがあったのに、負けてしまいました。ただとらえることができなかったのです。彼女は猛烈に走っていました。タフな牝馬だと思いました」。

 マクピーク調教師は今年の初めにこう語っていた。「スイススカイダイバーの父父がモアザンレディであることは大変好ましいです。もちろん母父のヨハネスブルグも素晴らしいです。2代母のストライクザゴールド(Strike the Gold)ゆずりである程度の持久力があります。彼女の血統には素晴らしい要素が詰まっています」。

 「すばらしいトモで、肩まわりが太く、バランスが良いです。人々は馬についてさまざまな見方をしますが、自身が大事に思っている視点で判断すべきです」。

 スイススカイダイバーの勝利は2020年の異常な出来事ではない。2020年に牡馬に対してその実力を見せつけました。

 同馬の通算成績は11戦6勝(2着3回、3着1回)、獲得賞金は179万2,980ドル(約1億8,826万円)で多大な敬意を払うのに値する。今年のプリークネスSは歴史上はじめてBCクラシック(G1)のチャレンジレースに指定されていることを知らされ、マクピーク調教師は「すごい」ともらした。

By Evan Hammonds

(1ドル=約105円)

[Racing Post 2020年10月3日「Swiss Skydiver Turns Back Authentic to Win Preakness」]