海外競馬ニュース 2020年07月30日 - No.29 - 3
マキシマムセキュリティ、復帰戦のサンディエゴHで鼻差の勝利(アメリカ)[その他]

 名誉が失墜したジェイソン・サーヴィス(Jason Servis)調教師に管理されようと、競馬殿堂入りトレーナーのボブ・バファート調教師に管理されようと、マキシマムセキュリティ(Maximum Security 牡4歳)はただ勝ち続ける。

 2019年最優秀3歳牡馬のマキシマムセキュリティ(父ニューイヤーズデイ)は、サーヴィス調教師が禁止薬物使用の容疑で起訴されたために、この春バファート厩舎に移籍していた。そして、転厩初戦となる総賞金15万ドル(約1,575万円)のサンディエゴH(G2 7月25日 デルマー)で、ミッドコート(Midcourt)を鼻差で下して優勝した。通算成績は11戦9勝。3歳のときには、フロリダダービー(G1)・ハスケル招待S(G1)・シガーマイルH(G1)などを制している。

 マキシマムセキュリティは前走サウジカップ(2月29日)で1位入線したが、サーヴィス調教師が起訴されたことを受け、総賞金2,000万ドル(約21億円)の支払いは保留となっている。今回のサンディエゴH(ダート 約1700m)の優勝賞金9万ドル(約945万円)は支払われるはずだ。

 同馬は最初のコーナーを先頭で回ったが、ミッドコートが攻撃的に追い立ててきたとき、その差はかなり縮まっていた。

 鞍上エイベル・セディロ(Abel Cedillo)騎手が競り合いを避けるためにマキシマムセキュリティを控えさせたところ、ハイアーパワー(Higher Power)が迫ってきた。向う正面の前半で、マキシマムセキュリティはあっというまに3番手となった。

 先頭を走るミッドコートが23秒74、46秒87、1分11秒40のタイムを刻む一方で、セディロ騎手はマキシマムセキュリティを外に持ち出して促した。同馬は徐々にスピードを上げてハイアーパワーを抜き、先頭のミッドコートとの差を縮めていった。そして最後の直線の真ん中で先頭の馬をとらえようとしたが、ミッドコートは譲らず2頭はわずかの差のままゴールを通過した。

 セディロ騎手はこう語った。「最後の直線に入ったときに、仕事を始めなければなりませんでした。マキシマムセキュリティは最後までしっかりと追わないといけないタイプの馬です。写真判定になりましたが、勝ったと思っていました。絶対的に確信できるものではありませんが、私は間違っていませんでした」。

 勝ち時計は1分44秒54。1番人気のマキシマムセキュリティの単勝払戻金は(1ドルにつき)2.80ドル。

 セディロ騎手はこの日、3勝を果たした。サンディエゴH(第10レース)のほかに、第4レースをシークレットキーパー(Secret Keeper)、第9レースのサンクレモンテS(芝G2)をローラズライト(Laura's Light)で制した。

 5頭立てのこのレースで1・2着馬に6¼馬身遅れて3着で入線したのはハイアーパワーで、その後にアックスマン(Ax Man)とコンバタント(Combatant)が続いた。コンバタントは発走地点で立ち上がって出遅れてしまい、その後他馬を脅かす存在にはならなかった。

 シャープサムライ(Sharp Samurai)は7月26日のエディリードS(芝G2 デルマー)を目指すこととなり、サンディエゴHは回避した。

 マキシマムセキュリティの馬主は、生産者でもあるゲイリー&メアリー・ウエスト夫妻とクールモアスタッドのスーザン・マグニア氏、マイケル・テイバー氏、デリック・スミス氏である。クールモアは昨年12月半ばにマキシマムセキュリティの所有権の半分を獲得していた。

 このハンデ戦で、マキシマムセキュリティは他馬よりも5~9ポンド(約2.7~4.1kg)重い127ポンド(約57.7kg)を背負った。出走馬の中でG1を制したことのある馬は、マキシマムセキュリティ、ハイアーパワー、コンバタントの3頭だった。

 サンディエゴHは通常、総賞金50万ドル(約5,250万円)のパシフィッククラシックS(G1 8月22日 デルマー)のステップレースとして使われる。

 バファート調教師は2回目のサンディエゴH優勝を達成した。2014年にフェドビズ(Fed Biz)でこのレースを制している。また、パシフィッククラシックは5勝しており、直近では2017年にコレクティッド(Collected)で優勝している。デルマー競馬場の広報によれば、バファート調教師は同競馬場で歴代最多となるステークス競走134勝を挙げている。

 同調教師はサンディエゴHについて、「すごいレースでした。マキシマムセキュリティでこのレースを勝つことを大々的に喧伝したわけではありません。パシフィッククラシックの前哨戦としてこのレースに出走させましたが、この馬について新たなことを学びました。彼は今日、勝てる条件が揃っていたので勝ちました。偉大な馬であることを自ら示したのです。彼は闘志あふれる馬です。このレースを乗り越えられたことを喜んでいます。今や彼は万全です」。

 ケンタッキーで生産されたマキシムセキュリティは、母リルインディ(Lil Indy 父アナシード)が送り出した勝馬3頭のうちの1頭であり、唯一のステークス勝馬である。リルインディは現在1歳のニューイヤーズデイの牝駒も送り出しており、今年はクオリティロードの牡駒を出産した。

 ウエスト夫妻とバファート調教師のパートナーシップは、マキシマムセキュリティの父で2013年BCジュベナイル(G1)を制したニューイヤーズデイも手掛けている。

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By Byron King

(1ドル=約105円)

[bloodhorse.com 2020年7月25日「Maximum Security Wins by a Nose in San Diego Return」]