海外競馬ニュース 2008年08月21日 - No.33 - 4
人種差別的暴言、上訴・懲罰委員会の審理へ(オーストラリア)[その他]

 オーストラリアの競馬界は、先週末にある騎手がライバルの見習い騎手に対し「ちくしょうこのテロリストめ」という暴言を浴びせた出来事を受けて、人種差別に関する初めてのケースに取組もうとしている。

 7月12日、ムーニーヴァレー競馬場における第2レースの後ダニエル・ムーア(Daniel Moor)騎手(23歳)は激情に駆られて、キプロス系のニック・メフメット(Nick Mehmet)見習い騎手(28歳)に暴言を浴びせた。報道によれば、検量室におけるこの暴言は裁決委員の目の前で発せられたものである。なお、ムーア騎手は2008年1月に、女性見習い騎手ケイト・ダイソン(Kate Dyson)氏の前で下品な言葉遣いをしたかどで、200ドル(約2万2000円)の過怠金が科せられた経歴がある。

 裁決委員は即座に調査を始め、競馬統括機関のレーシング・ヴィクトリア社(Racing Victoria)のデス・グリーソン(Des Gleeson)首席裁決委員は、この暴言の重大性にかんがみ、上訴・懲罰委員会(Racing Appeals and Disciplinary Board)に直接この事案を上申した。この案件は7月半ばに審理される予定である。

 ムーア騎手は暴言のあとメフメット騎手に謝罪したと言われている。マフメット騎手は7月12日夜、オーストラリア・デイリー・テレグラフ紙(Australia’s Daily Telegraph)に、「私は調査が始まるまでコメントは控えたいと思います。それに、ダニエルを不利にしたくはありません。彼は今回の事件の重大性を分かっていると思います」と述べた。

 しかし上訴・懲罰委員会の委員たちは、この申立てに対し有罪を宣告するとしても、人種差別事件については前例がないので、ムーア騎手に課すべき罰については検討が必要となろう。

 グリーソン首席裁決委員は、ムーア騎手のメフメット騎手に対する侮辱的な発言は、規則175(q)条に該当すると述べた。

 同氏は、「しかし、類似の前例がありません。過去に、騎手が罵倒したり脅迫した場合に罰則を適用したことがあります。ケースバイケースで検討・判断すべきです」と語った。

 グリーソン氏は、ムーア騎手はホームストレッチに差し掛かった時にメフメット騎手に邪魔されたと述べた。

 競馬統括機関レーシング・ニューサウスウェールズ社(Racing New South Wales)の首席裁決委員レイ・ムリヒー(Ray Murrihy)氏は、これまで人種差別が問題となった事案は記憶にないが、いかなる種類であれ悪質な迷惑行為を軽く取り扱うことはないと述べた。

 ムリヒー氏は、「裁決委員たちは職場における悪質な迷惑行為を寛大に扱いません。人種差別に関する事案も同様です」と語った。

 「裁決委員は競馬関係者の競馬関与を一時禁止にしたり、彼らの免許を取り消す権限があります。ここ数週間に、悪質な迷惑行為のかどでニューキャッスルの調教師の免許を剥奪し、その調教師の厩舎スタッフには競馬への関与を一時禁止としました」。

 以前シドニーで騎乗し、現在はクイーンズランドを本拠とするボビー・エル=イッサ(Bobby El-Issa)騎手は、ヨルダン系であることをしばしばからかわれたが人種差別的な悪口を言われたことはないと述べた。

 エル=イッサ騎手は、「私たちは常にふざけあっていますが、最終的に私自身はここで生まれましたので、たとえ他人がどう見ようとオーストラリア人であると考えています。私たちは多文化社会に生きているのです」と語った。

 同騎手は次のように続けた。「ジョークを言うのは構いませんが、事態が深刻になったのは残念です。私はそのようなことが甘受されるべきではないと思っていますし、上訴・懲罰委員会が申立てに対して適切に対処すると確信しています。彼がこのような暴言を普通の職場で吐いたとしたら、告訴されるでしょう」。

By Racing Post staff

[Racing Post 2008年7月13日「’Terrorist’ jibe presents Australian racing with racism test case」]