海外競馬ニュース 2012年08月23日 - No.35 - 1
賭事産業と競馬産業の厳しい状況を示す上半期の業績データ(アイルランド)[開催・運営]

 ホースレーシングアイルランド(Horse Racing Ireland:HRI)が7月18日に発表した上半期の業績データは、5年前から下降傾向にあった賭事事業のさらなる急落を表しており、場内ブックメーカーが厳しい状況に直面していることを如実に物語っている。

 内容としては、場内ブックメーカーの売上げが前年同期比19%減の3,970万ユーロ(約39億7,000万円)であった。

 場内ブックメーカーの売上げは、2007年から2011年までで52%減少しており、この傾向が継続するとすれば、2012年末までに60%以上減少する可能性があると危惧されている。

 HRIのCEOブライアン・カヴァナー(Brian Kavanagh)氏はこのデータについて、次のように語った。「場内ブックメーカーが直面している状況は非常に深刻で、下降傾向の継続を裏付けるデータに表れています」。

 「賭事税改革がなされない限り、場内ブックメーカー事業は引き続き困難に直面するでしょう」。

 「経済不況は一つの要素ですが、場内ブックメーカーは携帯端末やインターネット賭事の技術とも厳しく競合しており、税制上の大きな不利を背負って運営しなければならなくなっています」。

 「農漁業食料省が依頼した競馬産業の見直し評価の完了と賭事課税に関する目前の法制化は、2001年のHRIの設立以来、アイルランド競馬の財政と運営にとって最も重要な進展となるでしょう」。

 「前向きな方向での合意は可能であるという希望を与える今回の一連の協議には、すべての団体が携わりました」。

 新規の馬主登録は、前年同期の447人から11.2%減の397人となり、現役馬頭数は前年同期の8,217頭から6.7%減の7,668頭となっている。

 カヴァナー氏は、「現役馬と新規馬主に関するデータは、競馬産業全体の健全性と今後の産業内の雇用展望にとって、大きな心配の種です。これは現在の競馬産業の状況を表わしていますが、HRIは、この動向を反転させ経済の回復から利益を得られるようにするため国内の馬主制度プログラムにさらに資金を投入するつもりです」と語った。

 一方、前年同期に持ち直した他の重要な分野は失速している。すなわち、パリミューチュエル賭事の全体的な売上げは1.4%減少して2,450万ユーロ(約24億5,000万円)となり、場内パリミューチュエル賭事売上げは23%減の480万ユーロ(約4億8,000万円)となった。そして、全体的な入場者数は2011年とほぼ同じレベルの49万6,000人であったものの、競馬開催日の平均入場者数は5.3%減の3,139人となった。

 カヴァナー氏は次のように付言した。「競馬開催日の平均入場者数の減少は、開催日が増加したことと、第2四半期のパンチェスタウンフェスティバルその他の日程における前例のない悪天候が主な要因となっています。このことはパリミューチュエル賭事の場内馬券売上げに影響を与えた大きな要因でもあります」。
 

アイルランド競馬産業の上半期業績データ(1月〜6月)
  2011年1月〜6月 2012年1月〜6月 増減
サラブレッドセリ売上げ 2,000万ユーロ
(約20億円)
2,290万ユーロ
(約22億9,000万円)
14.50%
スポンサー収入 206万ユーロ
(約2億600万円)
280万ユーロ
(約2億8,000万円)
36%
賞金額 2,045万ユーロ
(約20億4,500万円)
2,035万ユーロ
(約20億3,500万円)
- 0.4%
場内ブックメーカー売上げ 4,950万ユーロ
(約49億5,000万円)
3,970万ユーロ
(約39億7,000万円)
- 19%
パリミューチュエル賭事売上げ 2,480万ユーロ
(約24億8,000万円)
2,450万ユーロ
(約24億5,000万円)
- 1.4%
場内パリミューチュエル賭事売上げ 630万ユーロ
(約6億3,000万円)
480万ユーロ
(約4億8,000万円)
- 23%
現役馬頭数 8,217頭 7,668頭 - 6.7%
入場者数 49万7,000人 49万6,000人 - 0.3%

 

By Tony O’H ehir
(1ユーロ=約100円)

[Racing Post 2012年7月19日「HRI figures reveal betting and racing are enduring tough times」]