海外競馬ニュース 2020年06月11日 - No.23 - 1
マーフィー騎手、カメコでクラシック初制覇(イギリス)[その他]

 オイシン・マーフィー騎手は6月6日、カタールレーシング社(ファハド殿下)のカメコ(Kameko)に騎乗し英2000ギニー(G1)を制したことで、ついにクラシック優勝ジョッキーとなった。

 ニューマーケット競馬場は新型コロナウイルス感染拡大防止のために入場者を制限しており、グランドスタンドには人影がほぼなかった。そのような状況で、昨年のフューチュリティトロフィー(G1)優勝馬カメコ(アンドリュー・ボールディング厩舎)は、デットーリ騎手が騎乗するウィチタ(Wichita エイダン・オブライエン厩舎)をゴール手前で最後の数完歩で抜き、首差の勝利を収めた。

 昨年の最優秀2歳牡馬で単勝1.8倍の大本命ピナトゥボ(Pinatubo)は、その期待に応えるチャンスはいくらでもあったが3着となり、初めての敗北を喫した。

 マーフィー騎手は、ファハド殿下の早逝したG1馬ロアリングライオンで2017年~2018年に勝利を重ねている。同じくキトゥンズジョイ産駒のカメコに乗ってウィナーズサークルに戻って来るときに、同騎手は感極まっていた。

 「泣くつもりではありませんでした。ファハド殿下はウイルス感染拡大の影響で、ニューマーケットの自宅で見ています。私はボールディング調教師のもとでキャリアをスタートさせました。この勝負服で最初のクラシックを勝てたなんて信じられません。カメコはロアリングライオンと同じくキトゥンズジョイ産駒です。夢を見ているようです。彼は肝の据わったパフォーマンスをしました。溢れんばかりの才能があるはずです」。

 ボールディング調教師は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止されていた英国競馬が再開されてから、素晴らしい成績を挙げている。そして今や、英ダービー(G1)初勝利の栄光を手にするチャンスが大いにある。

 ベットフェア社は、カメコの英ダービーの単勝オッズを10倍から4倍に大きく引き下げた。

 マーフィー騎手はこう語った。「私たちはこのレースに挑む前から、カメコは10ハロン(約2000m)向きの馬だと見なしてきました。ダービーに向かうかどうかは、ボールディング調教師、ファハド殿下、デヴィッド・レッドヴァース氏(殿下の競馬・生産マネージャー)次第です。皆がそれについて熟慮するでしょう。この馬は肝が据わっていて、ダービー挑戦は絶対的に良いだろうと思います。それでもダービーは12ハロン(約2400m)です。今日勝ったクラシックよりも800m伸びることになります」。

カメコを生み出す血統を手渡したオブライエン家

 カメコは、米国の素晴らしい芝向き種牡馬キトゥンズジョイの14頭のG1優勝産駒のうちの1頭である。レッドヴァース氏は2018年キーンランド9月1歳セールにおいて、カメコを格安の9万ドル(約990万円)で購買した。

 カメコはカルメットファーム(Calumet Farm)により生産された。スウィータースティル(Sweeter Still 父ロックオブジブラルタル)の第5仔である。スウィータースティルは、オブライエン調教師の妻アンヌマリー氏により生産され、バリードイル(クールモアの調教拠点)で調教され、2歳シーズンにフレイムオブタラSで4着となった。それでも同馬が本領を発揮したのは、米国のジェフ・マリンズ厩舎に転厩してからで、最も注目に値するのはセニョリータS(G3)で挙げた勝利である。レーシングポストトロフィー(G1)優勝馬キングズバーンズ(Kingsbarns)の半姉で、1000ギニートライアル(G3)優勝馬ベルアルティスト(Belle Artiste)の半妹であるスウィータースティルは、繁殖牝馬としてかなりの潜在能力があるにもかかわらず、セリにおいては様々な評価が下された。

 同馬は、2014年キーンランド1月混合セールにおいてロイヤルオークファーム(Royal Oak Farm)により75万ドル(約8,250万円)で落札された。しかし2016年キーンランド11月繁殖セールでは、カルメットファームに繁殖牝馬としてわずか3万5,000ドル(約385万円)で購買された。

 さらに、その後オプティマイザ―(Optimizer)の仔を受胎していたスウィートスティルは2018年11月にT・レスリー・トンプソン(T. Lesley Thompson)氏にたった1,500ドル(約17万円)で売却されている。それはレッドヴァース氏がカメコを購買したわずか2ヵ月後のことだった。

 2019年には、スウィータースティルの1歳の第6仔(ビッグブルーキトゥン牝駒。カメコの3/4妹)が、キーンランド9月1歳セールでアトランティックブラッドストック社によりわずか5,000ドル(約55万円)で購買されている。

 カメコの英2000ギニー優勝は、ロックオブジブラルタル(父デインヒル)にとってもブルードメアサイアーとしてのクラシック初勝利となった。ロックオブジブラルタル自身も2002年にホークウィングを下して英2000ギニーを制している。同馬は、ブルードメアサイアーとしてカメコを含め5頭のG1馬を出している。他には、ベルボアベイ(Belvoir Bay)、ラインオブデューティ(Line of Duty)、ミッキーアイル、フォトコール(Photo Call)がいる。

By James Thomas/Racing Post and Lee Mottershead/Racing Post

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2020年6月6日「Emotional Oisin Murphy Captures First Classic on Kameko」]