海外競馬ニュース 2020年07月02日 - No.26 - 3
ファーブル調教師が絶賛したマンデュロ、心臓発作により死亡(フランス)[生産]

 アンドレ・ファーブル調教師が"これまで手掛けた中で最高の馬"と絶賛した2007年の世界最高レーティング馬マンデュロは、18歳で死んだ。

 現役引退後は信頼できる種牡馬となったマンデュロ(父モンズーン)は6月27日、供用されていたロジ牧場(Haras du Logis フランス・ノルマンディー)で致命的な心臓発作に襲われた。

 マンデュロはドイツのロルフ・ブルンナー(Rolf Brunner)氏により生産された。母はリステッド3着馬マンデリヒト(Mandellicht 父ビーマイゲスト)、父はドイツの伝説的な種牡馬モンズーン。

 マンデュロはBBAGの1歳セールにおいて、ゲオルク・フォン・ウルマン男爵(Baron Georg von Ullmann)の代理人リュディガー・アレス(Rüdiger Alles)氏により、13万ユーロ(約1,560万円)で落札された。ウルマン男爵はモンズーンを所有し、家族が経営するシュレンダーハン牧場(Gestüt Schlenderhan)で供用していた。

 マンデュロは最初ペーター・シールゲン(Peter Schiergen)調教師に管理され、ヴィンターファヴォリテン賞(G3)を5馬身差で圧勝したことでドイツ最優秀2歳馬に選出された。また、3歳シーズンにはドイツ統一賞(G3)を制した。

 4歳でファーブル厩舎に転厩したマンデュロは、さらに高いレベルの成績を収めていく。4歳シーズンには、アルクール賞(G2)で優勝し、ガネー賞(G1)・イスパーン賞(G1)・プリンスオブウェールズS(G1 ロイヤルアスコット開催)・ジャックルマロワ賞(G1)・ムーランドロンシャン賞(G1)で3着内に入った。

 5歳で絶頂期を迎え、以下のレースを大きな着差で制して、世界最高レーティングを獲得することになる。

・ アールオブセフトンS(G3)[4馬身差]
・ イスパーン賞[5馬身差]
・ プリンスオブウェールズS[1¼馬身差]
・ ジャックルマロワ賞[3馬身差]
・ フォワ賞(G2)[2½馬身差]

 マンデュロはその年、格の違いを見せつけた。プリンスオブウェールズSで圧勝したときには、強豪馬ディラントーマスやノットナウケイト(Notnowcato)を撃退している。また、様々な距離の競走(約1600m~2400m)を制したことでその多才性も示した。

 同馬は凱旋門賞(G1)の出走馬確定前オッズで1番人気となっていたが、フォワ賞でマンデシャ(Mandesha)を破った時に後肢の管骨を骨折し、競走能力を喪失していた。

 マンデュロが最悪のタイミングで引退することとなった時、ファーブル調教師は取り乱した様子でこう述べた。

 「彼は私がこれまで手掛けた中で最高の馬、それも際立って最高でした。彼にはできないことがないように見えました。人の心を動かす馬でした。その振舞いや馬格、彼の何もかもが並外れて優れていました」。

 世界を代表するハンデキャッパーたちはファーブル調教師と同じ評価を下し、マンデュロに2007年の世界最高レーティング「131」を与えた(オーソライズド、カーリン、ディラントーマス、インヴァソールを上回る)。

 モハメド殿下は2007年夏にマンデュロの種付権利を購入した。その価格は2,300万ユーロ(約27億6,000万円)と伝えられている。翌年、キルダンガンスタッド(アイルランド・キルデア州)で種牡馬生活を始めた同馬の種付料は4万ユーロ(約480万円)とされた。

 マンデュロは、2歳となった初年度産駒が活躍し、種牡馬として素晴らしいスタートを切った。その中にはクリテリウムドサンクルー(G1)を楽勝したマンデアン(Mandaean)やクリテリウムアンテルナショナル(G1)3着のボンファイア(Bonfire)がいた。

 その後、3歳となった初年度産駒はさらに重賞での勝利を積み重ねた。ボンファイアはダンテS(G2)で優勝し、フラクショナル(Fractional)やトロワリュンヌ(Trois Lunes)なども重賞を制した。

 しかし初期の種牡馬成績は、華々しいというよりも堅実なものだった。マンデュロは2013年にロジ牧場に移り、それから7年間、種付料7,000ユーロ(約84万円)で供用された。

 マンデュロはステークス勝馬35頭を送り出し、その中には南米にシャトルされたときに送り出した産駒も含まれる。

 北半球でG1を制したマンデュロ産駒は以下の5頭である。

・ チャリティライン(Charity Line)
・ マンデアン
・ リボンズ(Ribbons)
・ ウルトラ(Ultra)
・ ヴァジラバド(Vazirabad)[アガ・カーン殿下が所有した優秀なステイヤー]

 ジャンリュックラガルデール賞(G1)優勝馬ウルトラは、2018年から父と同じくロジ牧場で供用されており、初年度産駒は今年の1歳セリに上場される。

 マンデュロは近年、注目すべきブルードメアサイアー(母父)としてその存在感を強めている。母父として、優秀な半姉妹のビルズドンブルック(Billesdon Brook、2018英1000ギニー勝馬)とビルズドンベス(Billesdon Bess、リステッド勝馬)、ハードウィックS(G2)を制したばかりのファニーローガン(Fanny Logan)、ともにリステッド勝馬であるアルダバラン(Al Dabaran)とトレスフリュオース(Trais Fluors)などの活躍馬を送り出している。

 実に、ビルズドンブルックとビルズドンベスの母コップロー(Coplow)は、昨年のタタソールズ12月繁殖セールにおいてクールモアによりそのセリでの最高価格210万ギニー(約2億9,768万円)で購買されている。マンデュロの産駒の中で最も高額で取引された馬だ。

 ダーレーの種牡馬担当主任であるサム・ブラード(Sam Bullard)氏は、「マンデュロは素晴らしい種牡馬でした。彼の死をとても残念に思います。生産者のために勝馬やステークス競走での活躍馬を送り出してくれる信頼できる種牡馬でした」と語った。

By Martin Stevens

(1ユーロ=約120円、1ポンド=約135円)

[Racing Post 2020年6月27日「Former world champion and smart sire Manduro suffers fatal heart attack」]