海外競馬ニュース 2012年02月23日 - No.9 - 2
BHA、鞭使用ルール修正後の技術的違反の減少を強調(イギリス)[開催・運営]

 議論を巻き起こしている鞭使用ルールに反対している者は、BHA(英国競馬統轄機構)と騎手との話し合いにおいて鞭使用ルール違反者に対する罰則に抜本的変更がなされるという希望を持っていた。しかし1月19日に競馬施行者側が「変更がなされるという期待を持つのは間違いです」と述べたことでその希望は打ち砕かれたようだ。

 BHAがルール変更後3ヵ月間の 騎乗停止処分件数を発表し、「主な狙いは達成されている」としたことから、競馬施行者側のこの主張はなされた。

 1月20日の話し合いは、騎手協会(Professional Jockeys Association)のCEOケヴィン・ダーレー(Kevin Darley)氏が、BHAの次期CEOポール・ビター(Paul Bittar)氏に騎手の懸念を訴える初めての機会となるだろう。一部では、これから英国競馬界を指揮するCEOが、一流騎手の処分を相次いで生じさせたこのルールを変更することで就任後直ちに影響力を行使するよう期待しているが、BHAは1月19日にそのようなことにはならないと強調した。BHAのスポークスマンであるジョン・マクシー(John Maxse)氏は、次のように語った。「この話し合いは見直し期間のモニタリングプロセスの一部であり、ルールの変更が行われることを期待するのは間違っています」。

「私たちが行おうとしているのは、建設的な対話です。これは重要な会合ですが、私たちは過剰な期待が起こらないよう努めています」。

 1月19日に発表された数字は、過剰な力での鞭使用、適切ではない馬体部位への鞭使用といった技術的な違反に科された騎乗停止処分が57%減少したことを強調していた。2011年10月10日〜2012年1月13日にこのような技術的違反に対しての騎乗停止処分は36件で、前年同期は83件であった。

 マクシー氏は次のように続けた。「主要目標のいくつかは達成されました。たとえば馬の福祉を危うくするような出来事は最大限根絶されました」。

「新しい鞭使用ルールは、跡が残るような鞭使用や過剰な力での使用を発効後3ヵ月で根絶したことで、技術的違反に関して顕著な削減を成し遂げました」。

 新ルール発効後の3ヵ月における全体的な鞭使用ルール違反は201件から196件と0.4%減少したが、前年同期には多数のレースが中止されたことを踏まえれば、鞭使用ルール違反による騎乗停止処分が実質的には14.9%減少したことを意味している。

 一方、騎手が鞭使用の許容回数を1回だけ超過して騎乗停止処分を科されるケースは26件から95件へと(3.65倍)かなり増加している。

 しかし騎手たちが鞭使用回数をいっそう心に留めるようなったことは、合計の許容回数が以前の15回から平地競走で7回、障害競走で8回に減らされたことを機に、許容回数を4回以上超え罰則が科されるケースが38件から14件へと63%減少したという事実に表れている。

 マクシー氏は、「統計の概略はBHAにとっての重要な根拠となっていますが、同時に重要なのは騎手からの反応です。協議を行えば間違いなく疑問が提起されるでしょうが、協議の狙いは両者が一緒に取り組むことなのです」と続けた。

 もう1つの顕著な減少は、走行妨害に関して科された騎乗停止処分であり、平地競走では131件から37%減の83件となり、全体的には31%減少した。

 マクシー氏は、「走行妨害の減少には勇気づけられます。障害競走では平地競走ほど走行妨害の違反は生じません。この減少は明らかな出来事で、全く期待していなかったというわけではありません。平地シーズンにおいては、鞭使用ルールがさらに試されることになると認識しています」と語った。

 BHAは鞭使用ルールが修正された後に走行妨害による騎乗停止処分が減少したことは驚きではないと述べたが、スティーヴ・ドロウン(Steve Drowne)騎手は、この関連性を完全には信じていない。

 ドロウン騎手は、「私はこの数字に納得はしていません。BHAは多く鞭を使用しないほうがより真っ直ぐに走らせることができると言おうとしていますが、その通りに相関関係があるかについて私は確信できません」と付言した。
 

2011年10月10日〜2012年1月13日の違反件数
                                                                                                                                                        ( )内は前年同期
  平地競走 対前年同期比増減 障害競走 対前年同期比増減 全体 対前年同期比増減
鞭使用回数超過 95  (75) +21% 69(43) +60% 160(118) +36%
鞭使用の技術的違反 19  (51) -63% 17(32) -47% 36  (83) -57%
走行妨害 83(131) -37% 24(25) -4% 107(156) -31%

 
By Paul Eacott

[Racing Post 2012年1月20日「‘Wrong to expect changes’ from whip summit」]