海外競馬ニュース 2019年08月08日 - No.30 - 1
英国で初めてヒジャーブを被った女性がレースで優勝(イギリス)[その他]

 カディージャ・メラー(Khadijah Mellah)氏(18歳)は、グッドウッド競馬場の観衆に大きな歓声で迎えられ、頬に涙を伝わせた。自らが極めて素晴らしい快挙を達成したことを実感していた。

 南ロンドンに住むメラー氏は、英国で初めてヒジャーブを被ってレースで騎乗した女性となったばかりだった。そしてマグノリアカップでヘイヴァーランド(Haverland チャーリー・フェローズ厩舎)を勝利に導き、英国で初めてヒジャーブを被ってレースで優勝した女性となったのだ。

 ブリクストンのエボニーホースクラブ(Ebony Horse Club)で乗馬を習ったメラー氏が、サラブレッドに乗り始めたのは4月だった。しかし、女性の福祉のためのチャリティレースであるマグノリアカップに出場することを念頭に熱心に取り組んだ猛特訓は、ランドフィリー(Land Filly)を退けて達成した¾馬身差の歴史的勝利により報われた。ランドフィリーには、BBC気象予報アナウンサーのアレクシス・グリーン(Alexis Green)氏が騎乗していた。

 メラー氏はレース中に冷静さを保っていたが、終盤にスタンド側からヘイヴァーランドとともに追い上げて勝利を決めてこの快挙の重大さを実感した途端、それはたちまち恍惚へと変わった。

 メラー氏は、ラドブロークス社により単勝26倍のオッズを付けられ伏兵とされていた。ライバルには、オリンピックの自転車競技のチャンピオンのヴィクトリア・ペンドルトン(Victoria Pendleton)氏やモデルのヴォーグ・ウィリアムズ(Vogue Williams)氏などがいた。メラー氏はこう語った。「この気持ちをあらわす言葉が見つかりません。信じられません。一体どうしてこうなったのかまだ考えているところです」。

 ヘイヴァーランドは道中12頭の馬群の中団を走り、先行馬に追いつこうとしていたが、これまでグッドウッドで多くの騎手が遭遇してきた古くからある問題に直面した。

 メラー氏はこう語った。「目の前にまだ、レンガの壁のように先行馬群が立ちはだかっていました。顔に砂が跳ね返り、競走を中止しなければならないかもしれないと思いながら、様子をうかがいました」。

 「そして決勝線でふと見上げたとき、それらの馬は後ろを走っていました。ただ"神様、何が起きているのですか"と思いました。それから家族と友人を見て、抑えきれずに泣いてしまいました。驚きました」。

 大学で機械工学を勉強することを望むメラー氏は、こう付言した。「高い目標を持つ女性はそれを達成できること、それこそ、私が示したかったことです。私は多くの支援を受けました。女性たちが競馬界に入って素晴らしいことを成し遂げるのを待ち遠しく思っています」。

 このレースの開催に向けて、メラー氏はエボニーホースクラブの知名度を高めた。このクラブの後援者であるオリー・ベル(Oli Bell)氏(ITVレーシング社)は、チャリティレースでメラー氏が夢をかなえるのを手助けした。しかし、この華々しい勝利を決めることができたのは、メラー氏がひたむきに取り組んだからである。同氏は訓練のために英国競馬学校で一時期を過ごし、チャーリー・フェローズ(Charlie Fellows)調教師のもとを訪ねた。

 フェローズ調教師はありったけの称賛を込めてこう語った。「カディージャは、ヘイヴァーランドに信じられないほど素晴らしいスタイルで騎乗しました。とても冷静で、道中適切な馬をマークして首尾よく追い抜き、勝利を達成しました。言葉を失って、震えています。信じられません。彼女は今後会えないような驚くべき若い女性です。彼女が達成したことは"素晴らしい"どころではないでしょう」。

By James Stevens

[Racing Post 2019年8月1日「'There are no words to describe it' - Khadijah Mellah makes history at Goodwood」]