ホーソーン競馬場の破産で改めて問われる馬券精算資金の保護(アメリカ)【開催・運営】
ニューヨーク競馬協会(NYRA)の破産によって、パリミュチュエル賭事の精算プロセスに追加の保護措置が必要であることが明らかになってから約20年が経った。ところが今、2月にチャプター11(連邦破産法第11章)の適用を申請したホーソーン競馬場をめぐり、私たちは再び同じ問題に直面している。
シカゴ近郊にあるこの競馬場の破産手続きで作成された債権者リストには、他の競馬場や競馬団体、その他の馬券発売事業者に支払われるべき、パリミュチュエル賭事の払戻資金やレース映像提供料が含まれている。今後の展開を見守る必要はあるが、こうしたパリミュチュエル賭事の運営に関わる資金が債権者リストに含まれていることは、同様の懸念を招いた2006年のNYRA破産以来、状況がほとんど変わっていないことを示唆している。
サラブレッド競馬は州をまたいだ馬券発売に依存するビジネスモデルであるため、パリミュチュエル賭事に関わる資金を、とりわけ経営難に陥っている事業者の運営資金とは分離する保護措置を講じておくことが重要である。こうした保護措置がなければ、たった1つの競馬場、競馬団体、あるいは口座開設型投票(ADW)事業者が破綻しただけでも、業界全体に影響が及びかねない。ホーソーン競馬場の破産手続きでは、まさにその事態が起きているように見える。シカゴ地域で最後のサラブレッド競馬を開催する競馬場を失う懸念に加え、馬券発売事業者の一部が、パリミュチュエル賭事の精算金を優先的に全額弁済させる法的判断を得られなければ、今回の破産によって、数百万ドルの損失が業界に生じるおそれがある。
チャーチルダウンズ社(CDI)とデラウェアパーク競馬場が提起した訴訟は、現在ホーソーン競馬場の他のすべての債権者と同じ扱いを受けているパリミュチュエル賭事の精算金について、全額の支払いを求めている。両社は、これらの資金はパリミュチュエル賭事の一部として、信託財産として保管されていると主張している。つまり、この資金はもともとホーソーン競馬場のものではなく、同競馬場の事業運営資金に含めるべきではないということである。多くの競馬関連団体に対する未払い額はまだ明らかになっていないが、CDI・デラウェアパーク競馬場側の訴訟によれば、ホーソーン競馬場に対し、パリミュチュエル賭事の精算金として150万ドル(約2億4,000万円)を超える額を請求している。
CDIは、この資金をホーソーン競馬場の破産財団に含めるべきではないと主張している。破産財団に含められれば、最終的に支払われる額が大幅に減り、1ドル当たり数セント程度にとどまる可能性があるからである。一方、ホーソーン競馬場側は、この資金を未払いの契約上の債務と位置づけ、破産手続きの対象に含めるべきであると主張している。
この訴訟がどのように展開するかは引き続き見守る必要がある。問題の資金が最終的に一般の再建計画に組み込まれれば、全額が返済される見通しは危ういと言える。8月に破産手続きで提出された書面で、連邦管財人代理のアダム・ブリーフ氏は、ホーソーン競馬場が9,000万ドル(約144億円)で不動産を売却しても、「債務者の不動産に設定された担保権を弁済するのに必要な額には、数百万ドル不足している」と述べた。
法的な立場について、CDIは、州法およびパリミュチュエル賭事に関する契約上の合意に基づき、当該資金はホーソーン競馬場の他の事業運営資金から分離して管理されるべきであると主張している。
9月9日付の提出書類には、次のように記されている。「ホーソーン競馬場は、係争中のパリミュチュエル賭事の資金に対する所有権を引き続き主張し、当該資金を破産財団の財産として扱っている。一方、原告(CDI)は、当該資金は信託、寄託、またはそれに類する保管形態で保有されているため、破産法上、破産財団の財産には含まれないと主張している」デラウェアパーク競馬場も同様の主張を行い、ホーソーン競馬場が破産財団に含めようとしている資金は、実際にはパリミュチュエル賭事の資金であり、信託として保有されるべきものであると指摘した。
ブリーフ氏は、裁判所に対し、ホーソーン競馬場の破産手続きをチャプター11からチャプター7(連邦破産法第7章)へ移行させるよう求めている。チャプター11では、破産した当事者はすべての資産を清算する必要はない。債権者が受け入れ、裁判所が承認した計画を提示すれば、それに基づいて事業を継続することができる。一方チャプター7では、債務者の財産を清算し、そこから得られた資金を債権者に分配することになる。
ホーソーン競馬場の破産手続きをチャプター7に移行すべきという主張を裏付けるため、ブリーフ氏は、ホーソーン競馬場が引き続き損失を出し続けており、再建の見込みもほとんどないこと、破産財団の財産も引き続き適切に管理されておらず、「ある支払いを賄うために別のところから借りている」状態にあると主張している。その一例として、ブリーフ氏は、パリミュチュエル賭事の精算金を挙げている。ブリーフ氏によれば、CDIとサラトガ競馬場(NYRA)は、ホーソーン競馬場が、的中した馬券の購入者への支払いと契約上の相手方との精算に充てるため、契約上信託として保有する義務があるパリミュチュエル賭事のプール資金を、不当に留保していると主張している。
債権者リストに掲載された債権者の大半について、入手できる情報を見る限り、各債権者がホーソーン競馬場に対して未払いとなっていると主張している金額は、現時点では公表されていない。リストに掲載されている債権者の中には、パリミュチュエル賭事の精算金があるとみられる複数の競馬場や著名なコンピュータ支援購入(CAW)のプラットフォームも含まれている。私は長年にわたり、このコラムでCAWと一般購入との適切なバランスについて懸念を表明してきたが、未払い金があるCAW事業者への支払いは間違いなく支持する。的中した馬券の購入者が払戻金を受け取れない、あるいは払戻金を受け取る前に破産手続き上の訴訟を経ざるを得ない状況は、明らかに競馬の公正性に関わる重大な問題である。
それでは、今後の解決策はどうなるのか。
訴訟の行方を見守る必要はあるものの、契約上の取り決めや州法だけでは、十分な保護を直ちに確保できない可能性がある。州は従来ギャンブルを規制してきたが、パリミュチュエル賭事が州境を越えて行われている現状では、この問題について州法による法的保護を求めるのは困難である。より大規模な対策が必要と思われる。1つの競馬場の問題が競馬業界全体の問題とならないよう、この問題を対象とする州間協定を結ぶことも考えられる。
新たな法律の制定はさておき、精算金の支払いをより迅速化することで、少なくともこうした問題の影響を軽減できるかもしれない。Venmo(モバイル決済アプリ)や銀行振込が普及している現代においては、こうした精算は毎日行えるはずであると誰しも考えるだろう。しかし現状では、ホーソーン競馬場に対するCDIの訴訟で指摘されているように、精算プロセスは「月2回または月1回」 行われている。
この月単位や月2回という精算間隔について、ここで私が述べているのは一般的な話であり、ホーソーン競馬場が実際にそうしていたと主張しているわけではないが、これにより経営難にある事業体により多くの負債の積み上げを許し、その資金を運営予算であるかのように見なしたいという誘惑を強めることにつながるように思われる。こうした取引の資金をより迅速に精算することで、賭事資金が破産手続きに巻き込まれるのを防ぎ、あるいは他の馬券発売事業者が直面しうる負担を大幅に軽減できるはずである。
(1ドル=約160円)
By Frank Angst
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[bloodhorse.com 2026年9月29日
「Dollars & Sense: Unsettled Settlements are Unsettling」]

























