海外競馬ニュース 2017年05月25日 - No.20 - 4
BHA、糖尿病の騎手に制限なしの免許を付与(イギリス)[その他]

 ヘクター・バー(Hector Barr)騎手(16歳)は、1型糖尿病を患いながらもBHA(英国競馬統轄機構)から制限のない騎乗免許を付与された初めての騎手となった。

 これまでこの病気を患った騎手たちは、上昇した血糖値をレース間に許容できるレベルに戻すことが困難であることから、1日に1回のポイント・トゥ・ポイント競走(訳注:アマチュア騎手による障害競走)にしか騎乗できなかった。

 しかしBHAは専門家およびバー騎手の地元コルチェスターの病院と共同で取り組み、この十代の若者に正規の騎乗免許を与えるのに必要な措置について、理解を深めてきた。

 バー騎手の母エマ氏はこう語った。「ヘクターは幼い頃から、父スティーヴン(Stephen)が出場するポイント・トゥ・ポイント競走を見に行ったものです。スティーヴンは29歳で1型糖尿病と診断され、レースを続けることを断念しましたが、現在では薬により糖尿病は制御可能で安定状態を保てます」。

 「BHAは、ヘクターがレースで騎乗するための手続きに同意しました。条件を満たしていれば、その日は騎乗可能と判断されます」。

 有名スポーツ選手の中にも、一般的に若年で診断される1型糖尿病を患う選手がいる。

 BHAのスポークスマンであるロビン・マウンジー(Robin Mounsey)氏はこう語った。「糖尿病についての理解が深まり管理体制が整ったことで、糖尿病のスポーツ選手も高いレベルで競技することが可能であるということが徐々に認識されています」。

 「BHAの医療部門は、糖尿病のスポーツ選手について詳しい糖尿病専門医のイアン・ギャラン(Ian Gallen)博士と協力して取り組んでおり、最近1型糖尿病と診断されたバー騎手がポイント・トゥ・ポイント競走の騎手免許を取得し、制限なしで騎乗できるよう支援してきました」。

 「このプログラムについては、注意深い見直しが定期的に行われており、今後糖尿病の騎手がうまく安全に競走するためのモデルを提供するはずです」。


3
人の先駆者


・ギャリー・マバット(Gary Mabbutt)氏

(トッテナム・ホットスパーFCに所属した元サッカー選手。元イングランド代表)。

 マバット氏は17歳のときに1型糖尿病と診断され、3人の専門医からプロサッカー選手の夢は諦めるように言われた。しかし、4人目の医師はマバット氏の糖尿病に対して「様子を見よう」という姿勢をとった。その結果、1987年の現役引退までにリーグ戦には750回以上、国際大会には16回出場した。


・ジェイ・カトラー(Jay Cutler)氏

(プロアメリカンフットボール選手。ポジションはクォーターバック)。

 デンバー・ブロンコスの司令塔のカトラー氏は、プロ入りを果たしてから2年後の2008年5月に1型糖尿病と診断され、毎日インシュリン注射が必要だと言われたが、それは活躍の障害とはならなかった。カトラー氏は選手生活で32,000以上のパスヤードと208回のタッチダウンを積み重ねた。


・ゲイリー・ホール・ジュニア(Gary Hall Jr.)氏

(オリンピック水泳金メダリスト)

 ホール氏は1996年アトランタ五輪で4つのメダルを獲得したが、1999年に1型糖尿病と診断されたときに、2000年シドニー五輪への出場は夢に終わる可能性があると言われた。ホール氏はこれを乗り越え、シドニー五輪とアテネ五輪でさらに6個のメダル(うち3つは金メダル)を獲得した。

By Scott Burton

[Racing Post 2017年4月14日「Diabetic to get unrestricted licence」]