海外競馬ニュース 2019年06月13日 - No.22 - 2
ロイヤルアスコット開催への豪州短距離馬の勧誘が難航(イギリス・オーストラリア)[開催・運営]

 豪州の短距離競走プログラムがますます強化されていることを受けて、アスコット競馬場はロイヤルアスコット開催に今後も豪州調教馬を引き付けられるかどうかについて懸念を述べた。

 競馬の祭典ロイヤルアスコット開催(6月18日~22日)に参戦予定の豪州調教馬は、キングズスタンドS(G1 約1000m)において伏兵と目されているホーツェン(Houtzen 牝4歳)のみである。2003年~2009年に、豪州調教馬はキングズスタンドSを4勝している[2003年ショワジール(Choisir)、2006年テイクオーバーターゲット(Takeover Target)、2007年ミスアンドレッティ(Miss Andretti)、2009年シーニックブラスト(Scenic Blast)]。

 トップスプリンターのサンタアナレーン(Santa Ana Lane)の関係者は、総賞金1,400万豪ドル(約10億5,000万円)のジ・エベレスト(1200m 10月19日)に魅力を感じていることを理由に、ロイヤルアスコット開催への遠征を見送ることを決定した。昨年は、名牝ウィンクスが英国に遠征せずに豪州に留まる選択をしている。

 アスコット競馬場のCEOガイ・ヘンダーソン(Guy Henderson)氏は、賞金面で他国と競い続けることを誓ったが、ロイヤルアスコット開催の短距離G1・3レースの総賞金は、豪州で提供される高額賞金と比べると物足りないように思える。キングズスタンドSとコモンウェルスカップ(G1 約1200m 3歳限定)はいずれも総賞金50万ポンド(約7,000万円)で、2012年にブラックキャビアが制したダイヤモンドジュビリーS(G1 約1200m 4歳以上)の総賞金は60万ポンド(約8,400万円)である。

 今年のロイヤルアスコット開催には、9ヵ国以上からの馬が参戦する。アスコット競馬場の競走・コミュニケーション担当理事であるニック・スミス(Nick Smith)氏はこう語った。「私を唯一悩ませているのは、豪州で短距離競走のプログラムが向上している状況において、以前のように多くの豪州調教馬を勧誘するにはどうすれば良いか、ということです」。

 「豪州では毎週のように素晴らしいプログラムが実施されているので、豪州調教馬を勧誘するのは今後も骨が折れる仕事となるでしょう。いずれはこの傾向を覆せることを望んでいますが、豪州で魅力的なレースに出走できるチャンスがあることを切実に感じています」。

 「この2年間、豪州のトップスプリンターは英国に来ていません。ホーツェンは調教で素晴らしい動きを見せており、彼女の実力を強く信じていますが、私たちは出走登録の直前にサンタアナレーンを勧誘し損ねてしまいました。同馬の関係者がジ・エベレストを優先したためです。それでも、彼らは来年ここに遠征してくることにとても前向きであり、そうなれば夢のようです」。

 スミス氏はロイヤルアスコット開催への出走を促進するために、毎年豪州に赴いている。同氏は、「依然として大きな関心があります。豪州と香港には、ロイヤルアスコット開催を経験して英国でサラブレッドへの投資を開始した馬主が沢山います。それ自体、大変素晴らしいことです」と述べた。

 スミス氏は、最近の賞金面での競争が激化していることで、一部の関係者にとってロイヤルアスコット開催があまり魅力的ではなくなっていると考えており、こう語った。

 「昔は、豪州の関係者はロイヤルアスコット開催で勝つことを思いがけないプレゼントのように考えていたので、多くの馬が参戦しました」。

 「しかし私たちは、豪州からの遠征馬がロイヤルアスコット開催で4勝するなど、英国における優良短距離馬の不足が明らかになったことを受け、短距離競走のプログラムの改革を実施しました。そして、コモンウェルスカップや一連のレースを新設したことにより、欧州のスプリンターの水準は向上しています。それ自体はとても重要な計画であり、実施する必要がありました」。

 今年のロイヤルアスコット開催の短距離競走には、ニュージーランドのエンゾズラッド(Enzo's Lad)やシンガポールのリムズクルーザー(Lim's Cruiser)が参戦する予定である。また、日本の牝馬ディアドラはプリンスオブウェールズS(G1 約2000m)に挑戦する。

 スミス氏はこう付言した。「現在のところ9ヵ国からの遠征馬が登録されており、これからも増えるかもしれません。とりわけトップクラスの日本馬が参戦することに満足しています」。

By David Carr

(1豪ドル=約75円、1ポンド=約140円)

[Racing Post 2019年6月5日「Where have the Aussie stars gone?」]