海外競馬ニュース 2020年05月14日 - No.19 - 1
静寂の中で再開されたフランス競馬(フランス)[開催・運営]

 競馬チャンネル"エキディア(Equidia)"は 5月11日(月)、パリロンシャン競馬場からの競馬中継を放映した。視聴者は早い段階で、"騎手はふざけて銅像の真似をして立ち尽くしているのではないか"と一瞬訝しく思ったことだろう。

 騎手たちは第1レースの前のパドックで、安全な間隔を取って広がって立っていた。学校の体育祭で見覚えがあるような光景だ。

 各騎手がマスクを着けて異様な雰囲気を醸し出しているのに加え、競馬レポーターが持つマイクは不運にも全く音を拾えなかった。そのマイクは、ソーシャルディスタンスを保つルールを守るために長いポールに取り付けられていた。

 これこそ、新型コロナウイルスが世界中で蔓延している状況下での競馬である。そして場内では、行動を取るたびにこの状況に適応するのに少し手こずっている様子が確かに見られた。

 しかしレースが開始されれば、いつもどおりの激しい競走が繰り広げられた。昨年仏リーディングジョッキーに輝いたマキシム・ギュイヨン騎手は、2つの重賞競走のうち1レース目であるサンジョルジュ賞(G3)をバットワン(Batwan)で勝利した。

 フランスのホースマンの間にはある種の安堵感があった。それは仕事への復帰だけでなく、ウイルス蔓延と悪影響を受ける経済に対して誰もが抱く懸念を忘れるために集中できる何かがあることから来る安堵感である。

 ファブリス・ヴェロン(Fabrice Veron)騎手は、多くの騎手が抱く感情についてこう語った。「今年の初めは自由に行動できるドバイで過ごしていました。そのため、フランスに帰国して外出禁止令に従って生活するのは困難でした。朝は調教で騎乗していましたが、レースで再び騎乗できるようになってとても嬉しいです」。

 レース中もマスク着用が義務付けられていることについて、ヴェロン騎手は「ゴールに向かって走っているときは少し邪魔ですが、我慢しなければなりません」と述べた。なお豪州・香港・日本では、レース中のマスク着用は義務付けられていない。

 通常、パリロンシャン競馬場の月曜日の開催は静かなものだ。そのため、競馬が無観客で開催されても、大した変化がないだろうと予想していた人々もいただろう。

 しかしミケル・デルザングル(Mikel Delzangles)調教師は、このほぼ完全な静寂について"少し悲しく、かなり奇妙だった"と述べた。

 同調教師はこう語った。「あまり人がいなかったので、問題なくソーシャルディタンスを保てました。競馬の再開を切望していたので、素晴らしい日を迎えられましたが、それでも観客がいないのは少し寂しいです」。

 「競馬場ではレース実況さえ聞こえないので、とても不思議な気分になりました。大画面はあるのですが、音は切られています」。

 この日の午後に、長く待たれた末に登場した2頭の有望なスター馬であるヴィクタールドラム(Victor Ludorum)とソットサス(Sottsass)は、実力を発揮できなかった[訳注:ヴィクタールドラムはフォンテーヌブロー賞でザサミット(The Summit)の3着、ソットサスはアルクール賞でシャマン(Shaman)の4着に終わった]。

 通常、平日の競馬場には、負けた騎手を野次ることに日々を費やす少人数だがうるさいグループがいる。

 少なくともミカエル・バルザローナ騎手(ヴィクタールドラム騎乗)とクリスチャン・デムーロ騎手(ソットサスに騎乗)は、乗っていた一番人気馬が敗れてしまったが、野次られずに済んでホッとしただろう。

By Scott Burton

[Racing Post 2020年5月11日[It's all so quiet: how Longchamp returned with a whisper, not a roar]]