海外競馬ニュース 2010年09月30日 - No.39 - 1
サリスカが発馬機を出ず、賭事客に災難(イギリス)[その他]

 BHA(英国競馬統轄機構)は、8月19日の夜ヨークシャーオークスの本命馬サリスカ(Sariska)が発馬機から出なかったために競走中止となり、同馬の馬券を買った賭事客が見捨てられたにもかかわらず、競馬施行規程の見直しを拒否した。

 2009年に英国オークス(G1)と愛国オークス(G1)を制したサリスカは、ダーレー社(Darley)がスポンサーであるヨーク競馬場のヨークシャーオークス(G1)においてオッズ3.1倍の一番人気であったが、ジェイミー・スペンサー(Jamie Spencer)騎手を背にスタートを拒んだために関係者と賭事客にひどく苛立たしい思いをさせた。

 サリスカは発馬機の中には入っていたのでレースに出走していると見なされたため、このため大多数のブックメーカーは、抗議の声にもかかわらずサリスカの馬券を買った賭事客に賭金の返還を行うことを拒んだが、パディパワー社(Paddy Power)、ボイルスポーツ社(Boylesports)を含むいくつかのブックメーカーは賭金の返還を行った。

 BHAのスポークスマンであるポール・ストラザース(Paul Struthers)氏は、「規程変更の要請は誰からもありませんでした。たとえサリスカを支持していた人々にとってはフラストレーションの溜まることだとしても、規程は明確であり競馬の本質的な部分です」と語った。

 同氏は次のように続けた。「競馬変革プロジェクト(Racing For Change)あるいはホースメングループ(Horsemens’ Group)から申入れがあった場合に限り、規程の見直しを検討したでしょう。私たちはこれが馬主、調教師、騎手および賭事客にとって不快な状況であったとしても、出来る限り明確な規程を守りたいと考えています」。

 パディパワー社は、賭事客が損なった賭金に対し20万ポンド(約2,800万円)以上の返還を行うと述べており、スカイベット社(Skybet)、ジェニングスベット社(Jenningsbet)およびベターベット社(Betterbet)も賭金の返還を行っている。

 ジェニングスベット社のスポークスマンは、「人々は以前から規程に不平を言っていました。私たちは、賭事客が賭けた馬は走らなかったと判断したので、返還を行っています」と語った。

 ウィリアムヒル社(William Hill)のスポークスマンであるケイト・ミラー(Kate Miller)女史は、大多数のブックメーカーの姿勢を擁護し、次のように語った。「サリスカの頑固さに賭事客はがっかりさせられましたが、私たちは競馬施行規程に従い賭金の返還を行わないことを決定しました。私たちは個々に状況を検討し、他の賭事業者の姿勢を見て行動を起こすことはありません」。

 レーシングポスト紙のウェブサイトにコメントを投稿した賭事客の多くは、賭金の返還を行わないブックメーカーに批判的であった。規程変更の要求もあった一方で、もし規程が賭金の返還を認めたとすれば、優勝馬ミッドデイ(Midday)の馬券を買った賭事客に対し不公平になっただろうと考える人もいた。

 次のレースでザレビヤ(Zarebiya)に騎乗し発馬機の中で立ち上がって頭を打ったスペンサー騎手は、そのレースではまったくチャンスを失い騎手として惨めな40分間を終わらせた。同騎手は、「何が言えるでしょうか?サリスカと私は先にゲートに入り、ミッドデイ、そしてバーシバ(Barshiba)が枠入りするのを待っていました。これはがっかりさせられる出来事でしたが、これにより誰かが死んだわけではないでしょう」と語った。

 サリスカはこれまでにヨーク競馬場で3回出走したうち2回優勝し、2009年のヨークシャーオークスでは2着であった。

 同馬を管理するマイケル・ベル(Michael Bell)調教師は、「これは本当に気を揉む出来事ですが、私はこれからどうすれば良いかまだ言えません。なぜなら私たちはショック状態にあるからです」と述べた。

 同調教師は次のように続けた。「サリスカはスムーズに発馬機に入りましたが、ヨーク競馬場のコースを良く知っており、厩舎への入り口は発馬機のまさにすぐそばでした。同馬は抜け目がなく、頭が良いですが、スタート位置が厩舎に近いことが理由だったのかどうかは私には分かりません」。

 「非常にがっかりさせられるような出来事でした。私はオーナーブリーダーのキャロル・バンフォード卿夫人(Lady Carol Bamford)とレーシングマネージャーのヒューゴ・ラセルズ(Hugo Lascelles)氏と話し合い、今後どうするかをまとめる必要があります」。

 「彼女は少しばかり気まぐれの面があります。私たちはそれについてよく考える必要があります。今回彼女は発馬機の中で長い間他の馬を待ったので、スタートに嫌気をさしたのだと思いますが、いつもは発馬機から勢い良く飛び出しています」。

 サリスカの次走に関して賭事客が考えをめぐらせることは、同馬に発走試験が強制されることはないだろうという点である。

 裁決書記であるトニー・マクグローン(Tony McGlone)氏は次のように説明した。「サリスカは競走することを拒否したので、悪癖馬であると記録されるでしょう。しかし、彼女は発馬機の中で暴れたわけではありませんので、発走試験を受ける必要はないでしょう」。

By Rob Smith and Jon Lees
(1ポンド=約140円)

[Racing Post 2010年8月20日「Punters’ woe as Sariska refuses to start」]