海外競馬ニュース 2010年05月27日 - No.21 - 3
現役騎手と引退騎手、負傷騎手支援のためにステージに立つ(アメリカ)[その他]

 それは、ジョン・コート(Jon Court)騎手によれば“騎手たちが持ちあわせていない才能を見せつけた瞬間”であった。

 多くのエリート騎手と引退騎手は4月16日夜、毎年行われる永続的障害者騎手基金(Permanently Disabled Jockeys Fund: PDJF)への資金援助を目的としたカラオケ大会およびチャリティーオークションである“ライダーズアップ!(Riders Up!)”の第2回大会において、心の込もっているものの少しキーの外れた持ち歌を披露し、キーンランド競馬場に集まった大勢の観客を楽しませた。

 PDJFの役員会の副会長を務めるコート騎手は、「この催しは非常に充実していました。私たちは東海岸、西海岸、そして海外の人々から多くの支援を受けました。私たちは皆、キャリアの途中で挫折しすべてを犠牲にした騎手の生活を改善させるため、この企画を続けて行きます」と語った。

 コート騎手がとり上げた騎手の1人は、24歳のマイケル・ストレート(Michael Straight)騎手である。見習い騎手であったストレート騎手は、2009年8月26日のアーリントンパーク競馬場での落馬事故により車椅子に乗る身となった。同騎手は現在、ケンタッキー州レキシントンにあるカーディナルヒル・リハビリセンター(Cardinal Hill Rehabilitation Center)において治療を受けており、脊髄損傷患者の歩行を再び可能とするのを手伝うロコマット(Lokomat)というトレッドミルのような機械を用いてリハビリに励んでいる。

 マイケル・ストレート騎手は4月16日、双子の兄であり同僚騎手であるマシュー(Matthew)と多くの騎手に付き添われて、熱狂的な観客を前にジャーニー(Journey)の『ドント・ストップ・ビリーヴィン(Don’t Stop Believin’)』を力強く歌った。

 「このような人々と一緒にこの舞台に上がれたことは凄く楽しかったです。私はここケンタッキーでまさにジョッキーとして働いていた頃に戻ったような気分になりました。私は今PDJFに所属しており、その活動の一環としてマシューと一緒にステージに上がることができたことはとても楽しかったです。ステージが私と彼だけであっても、それはそれでまた面白かったでしょう」と語った。

 PDJFは負傷騎手に財政援助を行うとともに、騎手の安全性を改善し致命傷を減らすために競馬産業および医療研究グループと一緒に取組んでいる。

 “ライダーズアップ!”のような資金調達のためのイベントは、2006年に法人化されたPDJFに財政援助を行うだけではなく、騎手がファンと交流し、騎手の共同体へ支援活動を行うのに一役買っている。

 大勢の騎手が観客をただ楽しませた一方で、2人の騎手が傑出した才能を発揮した。ディーン・マーナフ(Dean Mernagh)騎手はフランク・シナトラの『ザッツライフ(That’s Life)』を歌いスタンディングオーベーションを浴び、審査員賞を受賞した。また、引退騎手であるチャーリー・ウッズ(Charlie Woods)氏は、バックダンサーにジュリアン・ルパルー(Julien Leparoux)騎手とトニー・ファリーナ(Tony Farina)騎手を従え、豹柄のタイツで完璧にロッド・スチュアートに成りきり満場の大かっさいを博した。ウッズ氏は演奏中に最も多くの募金を集めたことにより観客賞を勝ちとった。

 しかし何よりもまず重要であったのは、騎手たちの家族がイベントの中でそれぞれの兄弟や姉妹を支援していたことである。

 ギャレット・ゴメス(Garrett Gomez)騎手は、「首の骨を3回折っても騎乗できる騎手もいれば、1回の落馬で障害者となってしまうこともあります。これはすべての騎手にとって重要なイベントとなったと思います。私たちは、このイベントが続き障害を持つ騎手に役立ち続けることを望みます」と語った。

 PDFJについての情報を閲覧し、募金を行うには以下のアドレスを参考にされたし。
 http://www.pdjf.org/

By Tim Nichols

(関連記事)海外競馬ニュース2009年No.15「現役および引退騎手、慈善募金のために歌声を披露(アメリカ)」、2009年No.18「双子騎手、それぞれの競馬場で切磋琢磨(アメリカ)」

[thoroughbredtimes.com 2010年4月17日「Jockeys take the stage to support injured riders」]