海外競馬ニュース 2019年06月27日 - No.24 - 4
サンタアニタ競馬場の厩舎労働者、閉場の危機を訴え集結(アメリカ)[その他]

 ダゴベルト・ロペス(Dagoberto Lopez)氏は、ダグ・オニール(Doug O'Neill)厩舎で働き、子供2人を大学まで通わせた。勤続35年の同氏は、BCダートマイル(G1)優勝馬ゴールデンセンツ(Goldencents)などの優良馬を担当してきた。

 数百人もの厩舎労働者は6月20日、カリフォルニア州における厩務員の職と競馬産業の重要性に注目を集めるため、サンタアニタパーク競馬場のクロッカーズコーナーに集結した。ロペス氏はその中で演説を行った数人の労働者の1人である。今年はサンタアニタ競馬場で予後不良事故が多発しているので、これまで競馬場もしくはカリフォルニア州の競馬自体を廃止させようとしてきた動物愛護運動家の努力が結実してしまうのではないかと、労働者たちは恐れている。

 ロペス氏はスペイン語でこう語った。「サンタアニタの閉場について心配しています。もしそうなったら私たちはどこに行けば良いのでしょうか?この仕事を愛しており、手掛けたどの馬も利口でした。それらの馬を家族のように思っていて、自分の子供のように面倒を見てきました」。

 多くの地元テレビ局がこの集会について報道した。この集会を組織したのは、オスカル・デラトーレ(Oscar de la Torre)氏である。家族が以前ハリウッドパーク競馬場で働いていた同氏は、オニール調教師と話し合った後に労働者たちを集結させることを決定した。

 オニール調教師は、「全ての労働者と家族たちが声をあげるためにここにやって来たことは、素晴しいことであり、感動しています。これまで彼らが声をあげることはありませんでした」と述べた。

 多くの厩舎労働者がクロッカーズコーナーにプラカードを持ち寄った。大半が英語だが、スペイン語で書かれたものもあった。その中には、「馬は私たち家族の一員です。お互いに必要としています!!!」、「サンタアニタでの雇用は経済に貢献します!」、「カリフォルニア州における雇用7万7,000件」というものが含まれていた。

 デラトーレ氏は取材陣に感謝の意を述べ、こう語った。「労働者たちは、カリフォルニア州の競馬産業に関するこれまで報道されてきたものとは違う重要なストーリーを語り、我々のことを理解してもらうために集まりました。この産業は大きな機会をもたらしてくれます。厩舎地区の労働者たちは、サンタアニタ競馬場が実施している馬の安全対策を全面的に支持しています」。

 「ここに集まった人々は、馬を愛し、馬を管理するために全力を尽くし、あらゆる努力をしています」。

 この集会において、厩舎労働者や調教師を含む数人が演説を行った。ロペス氏の息子で、現在カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の学生であるジャイロ氏は、オニール厩舎で働いた経験がどれほど自らの人格形成に役立ったかを、英語とスペイン語で語った。

 「父が競馬場で働いていたので、歩けるようになる前から馬に囲まれて育ちました。ここでの仕事のおかげで、常にベストを尽くす責任感の強い人間になりました」。

 ホルヘ・ペリバン(Jorge Periban)調教師はサンタアニタ競馬場で働いてきた36年間について、こう語った。「情熱をもって働いてきました。この仕事のおかげで、今日ここに来ている多くの労働者と同様に、家族を養うことができました。私たちは皆、この職業に頼っています。サンタアニタが閉場するのであれば、数千もの労働者に影響が及びます」。

 同調教師は、労働者の多くは馬の世話のためだけでなく、カリフォルニア州の住宅費の高騰が理由でここに住んでいると述べ、「サンタアニタが閉場となれば、多くの人々は住む場所を失い、路頭に迷ってしまいます」と付言した。

 デラトーレ氏は、「ロサンゼルス地域において住居のない人々は5万9,000人に上ると伝えられています」と現在の危機的な住宅状況について述べた。そして、カリフォルニア州の競馬界の直接雇用は7万7,000件、間接雇用は11万5,000件であると付言した。

 オニール調教師の右腕的存在であるレアンドロ・モラ(Leandro Mora)氏も演説を行った。同氏もロペス氏のように2人の子供を学校に通わせており、こう語った。「すべては、サラブレッドという美しい動物からもたらされました。私たちは1頭たりとも失いたくはありません。全ての馬を愛していて、彼らは私の子供のようなものです」。

By Tracy Gantz

[bloodhorse.com 2019年6月20日「Backstretch Workers Rally at Santa Anita Park」]