海外競馬ニュース 2014年08月21日 - No.33 - 1
クラシック勝馬を送り出すガリレオとケープクロスの組合せ(イギリス)[生産]

 ある繁殖牝馬が主要競馬国でダービー馬の全兄弟あるいは半兄弟を誕生させることはあまり例がない。ある兄弟種牡馬がいずれもクラシック勝馬を送り出すことすらも珍しく、同じシーズンにそれが達成されることは尋常ではないに違いない。

 英ダービー(G1)と英オークス(G1)に関する限りでは、今年の6月6日(土)、7日(日)にこれが達成された。その前は1866年に遡り、“種牡馬の帝王”ストックウェル(Stockwell)の牡駒ロードリヨン(Lord Lyon)が3頭目の英国三冠馬となる途上で英ダービーを制し、ストックウェルの半弟キングトム(King Tom)の牝駒トーメンター(Tormentor)が英オークスを制し、兄弟種牡馬のそれぞれの産駒が揃って3歳クラシックを優勝した。

 今年の英ダービーが関係する限りでは、優勝馬がガリレオ(Galileo)産駒であることに驚きはない。ガリレオは自ら2001年ダービーを制しただけでなく、すでに産駒のニューアプローチ(New Approach)とルーラーオブザワールド(Ruler of The World)がダービーを制している。そのアイデンティティを持つオーストラリア(Australia)のダービー優勝は、関係者が「オーストラリアはエイダン・オブライエン(Aidan O’Brien)時代においてバリードイル勢(Ballydoyle)の最高馬となるかもしれない」と公言してきたことを考えれば、当然と言える。この前日にもう1頭のオブライエン厩舎のガリレオ産駒マーベラス(Marvellous)が1番人気でオークスに出走していたが、圧巻の3馬身3/4差で軽々と3戦3勝を達成したタグルーダ(Taghrooda)の6着以上の成績は収められなかった。

 タグルーダはガリレオの半弟シーザスターズ(Sea The Stars)の初年度産駒の1頭である。ガリレオもシーザスターズも、母は1993年凱旋門賞馬でその後注目すべき繁殖牝馬となったアーバンシー(Urban Sea 父ミスワキ)である。2世代後にフランケル(Frankel)が登場するまでの束の間であったが、欧州の“世紀の名馬”として君臨した並外れた競走馬シーザスターズは、2歳のデビュー戦で4着となったものの、その後は8戦8勝で、そのうち6勝はG1勝利であった。

 グリーンデザート(Green Desert)産駒のケープクロス(Cape Cross)を父とするシーザスターズは、2013年にその初年度産駒が2歳となり比較的静かにデビューし始めたが、相変わらず大きく期待されていた。この場合、その噂は事実に基づいていることが証明された。というのも、タグルーダがヴァジラ(Vazira)、マイタイタニア(My Titania)およびアフタヌーンサンライト(Afternoon Sunlight)の仲間入りを果たしたことで、シーザスターズは今や6頭のステークス勝馬の父となったのだ。

 シーザスターズがガリレオの半弟(異父兄弟)であることを考慮すると、シーザスターズのもとにガリレオの父サドラーズウェルズ(Sadler’s Wells)の牝馬が送られるのは自然なことである。現時点でこの組合せの産駒のうち19頭が競走年齢に達しており、出走した7頭の中でタグルーダが唯一のブラックタイプ勝馬となっている。

 タグルーダの母エジマ(Ezima)も頻繁に試みられた組合せによる産駒であり、その父サドラーズウェルズとダーシャーン(Darshaan)の牝馬の組合せは極めて成功している。エジマは、アイルランドのリステッド競走(準重賞)を3勝し、この相性統計において本分を尽くした。エジマは、同じ組合せの最も優れた産駒である、愛オークス(G1)とロワイヤルオーク賞(G1)の勝馬エバディーラ(Ebadiyla)と密接に関係している(訳注:エジマの母エジラ(Ezilla)とエバディーラの母エバジヤ(Ebaziya)は姉妹である)。

