ケンタッキー州で種付頭数制限を禁止する法案が可決(アメリカ)【生産】
ケンタッキー州上院は4月1日、州が認可した競馬場における競馬の固定オッズ賭事を認めるほか、種牡馬の暦年あたりの種付頭数に対するいかなる制限も禁止する法案を可決した。
法案(HB904)はアンディ・ベシア州知事の署名を得る段階に進んだが、現時点で知事の署名についての意向は明らかになっていない。
この法案は、スポーツ賭事やファンタジースポーツに関連する幅広い賭事問題も対象としており、ケンタッキー競馬ゲーミング公社(Kentucky Horse Racing Gaming Corporation:KHRGC)に固定オッズ賭事の免許および規制を行う権限を付与するとともに、その収益を原資とする特別追加賞金基金を設立するものである。
現在ケンタッキー州で認可されている競馬に関する賭事は、伝統的なパリミチュエル方式のみである。参加者同士で互いに賭け金を出し合い、単勝や複勝など特定の式別への賭け金と賭け金総額と比較してオッズが決定される仕組みである。
多くの専門家は、競馬における固定オッズの導入は、既にスポーツ賭事で提供されており、新たに若年層の顧客を呼び寄せると確信している。アメリカにおける合法的なスポーツ賭事は、2018年に連邦最高裁判所が各州におけるスポーツの固定オッズ賭事を認める判決を下して以来、急速に拡大している。既にニュージャージー州、コロラド州、ウェストヴァージニア州で競馬の固定オッズ賭事は導入されているが、ケンタッキー州はその中でも競馬において最も重要な州となるだろう。
州知事の署名を得て法律が成立した場合、ケンタッキー州は認可を受けた競馬場で実施される賭事において、調整後の固定オッズ賭事総額から9.75%を物品税として徴収する。また、ウェブサイトやアプリを通じてオンラインで行われた賭事については、14.25%の控除率が適用される。調整後の固定オッズ賭事総額とは、賭け金の総額から、的中者に支払われる金額および連邦法に基づいて支払われる全ての物品税を差し引いた金額を指す。
固定オッズ賭事から徴収される州税や手数料は全額「賞金安定化基金」に積み立てられる。同基金は、基金の10%を超えない範囲で、毎年開催される競馬の賞金を補うために用いられる。
種付頭数制限に向けた将来的な取り組みの防止
本法案に盛り込まれた、種牡馬の種付頭数に制限を加えることを禁止する条項は、サラブレッドの生産者兼馬主でもあるデイヴィッド・オズボーン下院議長によって3月上旬に追記された。これは、米ジョッキークラブのエヴェレット・ドブソン会長が、全米ホースメン共済協会(NHBPA)の会議出席者に対し、種牡馬の種付頭数制限に関する規則について合意可能かどうかを探るため、種馬場やその他の業界関係者と協議する計画を明らかにしたことを受けて追加されたものである。米ジョッキークラブは、近親交配の増加を懸念している。
NHBPAの会議において、ドブソン氏は述べた。「サラブレッド生産の健全性について考えるならば、近親交配係数の憂慮すべき上昇を無視することはできません。数年前、米ジョッキークラブは種牡馬の種付頭数に上限を設けることを試みました。私のリーダーシップの下で、我々はこの課題に立ち返ろうとしています。そして今回、我々は世界中の種馬場や他国の血統登録機関と関わりながら解決策を見出そうとしています。我々の議論は科学的根拠に基づくものであると同時に現実の経済状況への理解を前提にしなければなりません。そして、もし科学と経済が衝突するとしても、サラブレッド生産に資する解決策が見つかることを願っています」。
2020年5月、北米のサラブレッドにおける遺伝的多様性の低下への懸念から、米ジョッキークラブは、業界関係者に意見を求めたうえで年間140頭という種付頭数制限を導入した。この制限は2020年生まれの種牡馬から適用開始予定であった。しかし、2021年2月までに、スペンドスリフトファーム、アシュフォードスタッド、スリーチムニーズファームが支持する訴訟が提起された。一年後、オズボーン氏はケンタッキー州で交配される牝馬に対するあらゆる制限を禁止する修正案を提出した。この法案が提出されてから一週間も経たないうちに、米ジョッキークラブは種付頭数の制限を撤回し、訴訟もまもなく取り下げられた。オズボーン氏の修正案は規則委員会に差し戻され、下院本会議での審議を経ることなく失効した。
