海外競馬情報 2016年04月20日 - No.4 - 5
日本で購買したディープインパクト産駒は貴重な宝物(イギリス)【生産】

 ドバイワールドカップデー(3月26日・メイダン競馬場)において、ディープインパクト産駒のリアルスティールとラストインパクトは、それぞれドバイターフ(G1)優勝とドバイシーマクラシック(G1)3着という素晴らしい成績を収めた。この結果は、ここ最近のカタールレーシング社(Qatar Racing)のディープインパクト産駒への投資が正しかったことを証明した。

 デヴィッド・レッドヴァース(David Redvers)氏は2年前、カタールレーシング社の代表として、JRHAセレクトセールでディープインパクト産駒7頭を購買した。そのうち6頭が英国で調教されており、今年デビュー予定である。

 これまで欧州で出走したディープインパクト産駒と同様に、これらの購買馬も活躍することが大いに期待されている。欧州で活躍した有名なディープインパクト産駒には、2012年仏1000ギニー(G1)を制したビューティーパーラー(Beauty Parlour)、その全兄でリステッド勝馬のバロッチ(Barocci)、そしてアレフランス賞(G3)を制したアクアマリーヌ(Aquamarine)がいる。これらはすべて、ウィルデンシュタイン一族(Wildenstein family)によって生産・所有されていた。

 3歳牡駒ニューワールドパワー(New World Power ロジャー・ヴァリアン厩舎)は、レッドヴァース氏の購買馬の中で最も高価な2億6,000万円であり、セレクトセール1歳部門の最高価格馬となった。

 ノーザンファームが生産したニューワールドパワーの血統は傑出している。全姉は日本のローズS(G2)勝馬タッチングスピーチであり、母は2007年フィリーズマイル(G1)勝馬リッスン(Listen)である。リッスンの全姉は、ヘンリーザナヴィゲーター(Henrythenavigator)の母セクオヤー(Sequoyah G1馬)である。

 レッドヴァース氏は「ニューワールドパワーは賢く、並外れた能力を秘めた馬です。高額馬の風格もあります。もうすぐ未勝利戦でデビューさせる予定で、とても楽しみです」と述べた。

 同馬は、英ダービー(G1)と仏ダービー(G1)に登録しており、英ダービー優勝には現在33-1(34倍)のオッズが付けられている。

 ニューワールドパワー以外は当歳部門で購買されたので、現在2歳である。

 この中で1億8,000万円と最も高額だったのは、ドラール賞(G2)優勝牝馬ミュージカルウェイ(Musical Way 父ゴールドアウェイ)の仔で、日本の牝馬二冠馬ミッキークイーンの全弟である。

 レッドヴァース氏は同馬について、次のように語った。「ヘッタ・スティーヴンス(Hetta Stevens)氏のもとで馴致されており、デヴィッド・シムコック(David Simcock)厩舎に入る予定です」。

 「これらのディープインパクト産駒はあまり早熟ではなさそうです。2歳シーズン後半から才能を開花させるタイプであり、3歳シーズンには2000mや2400mのレースで活躍すると考えられます」。

 シムコック厩舎に預託されたもう一頭の購買馬フィアスインパクト(Fierce Impact)は、日本のG3・2勝馬ケイアイガーベラの初仔である。ケイアイガーベラの母は、米国のG3勝馬バウンダリー(Boundary ケンタッキーダービー馬ビッグブラウンの父)の全妹である。

 レッドヴァース氏は6,600万円で落札したこの牡駒について、こう語った。「見栄えが良く、シムコック厩舎の人気者です。米国の牝系を受け継ぐケイアイガーベラはスマーティージョーンズ(Smarty Jones)産駒で、2歳のデビュー戦から勝利を挙げました」。

 ラルフ・ベケット(Ralph Beckett)厩舎には、2011年に豪ダービー(G1)とオーストラリアンギニー(G1)を制して豪州最優秀3歳牝馬となったシャムロッカー(Shamrocker 父オレイリー)の初仔が入厩した。シャムロッカーの全妹には豪州G2優勝牝馬ボヘミアンリリー(Bohemian Lily)、半妹にはニュージーランドG1馬ロックディーヴァ(Rock Diva)がいる。

 レッドヴァース氏は9,200万円で落札したこのディープインパクト牝駒について、「最高の牝駒です。何事も簡単にこなし、とても俊敏で、出世しそうです」と述べた。

 ベケット厩舎に預託されたもう1頭の良血牝駒は、フランスのG3牝馬ラブアンドバブルス(Love And Bubbles 父ルーソバージュ)の仔であり、2012年日本ダービー(G1)優勝馬ディープブリランテとG3・2着馬ハブルバブルの全妹である。

 レッドヴァース氏は7,800万円で落札したこの牝駒について、こう語った。「とても美しい牝馬です。あまり大きくありませんが、馬格が良くて魅力的です。この愛らしい牝駒がディープブリランテと同じように能力を発揮することを望んでいます」。

 アンドリュー・ボールディング(Andrew Balding)厩舎には、オープン2着馬タイガーストーン(母ルンバブギー、 母父レインボークエスト)の半弟インパクトポイント(Impact Point)が預託されている。同じ牝系からは中山記念(G2)勝馬フェデラリスト、目黒記念(G2)勝馬スマートロビン、米国のG2勝馬キーダンサー(Key Dancer)が出ている。

 レッドヴァース氏は3,500万円で購買したこの牡駒について、「愛らしく素晴らしい走りをする馬です。美しい動きで何事も簡単にこなします」と述べた。

 ドイツのアンドレアス・ウォーラー(Andreas Wohler)氏は、2014年JRHAセレクトセールで、カタールレーシング社のために2頭を購買した。ヴィクトワールピサの牡駒とキングカメハメハの牡駒である。前者はセントウルS(G2)勝馬ハクサンムーンの半弟であり、後者は阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)勝馬ピースオブワールドの仔である。

 レッドヴァース氏はセレクトセールを振り返り、また購買馬の今後の活躍を期待して、次のように語った。「競争の激しい市場でしたが、日本で提供される高額賞金を考えれば納得できます。大きなギャンブルでしたが、貴重な宝物を持ち帰りました。良い結果がもたらされるだろうと、楽観的に考えています」。

 「ディープインパクトは驚異的な種牡馬です。ディープインパクトがどのようなタイプの産駒を出すかを語れるほど、私たちはディープインパクト産駒を十分には見ていません。しかし、これらの産駒はすべて良質で性格が素直です。競走で活躍できるよう、大切に育てていこうと思っています」。

 カタールブラッドストック社(Qatar Bloodstock)が所有するディープインパクト産駒がこの魅力的な種牡馬の偉業をさらに高められるとすれば、どんなに素晴らしいことだろう。ディープインパクト産駒は6世代しか出走していないが、重賞勝馬は66頭に上る。

By Chris Hill

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[Racing Post 2016年4月1日「'It was a big gamble but we've got some rare gifts'」]