海外競馬ニュース 2010年08月12日 - No.32 - 1
ケンタッキー州競馬委員会、インスタントレーシング賭事を承認 (アメリカ)[開催・運営]

 収入減少および他州における競馬以外の賭事との競争に対抗するため、ケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission: KHRC)は満場一致で、州内の認可競馬場における “インスタントレーシング”賭事の運営を許可する規程を可決した。

 正確には“過去のレースへの賭事”と称されているこの新形式の賭事は、新しく修正されたエキゾチック賭事規程の1つとしてKHRCにより承認された。

 この動きは、同州の競馬産業がカジノタイプの賭事導入を承認するために行った最近の取り組みが州議会において失敗した後にもたらされた。この“過去のレースへの賭事”は、初めてオークローンパーク競馬場に導入された電子式の賭事であるインスタントレーシングを手本にし、すでに施行された過去のレースを対象としたパリミューチュエル賭事を行わせる。

 KHRCのボブ・ベック(Bob Beck)会長は、「私はこの規程の承認により賞金が増加し、ケンタッキー州の馬主、調教師そして競走馬が必要としている多くの収入がもたらされることで、不安定な競馬産業を支援することになると確信しています」と語った。

 インスタントレーシングの機器は、電子ゲームであるゆえにスロットマシンに似ている。しかしインスタントレーシングでは、無作為に選び出されたレースに関する限られた勝馬予想情報を使用しながら、賭事客は以前施行されたレースに賭事を行うことができる。

 インスタントレーシングは、賭事客が競馬場で施行されるレースではなく、お互いで争うパリミューチュエル賭事の1つの形式なので、ケンタッキー州において合法とみなされた。この結果、インスタントレーシングへの賭金からの歩合は、従来の割合にしたがって競馬場、賞金および州へ拠出される。

 KHRCの専務理事リサ・アンダーウッド(Lisa Underwood)氏は、規程では収入がどのように分配されるかが詳しく説明されていないと述べ、他のタイプの賭事における控除率と同じように、それは競馬場とホースマンの間の交渉で決定されるだろうと付け足した。

 この新しい形式の賭事は、サラブレッド競走、繋駕競走およびクオーターホース競走を施行する州内の8競馬場においてその運営が許可され、ルイビルにあるチャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)所有の調教および賭事施設であるトラックサイド(Trackside)においても許可される。しかし、同州の場外馬券発売所においては許可されない。

 スティーヴ・ベッシャー(Steve Beshear)州知事は、「この規程はケンタッキーの競馬場が人々を惹きつけ、賞金額を補い、奮闘しながらもケンタッキーで馬を出走させることを望むホースマンを支援するための更なる手段を提供するでしょう」と述べた。

 ケンタッキー州の検事総長は以前、“過去のレースへの賭事”の賭事形式は行政規程により定義されていないので許可されないとする意見を述べていたが、今回修正された新たな規程により、その導入が可能になる。

 過去に施行されたレースを対象とした賭事は、授権規程が可決されれば許可されるという法律専門家の意見があるものの、KHRCと競馬場は次の3点を表明する宣言的判決を獲得するために訴訟を起こすだろう。

 (1)−KHRCは、ケンタッキー州修正法(Kentucky Revised Statutes: KRS)の230章に基づき、競馬のパリミューチュエル賭事を統制する法的権限を有する。

 (2)−過去に実在したレースを対象としたパリミューチュエル賭事の認可運営は規程により権限を与えられるので、KRSの528章に基づき、賭事禁止法に違反することにはならない。

 (3)−過去に実在したレースを対象としたパリミューチュエル賭事による収入には、パリミューチュエル賭事税が課せられるという歳入庁の決定は、州税法に基づく正当で適法な行使である。

 ベック氏は、新しい規程は公聴会と裁判所の裁定に従うので、“過去のレースへの賭事”が実現するまでには6ヵ月の期間を要するだろうと語った。

 KHRCの措置はすぐに、競馬場運営者に歓迎された。

 近年競馬開催の大幅縮小に悩まされているターフウェイパーク競馬場の場長兼CEOであるボブ・エリストン(Bob Elliston)氏は、ケンタッキーの競馬産業が現在受けている重圧について指摘した。

 エリストン氏は声明において、「私はそれゆえ、KHRCからの朗報に感謝しており、競争に対処するために利用できる選択肢を追求する提案を歓迎しています。インスタントレーシングが他州と対等に私たちに十分な収入をもたらすとは思いませんが、今後一息つける時間を与えてくれるでしょう」と語った。

 キーンランド競馬場のニック・ニコルソン(Nick Nicholson)場長は、次のように語った。「キーンランド競馬場は、“過去のレースへの賭事”に関して本日KHRCが満場一致で可決したことを支持します。理由は簡単です。この新しいパリミューチュエル賭事は、この非常に困難な時期において、私たちが賞金を上げて競馬産業を後押しするための追加的な収入を創出するもう1つの手段となりうるからです。しかし、これは私たちの産業の前に立ちはだかっている難題の解決策とはならないでしょう。はっきり言ってしまえば、他州が競馬以外の賭事で賞金を大幅に増加させ、競馬産業における市場勢力図を変化させているような収入が、ケンタッキー州あるいはケンタッキー州の競馬産業にもたらされることはないでしょう」。

 「とは言うものの、競馬産業が常に欲してきたものは、我が競馬事業に対して一層の投資を可能にする手段を持った自助能力です。そしてさらに重要なことは、ケンタッキー州のレースが人々を惹きつけ続け、米国中の競馬場と競合できるようにするための財政を増やす能力です。インスタントレーシングのような新しいパリミューチュエル賭事は、そのような手段の1つとなりうる可能性があります。ケンタッキーの誇れる産業である競馬産業をサラブレッド競馬のための世界資産とし続けるためにいくつもの投資を行い、ケンタッキー州のために雇用と経済成長を生み出すことができるよう、私たちが迅速に行動を起こすことを望んでいます」。

By Ron Mitchell

(関連記事)海外競馬ニュース 2006年No.20「場外発売額とインスタントレーシング、オークローンの賞金を増加させる(アメリカ)」、2006年No.32「カリフォルニア州でのインスタントレーシング の営業許可延期(アメリカ)」
 

[bloodhorse.com 2010年7月20日「KY Commission Approves Form of Instant Racing」]