海外競馬ニュース 2017年10月19日 - No.41 - 1
レッドゼル、世界最高賞金の芝競走ジ・エベレストで優勝(オーストラリア)[その他]

 レッドゼル(Redzel)はランドウィック競馬場(シドニー)の3万3,000人以上の観客の前で第1回ジ・エベレストを制し、芝競走の史上最高賞金を獲得した

 ケリン・マカヴォイ(Kerrin McEvoy)騎手が騎乗し、ピーター&ポール・スノーデン(Peter and Paul Snowden)親子が管理したレッドゼル(せん馬5歳)は、1番人気のヴェガマジック(Vega Magic)を¾馬身差に下して総賞金1,000万豪ドル(約9億円)のレースを制した。

 ジェイミー・スペンサー(Jamie Spencer)騎手が騎乗した元日本調教馬ブレイブスマッシュは、ヴェガマジックに頭差の3着に健闘した。有力馬の1頭シャトークア(Chautauqua)は4着となった。

 内埒沿いに走る先行馬に有利な競馬場で、単勝8.5倍のレッドゼルはホーツェン(Houtzen)のすぐ外を走っていた。その後、ゴールまで1ハロン(約200m)の地点で赤いブリンカーのレッドゼルはレースの主導権を握り、レース終盤に外から襲い掛かってくるヴェガマジックを見事にかわした。

 マカヴォイ騎手は「今日はレッドゼルが信じられないほど素晴らしいパフォーマンスをしてくれました」と述べた。同騎手は10年前、フランキー・デットーリ騎手に次ぐゴドルフィンの第2騎手として英国で長く活動し、多くのファンを持っていた。

 マカヴォイ騎手はこう語った。「レッドゼルはスターのようではありませんか?ベテランのピーター&ポール・スノーデン調教師の管理馬に乗れるのは光栄なことであり、しっかりと仕事をしました。彼らはレッドゼルを辛抱強く管理してきましたが、その苦労は報われました」。

 「レッドゼルは良い枠を引き、レースでも逃げ馬の外で非の打ちどころのない走り方をしました。嬉しくて飛び上がりそうです」。

 「このレースに参加できるということはとてもエキサイティングなことです。妻はここに来ており、家では子供たちがテレビに向かって叫んでいたことでしょう」。

 豪州の種牡馬スニッツェルの産駒であるレッドゼルは4連勝した後に、ジ・エベレストに臨んだ。馬主のトリプルクラウンシンジケーションズ社(Triple Crown Syndications 以下トリプルクラウン社)は、2014年マジックミリオンズ社1歳セールで同馬を12万豪ドル(約1,080万円)で購買していた。

 シドニーのデイリーテレグラフ紙によると、トリプルクラウン社を運営するクリス&マイケル・ウォード(Chris and Michael Ward)兄弟はその後、17名の馬主グループ[エブリデーオーストラリアンズ(everyday Australians)]のためにレッドゼルのシンジケートを組んだ。様々な職業を持つメンバーからなるこのグループには、警察官、教師、医師、タクシー運転手、建設業者、電気技師、薬剤師、元NSW州のクリケットの監督、警備員などがいる。

 レッドゼルは今や、ジ・エベレストの総賞金のうち優勝賞金580万豪ドル(約5億2,200万円)を獲得した。この賞金額は、いずれもダートレースのペガサスワールドカップ(G1)とドバイワールドカップ(G1)に次ぐ高額である。

 ジ・エベレストは、世界最高賞金レースのペガサスワールドカップ(1月12日・フロリダ州ガルフストリームパーク競馬場)の形式に倣ったものである。12人の関係者がジ・エベレストの出走枠を1枠60万豪ドル(約5,400万円)で購入した。レッドゼルはジェームズハロンブラッドストック社(James Harron Bloodstock)が獲得していた出走枠から発走することになった。同社は同レースに馬を出走させるためにトリプルクラウン社と提携していた。

 トリプルクラウン社のマイケル・ウォード氏は、「夢がかないました。私たちは約30名でこの馬を所有しています。言葉にできないほど嬉しいです」と語った。

 調教師の1人であるポール・スノーデン氏は感動してレース後にこう語った。「私たちの厩舎にとって、とてつもなく素晴らしいことです。私と父はさらに結束を固めました」。

 一方ジェイミー・スペンサー騎手は、ダークホースであった元日本調教馬ブレイブスマッシュに騎乗できたことを喜んでいた。同馬は終盤でヴェガマジックに差されたが、3着に健闘した。

 同騎手はこう語った。「ブレイブスマッシュは見事に走り、思ったとおりの騎乗ができました。100ヤード(約90m)ほど進んでから内柵に沿って走ることができ、その後は順調でした。ただ、勝馬は堂々としていました」。

 ヴェガマジックは、2着の座を確保するために大外から迫ってきたが、優勝馬をとらえる賭けには出なかった。クレイグ・ウィリアムズ騎手は、「ヴェガマジックは負けましたが強かったです。このコースで陥りやすい先行馬有利のパターンに挑みました。見事なパフォーマンスが引き出せました」と語った。

 芦毛のシャトークアは、世界最高レーティングのスプリンターの座を最近ハリーエンジェル(Harry Angel)に奪われていた。しかしこのレースでは、いつもどおり後方から追い上げて4着を確保した。牝馬シーウィルレイン(She Will Reign)は安価で購買された馬だが高額賞金のゴールデンスリッパー(G1)を制して、おとぎ話のような馬と言われていた。しかしこのレースでは苦い敗退を喫した。ゆっくりと後ろに下がってゆき、最後の直線で1頭だけ抜かして、12頭中11着となった。

 シドニーの競馬関係者は、第1回ジ・エベレストにとても満足していた。主催者のレーシングNSWのCEOピーター・ヴランディーズ(Peter V'landys)氏はこう語った。「ジ・エベレストは、競馬界全体を魅了しました。これまでシドニーで開催されたスポーツイベントがこのような注目を浴びたことはありません」。

 「ザ・チャンピオンシップスは今や秋の恒例イベントとなり、成功を収めています。一方、ジ・エベレストは、数ヵ月間で世界中の注目を集め、さらに高いレベルに達しました」。

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By Nicholas Godfrey

(1豪ドル=約90円)

[Racing Post 2017年10月14日「Redzel lands world's richest turf race for 'everyday Australians'」]