 オーストラリアは、スタンリー・エステート&スタッド社(Stanley Estate and Stud Co.)により生産されたのだが、スタンリー氏のファミリーネームは“ダービー卿”であり、その12代目はエプソム競馬場開催のこのクラシック競走にその名を付けた。ダービー卿は代々競馬と長い歴史的繋がりを持つが、この一族は1933年のハイペリオン(Hyperion)以来、エプソム競馬場開催のこのクラシック競走を生産者として制していなかった(ただし、戦時中の1942年にワトリングストリート(Watling Street)がニューマーケット競馬場で施行されたダービーを制している)。ハイペリオンもワトリングストリートも17代ダービー卿、つまり現在の19代ダービー卿の祖父によって生産された。

 オーストラリアの母ウィジャボード(Ouija Board)もケープクロスを父とする世界クラスの競走馬ということからシーザスターズの牝馬のカウンターパートと言える。世界中で競走したこの牝馬は、英オークス、愛オークス、BCフィリー&メアターフ(2勝)、香港ヴァーズをはじめとするG1を7勝した。ウィジャボードの母セレクションボード(Selection Board)はアーリントンミリオンS(G1)とクイーンエリザベス2世S(G2)を制したテレプロンプター(Teleprompter)の妹である。また、英国、アイルランド、フランス、ドイツおよびイタリアで重賞を制し、G1を4勝したイブンベイ(Ibn Bey)の姉でもある。そして、ヨークシャーオークス(G1)を優勝し、英オークス2着、セントレジャー3着のロジートターン(Roseate Tern)の姉でもある。ウィジャボードの4代前の牝馬グラディスカ(Gradisca)は仏オークス(G1 ディアヌ賞)の勝馬タヒチ(Tahiti)の母でもあり、偉大な豪州の競走馬キングストンタウン(Kingston Town)の3代前の牝馬(曾祖母)でもある。

 敏感な読者は今ではすっかりタグルーダとオーストラリアの血統の注目すべき類似性に気付いているだろう。1頭はシーザスターズ(ケープクロスを父とするガリレオの半弟)を父とし、サドラーズウェルズの牝馬から生まれている。そしてもう1頭はガリレオ(サドラーズウェルズを父とするシーザスターズの半兄)を父とし、ケープクロスの牝馬から生まれている。
 

オーストラリア(2011年4月8日生まれ 栗毛 英国)

ガリレオ
1998 鹿毛
アイルランド
Sadler's Wells
 1981 鹿毛
Northern Dancer
1961
Nearctic
Natalma
Fairy Bridge
1975
Bold Reason
Special
Urban Sea
 1989 栗毛
Miswaki
1979
Mr. Prospector
Hopespringseternal
Allegretta
1978
Lombard
Anatevka

ウィジャボード
2001 黒鹿毛
英国
Cape Cross
 1994 黒鹿毛
Green Desert
1983
Danzig
Foreign Courier
Park Appeal
1982
Ahonoora
Balidaress
Selection Board
 1982 鹿毛
Welsh Pageant
1966
Tudor Melody
Picture Light
Ouija
1971
Silly Season
Samanda

 

タグルーダ(2011年1月27日生まれ 鹿毛 英国)

シーザスターズ
2006 鹿毛
アイルランド
Cape Cross
 1994 黒鹿毛
Green Desert
1983
Danzig
Foreign Courier
Park Appeal
1982
Ahonoora
Balidaress
Urban Sea
 1989 栗毛
Miswaki
1979
Mr. Prospector
Hopespringseternal
Allegretta
1978
Lombard
Anatevka

エジマ
2004 鹿毛
アイルランド
Sadler's Wells
 1981 鹿毛
Northern Dancer
1961
Nearctic
Natalma
Fairy Bridge
1975
Bold Reason
Special
Ezilla
 1997 鹿毛
Darshaan
1981
Shirley Heights
Delsy
Ezana
1983
Ela-Mana-Mou
Evisa

 

By Alan Porter

[The Blood-Horse 2014年6月21日「Classic Combo: Galileo and Cape Cross」]