海外競馬ニュース 2020年09月10日 - No.35 - 4
エネイブル、セプテンバーSを楽勝し凱旋門賞に向けて準備万端(イギリス)[その他]

 これが世界一有名な競走馬エネイブルの英国での最後の出走だとすると、歴史を作るパリ遠征に備えるにあたりほぼ最高の出来だったと言えるだろう。そのパフォーマンスは、ジョン・ゴスデン調教師に「いけそうだ」と宣言させた。

 ゴスデン調教師は、8月のヨークシャーオークス(G1)でエネイブルをラヴ(Love)と対戦させることを断固として望まなかった。しかし、セプテンバーS(G3 ケンプトン)での楽勝をうけて、ゴスデン調教師はすべての競馬ファンと同様に、凱旋門賞(G1 10月4日 ロンシャン)での2頭の対戦を心待ちにしている。

 ケンプトン競馬場の最も有名な平地レースでエネイブルとフランキー・デットーリ騎手が2018年と同様に勝利を挙げたとき、コース脇から見ていたゴスデン調教師は「任務完了です」と述べた。

 2018年には優良馬クリスタルオーシャン(Crystal Ocean)と最後の直線で競い合った。しかし今回、エネイブルは他の5頭の出走馬とは別格であり、オールウェザー馬場でずっと先頭を走り確固たる7馬身差で優勝してそれを証明した。

 実際、発走係のロープが顎の下にぶつかったときが唯一ひやりとする瞬間だった。そのためエネイブルはゆっくりとしたスタートしたが、ゴール板は勢いよく駆け抜けた。

 ゴスデン調教師はこう述べた。「鞍をつけているとき、エネイブルは私を蹴ろうとするようなしぐさを見せました。レースで気合いをつけるのは重要なことでした。一戦することは彼女の精神衛生上とても良いことでした。調教のときのように素晴らしいパフォーマンスを見せましたが、競馬場で実際に競走するようなリハーサルはできません」。

 「彼女は今回の出走で良い経験をしたことでしょう。その様子を見られて満足です。ファンが彼女の姿を見られなかったことは残念ですが、人生とはそんなものでしょう」。

 ゴスデン調教師は今や、エネイブルが凱旋門賞でラヴと対戦するときに人生を謳歌できることを望んでいる。エネイブルは史上初の凱旋門賞3勝馬となるために、昨年の2着から着順をひとつ上げることを目指している。

 ゴスデン調教師はラヴについてこう語った。「私たちは英オークスを制したラヴを大いに尊敬しています。エネイブルがヨークシャーオークスに出走していれば、どちらが勝っていたか分かりません。しかし誓って言えますが、2頭は激戦を繰り広げていたでしょう。私は凱旋門賞の7週間半前にヨーク競馬場で激しいレースをさせたくありませんでした。ヨークシャーオークスを使うのは賢明な方法ではなかったでしょう」。

 「フランスの調教師たちがどのようにしているかご存じでしょう。ファーブル調教師が昨年ヴァルトガイストで達成したことを考えてみてください。他の調教師たちからは学ぶところがあります」。

 エネイブルはデットーリ騎手にとってとても大切な存在になっている。カリド・アブドゥラ殿下の名牝に凱旋門賞3勝を達成させることが主な理由で、デットーリ騎手は自身にとって7勝目となる凱旋門賞優勝をどうしても成し遂げたいと考えている。

 デットーリ騎手は、「彼女が勝つだろうとは言いませんが、夢を持っています。それを叶えるのは可能です。ラヴとの戦いは激しいものになるでしょうが、私たちにも勝つ可能性はあります」と語った。

 チャーリー・フェローズ(Charlie Fellowes)調教師は、ステイヤーのプリンスオブアラン(Prince Of Arran)のメルボルンカップ(G1)再挑戦について勝つ見込みがあることを望んでいる。同馬はセプテンバーS で2着のカーステンボッシュ(Kirstenbosch)の僅差の3着となり、満足のいく結果を残した。

 同調教師は、「完璧でした。狙いどおりです。彼は現在やや太めです。休養から戻ってから調教を3本しか走っておらず、もう少し走らせる必要があることは分かっていました。しかし、これ以上望めないような満足な結果を残しました。本番であるメルボルンカップの前に豪州でもう一度走らせようと思います」と語った。

 エネイブルが6歳でも現役を続けることが発表されたときから、最大の目標は凱旋門賞だった。

 デットーリ騎手は、「今日のレースはたいしたものではありませんでした。彼女は独りで気ままにコースを回ってきました」と述べた。

 次のレースはそうはいかないだろう。

By Lee Mottershead

[Racing Post 2020年9月5日「'Game on!' Gosden says Enable is all set for the Love match after Kempton stroll」]