2026年度の開催日割が発表される(イギリス)【開催・運営】
競走馬の減少傾向という深刻な状況を改善するため、500万ポンド(約10億円)を超える資金が英国競馬の賞金に投入される。
8月6日(水)に2026年度開催日割が発表され、主要な平地競走の賞金増額と産業全体での育成競走(近年導入された2・3歳馬を対象とした奨励制度)への注力が強調された。英国競馬統括機関(BHA)によると、「平地競走における国際的な競争力維持と障害競走における主要な地位の維持」を目的としている。
BHAの競走担当理事であるリチャード・ウェイマン氏は、平地競走と障害競走の双方で競走馬数が「悪化する傾向にある」ため必要な措置だったと述べた。
BHAは、2026年の開催日数を大幅に見直すことはせず、2日減の1,458日に留めた。
主要な平地競走の価値を向上させる一方で、約2年間の試行を経て、プレミアム開催のより明確にした体系を確立する試みも進めてきた。
先月本紙が報じた通り、プレミアム開催の日数は、主要日程をより際立たせる目的により、162日から52日に削減された。
土曜日のプレミアム開催に焦点を当てるために設けられた保護枠についても、廃止された。
競馬賭事賦課公社(Levy Board賦課公社)は、総額7,710万ポンド(約154億円)の資金調達において、賞金向けに440万ポンド(約8億8,000万円)を上乗せする賞金増額の残りは、各競馬場からの拠出金で賄われる。
BHAによれば、この結果、平地のブラックタイプ競走の賞金額は200万ポンド(約4億円)以上増加する。
平地G1競走の最低賞金額は、古馬競走で50%増の37万5千ポンド(約7,500万円)、2歳戦で37.5%増の27万5千ポンド(約5,500万円)となる。またG2、G3競走およびリステッド競走では少なくとも9%増となる。
さらに、真夏に実施される4つの平地競走(ジュライカップ、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS、サセックスS、インターナショナルS)について、2026年はそれぞれ総賞金額を20万ポンド(約4,000万円)以上増額させる。BHAは特にこの時期は海外からの出走馬を最も引き付けやすいと述べている。また、先月アスコット競馬場は、来年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSの賞金総額を200万ポンド(約4億円)に増額すると発表している。
ウェイマン氏は、世界的に競走馬の生産頭数が減少している一方で、平地競走と障害競走の最高峰のレースでは国際的な競争が激化していると指摘した。
「平地競走と障害競走の双方において、競走馬の現状は間違った方向に進んでいます。そのため、競馬界は英国内における競走馬の頭数と質の向上を支援する戦略を策定する必要性を認識したのです」とウェイマン氏は付け加えた。
BHAの最新の報告書によると、2025年7月時点の現役競走馬の頭数は13,249頭で、前年比1.7%減、コロナ禍前2019年の13,949頭からは5.1%減となった。
ウェイマン氏は、現在行っている改革が短期的にそのような馬の頭数を大幅に増加させることはないと理解するのが重要だと述べた。ただし、育成競走への投資が秋の1歳馬セールでの買い手を刺激するとの期待はあると付け加えた。
そしてウェイマン氏は上位クラスのレースへ投資することは、下位層を無視しているわけではないと主張した。
「競馬のあらゆる階層における関係者、馬主、競馬場を支援する必要性に対してBHAは敏感であると確信をもって言わせていただきたい」とウェイマン氏は述べた。
「私たちが採用してきた戦略は、他のスポーツも同様だと思いますが、既存のファンと顧客を維持するにとどまらず顧客基盤を拡大する最良の方法は、トップクラスの競走イベントをファンと顧客にとってできるだけ良質、強固でかつ魅力的なものにすることです」
「その結果として、関心と収益が生まれ、最終的に競馬産業全体が恩恵を受けるのです。これが、私たちの行動の根本原則です」。
また、ウェイマン氏は育成競走への投資が、すべてのレベルで活動する馬主と調教師に利益をもたらすと述べた。
平地競走と障害競走の育成競走には、320万ポンド(約6億4,000万円)以上の賞金額が増額される。これには賦課公社からの250万ポンド(約5億円)が含まれる。
平地競走で出走制限のない1勝クラスと未勝利戦は総賞金額1万ポンド(約200万円)以上、制限付きは8,000ポンド(約160万円)以上の賞金が設定される。
BHAはさらに約50のシーズンに障害に転向した馬や経験の少ない馬を対象とした障害競走を来年実施予定で、クラス2競走は最低2万ポンド(約400万円)、クラス3競走は最低1万5千ポンド(約300万円)の賞金総額が設定される。また、クラス4競走については、最低1万ポンド(約200万円)の賞金が設定される。
ウェイマン氏によれば、2026年の開催日数を削減するべきかどうかについて今年「重大な議論」があったとのことだが、開催日数はほぼ変更されなかった。というのも、BHAは施策実行のための資金捻出という短期的な商業的必要性と、競馬を可能な限り競争力のある形で運営するという長期的な目標のバランスを取ったためだ。
「2027年については別途議論する必要があり、来年には異なる見解に至る可能性もあります」と述べた。
賦課公社は、2024-25シーズンの収入が1億900万ポンド(約218億円)に達したこともあり、資金を増額することができた。これは2017年に賦課制度改革を行って以来の最高額だ。
最高経営責任者(CEO)のアラン・デルモント氏は、競馬の改革案について次のように述べた。「公社は、これらの優先分野における長期戦略へのコミットメントを歓迎します」。
2026年の開催日程 - 主要なポイント
・ 2026年には1,458開催が予定されており、2025年から2開催減少
・ 2026年のプレミアム開催は52日で、2025年の162日から減少
・ 土曜日の「保護枠」が廃止され、より的を絞ったアプローチを採用。メイン競走では10分間の間隔を設け、ファンの関心を高める
・ 2026年の育成競走の賞金に320万ポンド(約6億4,000万円)を投資。あらゆるレベルの競走馬にとって英国を魅力的な調教国へ
・ 平地のブラックタイプ競走の最低賞金額を引き上げ。他の番組変更を加え、来年の平地クラス1競走の賞金を総額200万ポンド(約4億円)以上増額見込み
・ 夏期の4大競走(ジュライカップ、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS、サセックスS、インターナショナルS)の総賞金額をそれぞれ20万ポンド(約4,000万円)以上増額予定
・ 25万ポンド(約5,000万円)の資金により、アマチュア障害競走を対象とした新たなボーナス制度を導入
・ 20万ポンド(約4,000万円)の追加投資により、障害競走における「優秀牝馬制度」を2026年に強化
・ ナイター競馬における最終競走時刻の前倒しを試行。年初の9週間は、毎週2開催日を午後8時までに終了
By Bill Barber
(1ユーロ=170円/1ポンド=200円)
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[Racing Post 2025年8月6日「Extra millions to be pumped into British racing as BHA attempts to address horse population trends 'heading in the wrong direction'」]