HISAの分担金算定方式、違法と判断される(アメリカ)【開催・運営】
チャーチルダウンズ社(CDI)が提起した訴訟において、ケンタッキー州連邦裁判所は、HISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)がサラブレッド競馬場の分担金について、賞金水準に一部基づいて算定したのは権限の範囲を逸脱していると判断した。
判決は、4月1日にケンタッキー州ルイビルで、同州西部地区連邦地方裁判所のベンジャミン・ビートン裁判官によって言い渡された。
議会制定法により権限が付与された民間の自主規制機関であるHISAおよびその監督機関である連邦取引委員会(FTC)は、2022年及びそれ以降のHISAの運営資金に充てるために分担金の徴収によることを採用した。分担金の算定方式には、「予想される出走頭数」だけでなく競馬場の「賞金額の水準」が勘案されていた。ビートン裁判官は、この算定方式が出走頭数に基づいて分担金を算定するとした法定要件に違反していると判断した。
同裁判官は「HISAは合衆国憲法第二条の枠組みの外にあり、合衆国大統領や主要高官ではなく、HISAの理事会に対して責任を負っている。それにもかかわらず、HISAは競馬界を対象とする立法的規則(訳注:議会から権限を付与されている行政機関が作る法的拘束力のある規則)の制定や執行の権限を持っている。さらにHISAは、財源を議会の承認を得た歳出予算から捻出するのではなく、規制対象である競馬場から分担金を徴収することで得ている」と判決理由書に記した。「連邦議会は、HISAに対して、各州の出走頭数および当該機関の費用に対する応分の負担割合に『基づいて』、各州を通じて自己の費用を回収する権限を与えた。しかし、HISAはこの費用を『公平に』分担するとして、出走頭数だけでなく賞金額の水準も勘案する方法を採用した。賞金額をどの州の競馬関係事業者がより多く支払うことができる、もしくは支払うべきかを示す代理指標とみなしていた」。
ビートン裁判官によれば、CDIはHISAの算定方式に当初から異議を唱えていた。同社は2023年から2025年にかけて、分担金を全額支払うことを拒否した。2024年までは、出走頭数のみに基づいた方式で支払っていたが、2025年にはCDIが全米各地で運営する競馬場について一切支払わなかった。
ビートン裁判官はHISAの姿勢を「恣意的かつ合理性を欠くもの」であるとし、CDIの主張を支持した。
さらに「連邦議会はHISAに対して、独自の公平の概念や他の様々な考慮要素のみに基づいて、費用を再配分する自由裁量権を付与したわけではないとしたCDIの主張は正しい」とし、「HISAの算定方式について示したもう一つの正当化の根拠、すなわち賞金額の水準は当該機関自身の運営費の合理的な代理指標になり得るという点は、少なくとも当該法令との一応の関連性を有している」と続けた。
「しかし、これも連邦議会が掲げている原則を無視している。すなわちHISAは、各州における薬物検査および競馬場の安全管理にかかった費用の割合に応じて、各州に費用を割り当てなければならない。この理由により、各州の賞金額の水準を加重した算定方式は違法である」。
CDIはHISAの「ずさんな財政管理」を批判する声明を発表した。
「当社の主張が認められた判決が下されたことを歓迎する」とCDIのビル・カースタンジェンCEOは述べている。「きわめて明白だった点を証明するために我々が大変な苦労を強いられ、HISAが莫大な時間とリソースを浪費したことは遺憾です。これは、現在も続くHISAのずさんな財政管理を示しているものであり、馬の健康や安全といった我々が共有している使命からも目を逸らさせるものです。HISAが継続的に越権行為を続けていたと認定することで、このような法的措置をとる必要があったことを裁判所が改めて示してくれました」。
ビートン裁判官はFTCの監督能力やその欠陥についても言及した。判決理由書の一節には「FTCはHISAの業務を監督する責任を放棄した」との見出しを掲げ、「HISAの恣意的な選択をFTCが正当なものにしてしまうことが、これほどまで簡単なことだったのか」と厳しい問いを投げかけている。
HISAは敗訴したものの、CDIが掲げた法的根拠が完全に認められたわけではないと強調する声明を発表している。さらに年初から出走頭数に基づいた算定方式に切り替えていることにも言及した。
「本日の連邦地方裁判所の判決は限定的です。分担金算定方式に出走頭数以外の要素の組込みを禁止するものではなく、CDI側の公平性や契約に基づく主張も退け、さらに賞金額の水準を勘案した従来の算定方式の無効化も却下されています」とHISAの広報担当者が本誌に寄せた声明に記している。「その代わりに裁判所は、FTCがその承認に関して十分な説明ができなかったことから、昨年までの分担金に関して、CDIに制限付きの宣言的救済措置を命じました。2026年からは出走頭数のみに基づいた算定方式の下で競馬が開催されていることから、HISAは安全性や透明性を高める使命に集中していきます」。
この判決結果が3月24日に関係団体との間で合意に達した部分的和解に影響するかとの問いにHISAの広報担当者は回答を控えた。この合意以前にはHISAの理事3名からなる理事会パネルがCDIに約527万ドル(約8億4,320万円)を支払うように命じた。支払われなければCDIが所有するチャーチルダウンズ、ターフウェイパーク、エリスパーク、プレスクアイルダウンズの各競馬場での開催を停止するとした。この527万ドルは、ビートン裁判官が違法だとした算定方式による金額ではなく、出走頭数に基づいて算出した分担金とその利息が付加されたものだ。
CDIが連邦裁判所に提訴したのは2024年12月だった。この場合、CDIは提訴前にHISAから請求されたそれ以前の分担金を支払う義務があるのだろうか。ビートン裁判官の判決によると、その必要はない。なぜなら、「HISAの賞金額の水準に基づく算定方式は法に抵触しており、恣意的かつ合理性を欠くものである。(中略)こういった理由から、2022年、2023年、2024年にFTCで承認された算定方式をCDIに対して執行できない」からである。
提訴時にニューヨーク競馬協会(NYRA)はCDIの共同原告として名を連ねていた。その後、NYRAは2025年にHISAと和解に至ったものの、その条件は明らかにされていない。
(関連記事) 海外競馬ニュース 2026年No.6「HISAの分担金を巡るトラブル(アメリカ)【開催・運営】」
By Dick Downey
(1ドル=約160円)
[bloodhorse.com 2026年4月1日「CDI Prevails Over HISA in Fee Assessment Litigation」]

