ヒルンデール・アット・ハラパ牧場のオーナージョン・シクラ氏は、ケンタッキー州議会議員たちが種付頭数制限の禁止を法制化しようとする動きは、この問題が米ジョッキークラブによっていかに不適切に扱われてきたかを浮き彫りにしているにすぎないと確信している。
シクラ氏は、「私は、大きな組織に対する批判者として、米ジョッキークラブには種付頭数制限を行うための組織化された枠組みも、その権限も、権威もないと考えています」と述べた。「ブリーダーズカップも米ジョッキークラブも実情を把握していない。彼らは保守的かつ場当たり的です。十分に検討されず、精査されなかった計画の典型例です。もうチェックメイトでしょう」。
血統登録機関としての今後の有効性に関して、シクラ氏はこの法律を「米ジョッキークラブに対する法的な去勢」と表現した。
「彼らは張子の虎です。裸の王様です」。
この法案は、種付頭数が制限される可能性を一つだけ残している。国際血統書委員会(ISBC)が制限を全会一致で採択し実施された場合にのみ、ケンタッキー州における種付頭数制限は有効となる。ISBCは1976年に設立され、世界中の主要な生産国から代表者が参加している。
米ジョッキークラブは、上院での採決後に次のような声明を発した。「立法過程において、ジョッキークラブは本議決を精査する機会を得ました。我々はこれを支持します。我々はこれまでも、今回の法改正および付随する決議が国内外で想定するような、科学的根拠に基づいた業界全体での取り組みを提唱してきました」。
HB904において、「いかなる血統登録機関」が州法の条項に違反した場合でも、その影響を受けた馬は、州内で生産、出生、繋養される馬の血統登録機関としてKHRGCの指定する団体において登録されるものと規定されている。さらに、かかる違反により経済的損害を被ったと考える所有者または生産者は、裁判所によりその主張が認められた場合、実損に加え、その三倍の損害賠償を請求する権利を有する。
法案はケンタッキー州限定の血統登録機関としてその役割を担う団体を明言しなかったものの、ケンタッキー・サラブレッド・オーナーズ&ブリーダーズを、「本条の規程およびKHRGCが公布する行政規則に従い、ケンタッキー州産サラブレッド種牡馬およびケンタッキー州産サラブレッドを登録する目的において、唯一のケンタッキー州サラブレッド育成基金の公式血統登録機関」として認めている。
また、法案の中では、登録完了後に馬の出生証明書にケンタッキー産であることを示すスタンプを押すよう指示しているが、立法者はサラブレッドが正式に適格であることを示す証明書の説明文から「The Jockey Club」の語に意図的に取り消し線を引いている。
本紙は、この法案が成立した場合の影響についてスペンドスリフトファーム、アシュフォードスタッド、レーンズエンドファームにコメントを求めたが、いずれも回答は無かった。
By Eric Mitchell
(関連記事)海外競馬ニュース 2019年No.35「米国ジョッキークラブ、種付頭数上限を140頭とすることを検討(アメリカ)」、海外競馬情報 2020年No.5「米国ジョッキークラブ、種付頭数上限140頭をルール化(アメリカ)」、2021年03月19日No.3「名門3牧場、種付頭数制限ルールに対して提訴(アメリカ)」、2022年02月24日No.7 「米国ジョッキークラブ、種付頭数制限ルールを撤回(アメリカ)」、2022年03月23日No.3「種付頭数制限ルール撤回も血統の健全性への懸念は残る(アメリカ)」
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