海外競馬ニュース 2020年08月13日 - No.31 - 1
ティズザロー、トラヴァーズSを制してケンタッキーダービーへ(アメリカ)[その他]

 8月8日のトラヴァーズS(G1 3歳 約2000m)で残り3ハロン(約600m)の標識に差し掛かったとき、最強の3歳馬ティズザロー(Tiz the Law)は手強い相手と見られた先行馬アンクルチャック(Uncle Chuck)に並びかけ、サラトガ競馬場の空っぽのグランドスタンドの前で激しい叩き合いに持ち込む態勢に入った。しかしその戦いは長続きしなかった。

 ニューヨーク州産馬ティズザローはアンクルチャックにつけて悠々と走り、最終コーナーでマヌエル・フランコ(Manuel Franco)騎手の手綱が動いたとき、堂々とスパートを開始した。そして、単勝1.5倍で臨んだ第151回トラヴァーズSを5½馬身差で制した。

 単勝12倍のカラカロ(Caracaro)が2着、その2馬身差でマックスプレイヤー(Max Player)が3着。そして4着サウスベンド(South Bend)、5着カントリーグラマー(Country Grammer)、6着アンクルチャック、7着シバリー(Shivaree)と続く。ファーストライン(First Line)は出走取消になっていた。

 例年は5万人以上もの観客が歴史ある競馬場にすし詰め状態となるが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ファンは入場できなかった。また通常"真夏のダービー"と呼ばれるトラヴァーズSは、施行日が9月5日に変更されたケンタッキーダービー(G1 チャーチルダウンズ)のステップレースとなった。

 ティズザローを所有するサカトガステーブル(Sackatoga Stable)のジャック・ノウルトン(Jack Knowlton)氏は、「5万人以上の観客がいてこのレースを見たらどんなに良かっただろうと思いました」と述べた。

 ティズザローはG1・3連勝を達成しただけでなく、これまでのG1成績を4戦4勝としている。また今回の勝利で、ケンタッキーダービーに文句なしの1番人気で臨むことになるだろう。

 ティズザロー(父コンスティチューション)の馬主はサカトガステーブル、調教師はバークレー・タッグ(Barclay Tagg)氏である。このチームは2003年にケンタッキーダービーとプリークネスS(G1)を制したファニーサイド(Funny Cide)を送り出している。ファニーサイドが病気で出走取消となったため、彼らはトラヴァーズSに挑戦するチャンスを失っていた。

 ノウルトン氏は、「17年後に雪辱を果たすことができました。ティズはベルモントSを制し、トラヴァーズSでも勝ちました。ニューヨーク州を拠点とする私たちの小さな厩舎とタッグ調教師にとって、ニューヨーク州で最も重要な2レースで勝利できたことは立派な偉業です。ドキドキしました」と述べた。

 タッグ調教師は、「ずっと前からトラヴァーズSを勝ちたいと思い続けてきました。このレースは長い調教師生活を通じていつも頭の中にありました。なぜかは分かりません。今やそれが実現しました。最高です」と語った。

 トラヴァーズSでのティズザローのパフォーマンスも最高だった。

 同馬は内側に2頭を見る位置で先行馬を追跡し、ルイス・サエス騎手が乗るアンクルチャックのだいたい1½馬身後ろを走っていた。アンクルチャックは2ハロンを23秒65、4ハロンを48秒36、6ハロンを1分11秒95で走った。

 サエス騎手は、「残り4ハロンの地点でティズザローを引き離そうと考えていました。しかしティズザローは力を抑えてゆったりと走っていたので、私たちはスパートがかけられませんでした」と語った。

 フランコ騎手は、いつでもアンクルチャックをとらえられると分かっていた。そして後ろから飛んで来る馬がいるのではないかと警戒し始めた。しかし、最終コーナーでティズザローが合図に反応して猛烈に加速したので、"背筋がゾクッとした"と述べた。

 同騎手は残り100mの標識でティズザローの力を抑えた。それでも、同馬は約2000mを2分00秒95で走って優勝した。トラヴァーズSで歴代5位の走破タイムとなる。これまでこのレースを速い時計で勝ったのは、アロゲート(1分59秒36)、ジェネラルアッセンブリー(General Assembly  2分00秒00)、オネストプレジャー(2分00秒20)である。イージーゴアはこの距離を2分00秒4/5で走った。しかし当時は1/100秒まで測定されなかった。今回のティズザローの走破タイムは皮肉にも、1992年トラヴァーズSを制したニューヨーク州産馬サンダーランブル(Thunder Rumble)の勝ち時計2分00秒99をわずかな差で破った。

 タッグ調教師はこう語った。「彼は最初から最後まで私が考えていたとおりの方法で勝ちましたが、それでもびっくりしました。直線に入ったらアンクルチャックに挑み、できればそのままゴールに向かって前進するだろうと思っていましたが、あまりにもうまく行きました。それはそれで構いません。楽勝できるに越したことはありません」。

 カラカロに騎乗したハビエル・カステリャーノ騎手は、残り2ハロン(約400m)の標識に近づいたときは興奮したが、すぐに冷めたと述べた。

 「興奮したと同時に、ティズザローはスパートをかけて私の視界から消えました。とても偉大な馬です」。

 トラヴァーズSの上位4頭は、ケンタッキーダービーへの出走ポイントを獲得した。今回2着のカラカロは合計ポイントを60とし、ベルモントSでもティズザローの3着だったマックスプレイヤーも合計ポイントを60とした。これら2頭もティズザローとともにダービーに挑む予定だ。

 ティズザローは今年の勝鞍にトラヴァーズS優勝を加えた。今年はこれまで、新型コロナウイルス感染拡大の影響で距離が1½マイル(約2400m)から1⅛マイル(約1800m)に短縮されたベルモントS、フロリダダービー(G1)、ホリーブルS(G3)を制している。

 ティズザローの通算成績は7戦6勝。唯一の敗北は、昨年11月30日にケンタッキージョッキークラブS(G2)で喫している。このレースはチャーチルダウンズの不良馬場で競われた。

 8月8日のトラヴァーズS開催日(全12レース)の発売金は3,946万4,558ドル(約41億4,378万円)。2019年8月25日のトラヴァーズS開催(全13レース)の発売金は5,212万9,344(約54億7,358万円)。そのうち入場者4万8,124人による場内発売金は762万5,767ドル(約8億71万円)だった。

By David Grening

(1ドル=約105円)

[drf.com 2020年8月8日「Tiz the Law scores overwhelming Travers victory; goes to Kentucky Derby as favorite」]