海外競馬ニュース 2014年11月13日 - No.45 - 2
オーストラリアで女性騎手の落馬事故死が相次ぐ(オーストラリア)[その他]

 オーストラリアでわずか2日間に若い女性騎手2名が競走中の事故で命を失ったニュースを受け、有力なホースマンたちは10月16日、競馬というスポーツについて改めてよく見直すよう要求を行った。

 19歳の見習い騎手ケイトリン・フォレスト(Caitlin Forrest)氏は、51勝を挙げた有能な騎手であったが、南オーストラリア州のマレーブリッジ競馬場で発生した4頭を巻き込む落馬事故で深刻な傷を負い、一夜のうちに病院で息を引き取った。

 フォレスト騎手の騎乗馬が故障し、後続馬3頭を巻き込む衝撃的な玉突き事故となったとき、人々は目を奪われた。リビー・ホップウッド(Libby Hopwood)騎手も鎖骨を骨折し病院に搬送されたが、他の2人の騎手は深刻な怪我を免れた。

 フォレスト騎手のボーイフレンドのスコット・ウェストーヴァー(Scott Westover)騎手はそのフェイスブックに次のように綴った。「最愛の人を亡くしました。美しいあなたを本当に愛しています。あなたと過ごした人生で最高の3年間を決して忘れることはないでしょう」。

 サラブレッドレーシングSA(Thoroughbred Racing SA)の議長であるフランセス・ネルソン(Frances Nelson)氏は哀悼の意を表し、次のように語った。「南オーストラリア州の競馬サークルは特別な人を亡くしました。若い彼女はすでに多くの偉業を成し遂げていましたが、まだキャリアのスタート地点に立ったばかりでした」。

 「ものすごく快活で明るくよく働く女性で、騎手という仕事に一生懸命取り組み、競馬産業を愛していました。一方で彼女が非常に愛されていたことを、競馬界全体を代表して述べたいと思います」。

 10月14日のフォレスト騎手の死は、前日のロックハンプトン競馬場でのカーリー‐メイ・パイ(Carly-Mae Pye)騎手の事故死に続くものであった。パイ騎手はトライアル競走で騎乗馬が両前肢を骨折し彼女の上に倒れ込んだことで、頭、首、胸を負傷した。

 11月4日(火)のメルボルンカップまであと3週間を切りメディアが競馬を盛り上げている熱狂的な時期に、この2名の女性騎手の死はオーストラリア競馬界に深い衝撃と悲しみを与えた。

 競馬場で尊い命が失われたことに対する怒りも広がっている。メルボルンカップ優勝の経験があるリー・フリードマン(Lee Freedman)調教師もこの競馬場での惨事を聞き、ソーシャルメディアで発言した。

 同調教師はツイッターにおいて次のように語った。「なんということでしょう。若いケイトリンの南オーストラリア州での事故の報を先ほど知りました。私たちは出走頭数を再検討し、進路妨害に対して全く新しいアプローチをとらなければなりません」。

 「そして、競走前獣医検査を真剣に検討しなければなりません。全出走馬が競走前に獣医検査を受けることは、間違いなく有益です。費用は重要ではありません。抜本的改革を行うのは今です」。

 トップジョッキーのケリン・マケヴォイ(Kerrin McEvoy)騎手は、オーストラリアの騎乗スタイルと厳しさに欠ける裁決が騎手を危機に晒していると語った。

 そして次のように語った。「関係者は内埒沿いにいるときにスピードを出し過ぎないように特別な注意を払います。それにより、私たち騎手はやってよい事といけない事の間の微妙な境界線上で競うようになるのです」。

 「裁決委員はおそらくより厳しい態度を取ることができます。昨日のコーフィールド競馬場での鞭の強打と進路妨害は全く目に余るもので、そのような行為は完全になくさなければいけません」。

 今週の死亡事故2件で、1年余りの間で生じた女性騎手の死亡事故は4件となった。

 26歳のシモーヌ・モンゴメリー(Simone Montgomerie)騎手はこの8月ダーウィン競馬場で騎乗馬から振り落とされて亡くなり、45歳のデザレー・ギル(Desiree Gill)騎手は昨年11月クイーンズランド州のカラウンドラ競馬場での落馬事故の後亡くなった。

 米国では10月14日にパナマ出身の17歳の見習い騎手ホアン・サエズ(Juan Saez)氏が、インディアナグランド競馬場での落馬事故で負った怪我により亡くなっている。

 英国では10月16日の競馬開催に先立って、その週に亡くなった騎手を追悼するために騎手は喪章を腕につけ、1分間の黙とうが捧げられた。

By Tom Kerr in Melbourne

[Racing Post 2014年10月17日「Deaths lead to calls for review of safety in Australia」]