HISAの分担金を巡るトラブル(アメリカ)【開催・運営】
HISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)は、チャーチルダウンズ社(CDI)が所有する4つの競馬場から徴収すべき数百万ドルの分担金を拒否している問題について審議するため、3月11日に理事会パネルの聴聞会を開催することを決定した。この会議は、両者の間で係争中の法廷闘争における新たな局面となる。
2月18日付の通知によると、ジョー・デフランシス氏を議長とし、理事のビル・トマソン氏およびテリー・マズール氏を加えた3名の委員会によるリモート聴聞会が設定された。この審問では、CDI傘下のチャーチルダウンズ、エリスパーク、プレスクアイルダウンズ、ターフウェイパークの各競馬場における分担金未払いに関連した問題が審議される。
HISAは、米国におけるサラブレッド競馬の大部分において安全性と公正性に関する統一された規則を確立し施行するために設立された民間の自主規制機関であり、その権限は連邦政府により付与されている。
ウエストヴァージニア州やルイジアナ州など一部の州では、HISAの合憲性を争う連邦訴訟が継続中であり、さらに暫定的な差し止め命令によって、HISAの管轄対象外となっている。CDIはルイジアナ州にスロットマシーン設備を併設したフェアグラウンズ競馬場を所有しているが、同施設は今回の分担金未払いの指摘対象には含まれていない。
元来、HISAの分担金は「予想される出走頭数」に基づき、「賞金額の水準」を勘案して割り当てられる仕組みであった。しかしこの方法は、CDI、ニューヨーク競馬協会(NYRA)のほか、カジノ等の補完収益があって高額賞金を提供する競馬場からは、批判されていた。CDIとNYRAは2024年の後半にHISAを提訴した。その直後、HISAを監督する連邦取引委員会(FTC)がHISAの分担金算定方式の修正案を承認し、2026 年から分担金を「出走頭数のみ」に基づいて算出することとなった。この変更は、CDIや大規模競馬場には有利に働く一方で、ワシントン州のエメラルドダウンズ競馬場のような、賞金水準が低くカジノ収益もない下位ランクの競馬場にとっては、HISAにかかる費用を増加させた。
NYRAは2025年初頭にHISAと和解し、訴訟を取り下げた。
HISAは当初承認された計算式に基づき、2025年度分としてチャーチルダウンズ競馬場に対して630万ドル(約9億7,650万円)以上の分担金を要求した。しかし、HISAが提出した書類によると、分担金は一切支払われていない。HISAによると、出走頭数のみで分担金を算定する方式に基づくと、チャーチルダウンズ競馬場は2,408,501ドル(約3億7331万円)に加えて、約94,000ドル(約1457万円)の利息を支払う義務があるとしている。HISAは、連邦裁判所が分担金算定方式の合法性について最終的にいかなる判決を下そうとも、CDIは少なくとも「出走頭数のみ」に基づいた下限金額は支払う義務があると主張している。また、裁判所が従来の算定方式を支持した場合、将来的に追加の不足分を請求する権利を留保するとしている。
2023年及び2024年において、CDIは出走頭数のみに基づく自社独自の算定方式を用いて、通年の分担金を算定し支払った。しかしHISAによれば、その2年間において、CDIが運営する各競馬場から未払いとなっている残額は、現時点で総額1,708,475ドル(約2億6,481万円)に上る。CDIによる2023年および2024年分の全額支払いの不履行については、別途HISAによる執行手続きが進行中だ。
2025年度分については、他のCDI所有の競馬場にも同様に従来の手法に基づき、以下の分担金及び利息が課されている。ターフウェイ競馬場は1,436,186ドル(約2億2,260万円)に56,051ドル(約868万円)の利息を加えた額を、エリスパーク競馬場は447,568ドル(約6,937万円)に17,467ドル(約270万円)の利息を加えた額を、プレスクアイルダウンズ競馬場は732,593ドル(約1億1,355万円)に28,591ドル(約443万円)の利息を加えた額をそれぞれ支払う必要がある。
CDIの関係者は当初、訴訟に関する企業方針を理由にコメントを控えていたが、2月19日に声明を発表した。その一部を以下に掲載する。
訴訟書類においてCDIは、HISAの賞金ベースの算定方法は連邦議会の権限を超えていると主張し、規制当局自ら分担金紛争の裁定を下すことへの懸念を表明した。また、HISAは分担金が支払われない場合、競馬開催またはサイマルキャスト発売を停止すると脅されたとも主張した。
一方、HISAはFTCが承認した算定方法は合法であり、薬物検査、馬場検査、および業務執行の原資として必要であると主張している。
今後の理事会で使用される文書において、HISAは次のように記している。「CDIは自らが妥当だと考える『出走頭数のみに基づく独自の算定方式』によって導き出された金額ですら、支払いを拒んでいる。2025年度のHISA分担金の一切の支払いを拒否しているのは、管轄下の競馬場の中でもCDIの競馬場だけである。にもかかわらず、CDIの競馬場は我々から数百万ドル相当のサービスを受け続けている」。
さらにHISAの資料では、CDIが「タダ乗り」、すなわち対価を支払うことなくサービスを受け続けているとまで述べている。
2月19日(木)に発表された声明において、CDIは自らの馬の安全への取り組みを強調した上で、次のように述べた。「係争中の法的手続きについてはコメントを控えるが、我々の活動に対するHISAの誤った解釈は受け入れられない。彼らの最近の強硬姿勢は、業界にとっては有害で憂慮すべき権力の行き過ぎを意味している。競馬の強化に不可欠な協調的なアプローチとは相容れないものである」
「最初の関連記事が2月18日に公開される数分前にHISAからの書簡を受け取っており、事前通知は無かった。これは、彼らの要求に追従しない業界関係者とやりとりする際に見せるHISAの判断力の欠如と疑わしい意図を示すもう一つの例である」。
HISAは理事会パネルに対し、パネルの命令から10日以内に出走頭数ベースで算出された金額を当局に支払うようようCDIに指示するよう要請した。HISAはさらに命令で定められた期日までに支払いがない場合、遅延日数分につき「CDIが対象となる競馬を開催することを禁止し、それを直近の開催予定日から即時に適用する』よう命じることを要請している。
未払いが指摘された4つの競馬場のうち、ターフウェイパーク競馬場では、3月下旬まで開催が予定されている。また、チャーチルダウンズ競馬場での開催は4月下旬に始まり、翌週の5月2日にはケンタッキーダービー(G1)が控えている。
(本記事は2月19日に発表されたCDIの声明を受け、内容が更新されている。)
By Byron King
(1ドル=約155円)
[Blood Horse 2026年2月18日「HISA Claims CDI Owes Millions in Unpaid Assessments」]

























