海外競馬ニュース 2020年08月27日 - No.33 - 1
米国の牝馬カンパネッレ、モルニー賞を勝利(フランス)[その他]

 ウェスリー・ウォード(Wesley Ward)調教師は、まずは盟友のフランキー・デットーリ騎手に敬意を表するだろう。ただ、競馬界でもっとも愛されるエンターテイナーはたしかに2週連続で騎手としてドーヴィルのG1を制覇したが、今回の勝利はまぎれもなくウォード調教師と驚くべき牝馬カンパネッレ(Campanelle)のものである。

 同調教師がモルニー賞(G1 直線1200m)3勝目を挙げたことは、特別な目標のために競走馬に調教を積ませて遠征させる事に関して、このアメリカ人調教師の手腕が群を抜いていることを明らかにするものとなった。

 カンパネッレは前走のクイーンメアリーS(G2 約1000m ロイヤルアスコット開催)で優勝している。モルニー賞ではゴール手前でナンドパラード(Nando Parrado)に追跡されているときに前走で見せた実力をさらに際立たせた。なおナンドパラードは2着を確保し、前走コヴェントリーS(G2)を単勝151倍で制したのはフロック(まぐれ)ではなかったことを証明した。3着となったのは、2走目だったにもかかわらず格の高いレースにうまく対応したリズムマスター(Rhythm Master リチャード・フェイヒー厩舎)だった。

 カンパネッレは、帯同馬ウィンク(Wink)がダランベール賞(G3 シャンティイ)での出走に備えているので、今後2週間をシャンティイで過ごす。ウォード調教師はカンパネッレの疲労からの回復を見守る予定であり、9月26日のチェヴァリーパークS(G1 約1200m ニューマーケット)での出走を目指して欧州に滞在する可能性を除外していない。

 ウォード調教師はこう語った。「カンパネッレをチェヴァリーパークSに登録しようと思います。リラックスさせるために、牝馬ウィンクと一緒にシャンティイに送ります。シャンティイは美しい場所です。彼女をそこで休養させ、今後どの進路に向かせるかを決定します」。

 「フーテナニー(Hootenanny)がフランスに遠征したときは(2014年モルニー賞で2着)、そのまま米国に帰国してBCジュベナイルターフ(G1 芝 約1600m)に向けて調教し、勝利をつかみました。今年のブリーダーズカップは私の厩舎があるキーンランド競馬場で開催されますので、彼女を連れて帰ってそこで調教することにワクワクしています」。

 「私たちは状況をじっくり見守り、チェヴァリーパークSを真剣に検討します。素晴らしいレースです。2016年にレディオーレリア(Lady Aurelia)が挑戦したときには、ほぼ勝ったと思ったのですが、最後の10完歩で他馬に囲まれてしまいました」。

 「カンパネッレはレディオーレリアよりストライド(完歩)が大きいので、このレースは合うでしょう。彼女をセリで見いだしたベン・マケルロイ(Ben McElroy)氏、ストーンストリートステーブル(Stonestreet Stables)のバーバラ・バンク(Barbara Banke)氏、そして私との間で、さまざまな意見を出し合って決定を下すでしょう」。

 しかし、カンパネッレの最終的な目標はBCジュベナイルターフ(G1 芝 約1600m)である。パディパワー社は同馬に単勝6倍のオッズをつけ最有力馬としている。

 ウォード調教師はこう続けた。「フランキーが電話してきて、『マイル!マイル!マイル!』と叫びました。私は『心配しなくても彼女はマイルをとても走りたがっているよ』と言いました。将来ある時点でカンパネッレにマイルを走らせたいと思っていますが、それはブリーダーズカップかもしれません」。

 「彼女は大柄な牝馬で、かなりスピードがあります。フロリダで初期調教を始めたときから、そう感じていました」。

 「全くびっくりさせられたのは、英国への遠征前にほとんど時間がなかったにもかかわらず、クイーンメアリーSを制したことです。通常、管理馬を欧州に遠征させる際には、涼しい気候に慣れさせるために十分なレース間隔をとります。彼女の場合は短期間で準備せざるを得なかったのですが、それでも勝つことができました」。

 「今や彼女は素晴らしい結果を残したので、彼女の才能を米国で本格的に開花させることに希望を持ち始めました。ロイヤルアスコット開催からモルニー賞までに十分な間隔があり、彼女は成長し輸送にも慣れました。彼女がAからBに移動する場合、Bに到着するころには新しい環境に適応しています」。

 「彼女のような大きなストライドの牝馬を管理できることはとても運が良いです。それに、真のスプリンターだったノーネイネヴァー(No Nay Never)やレディオーレリアよりも大きな体を持っています」。

 デットーリ騎手は1週間前にパレスピア(Palace Pier)で同じドーヴィルの直線のジャックルマロワ賞(G1 直線1600m)を制している。

 ドーヴィルの裁決委員は、デットーリ騎手が発走直後にカンパネッレを真っ直ぐに走らせなかったことを批判的に見て騎乗停止処分を言い渡した。しかし、騎乗停止期間(3日間)はエネイブルが凱旋門賞のリハーサルとして出走するセプテンバーS(G3 ケンプトン)の翌日から始まる。

 デットーリ騎手はこう語った。「クイーンメアリーSでは本当に驚かされました。彼女はそれ以降も成長し、今では素晴らしく大きなストライドで走ります。彼女は重い馬場に適応しましたが、良馬場ならもっと力を発揮するでしょう。とても賢い2歳馬です」。

 クライヴ・コックス(Clive Cox)調教師はこのレースで2番目に強いことを証明したナンドパラードを絶賛した。

 「良いパフォーマンスをしてくれることを期待しており、彼はそれに応えてくれました。コヴェントリーSで優勝してから特に厳しい調教をしたわけではありませんが、今回2着に健闘したことでコヴェントリーでの勝利がフロックではなかったこと証明しました。私たちは彼の成長具合に関しても満足しています。堅実なパフォーマンスでした」。

By David Baxter

[Racing Post 2020年8月23日「Dettori and Ward make more Morny magic with exciting Campanelle」]