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2020年01月23日  - No.3 - 2

名種牡馬エンパイアメーカー、20歳で死亡(アメリカ)[生産]


 ゲインズウェイ牧場(Gainesway)とドンアルベルト牧場(Don Alberto)が所有した米国クラシック勝馬で優良種牡馬のエンパイアメーカー(20歳)は、北米で再びその地位を確立しているところだった。しかし1月18日(土)、免疫系不全を引き起こす稀な疾病により悲劇的な死を遂げた。

 エンパイアメーカーは、ジャドモントファーム(カリド・アブドゥラ殿下が所有)をオーナーブリーダーとし、故ボビー・フランケル調教師により管理された。父はアンブライドルド、母はG1馬トゥーソード(Toussaud 父エルグランセニョール)である。エンパイアメーカーは、ベルモントS(G1)、フロリダダービー(G1)、ウッドメモリアル(G1)を制してその世代で唯一G1・3勝を挙げた3歳牡馬だった。

 2004年にジャドモントファームで種牡馬入りし、ボードマイスター(Bodemeister)、ロイヤルデルタ(Royal Delta)、パイオニアオブザナイル(Pioneerof the Nile)をはじめとする33頭の重賞勝馬を送り出した。2009年には、サンタアニタダービー(G1)で優勝し、ケンタッキーダービー(G1)で2着となったパイオニアオブザナイルの成績が大きく寄与して、サードクロップサイアーランキングの首位に輝いた。

 2010年11月、同馬は日本軽種馬協会(JBBA)により購買され、静内種馬場で供用された。その間、北米で生まれたエンパイアメーカー産駒は成功し続けた。

 2012年北米総合サイアーランキングにおいて、エンパイアメーカーは産駒の獲得賞金額が1,000万ドル以上となり2位となった。首位のジャイアンツコーズウェイには11万1,752ドル(約1,229万円)及ばないだけだった。中でもロイヤルデルタはBCレディースクラシック(G1)の2勝目を挙げるなど重賞4勝を挙げて2012年に最高の活躍を見せた。同馬はその競走生活を通じてエクリプス賞を3回受賞し(最優秀3歳牝馬1回・最優秀古牝馬2回)、重賞10勝(うちG1・6勝)を挙げた。

 マイク・スミス騎手はロイヤルデルタとコンビを組み、2012年デラウェアH(G2 デラウェア競馬場)など様々なレースを制した。

 2015年、ゲインズウェイ牧場とドンアルベルト牧場はエンパイアメーカーを米国に帰国させた。そして同馬は、帰国後の供用1年目にG1馬エイトリングス(Eight Rings)などを送り出した。エンパイアメーカー産駒は1歳セールで歓迎され、帰国後の供用2年間で送り出された105頭が平均29万857ドル(約3,199万円)で購買された。

 2019年のキーンランド9月1歳セールでは、最優秀2歳牝馬ジェイウォーク(Jaywalk)の半妹(母Lady Pewitt)が、エンパイアメーカーの1歳産駒の中では最高価格の200万ドル(約2億2,000万円)で購買された。

 エンパイアメーカーは種牡馬の父として、パイオニアオブザナイルを通じて最も大きな影響力を見せた。パイオニアオブザナイルの産駒には、米国三冠馬で2019年最優秀フレッシュマンサイアーのアメリカンファラオ、2016年最優秀2歳牡馬クラシックエンパイア(Classic Empire)、G1優勝馬ミッドナイトストーム(Midnight Storm)、G2優勝馬カイロプリンス(Cairo Prince)が含まれる。ボードマイスターも種牡馬となっており、2017年ケンタッキーダービー馬オールウェイズドリーミング(Always Dreaming)を送り出している。

 ゲインズウェイ牧場のCEOアントニー・ベック(Antony Beck)氏はこう語った。「エンパイアメーカーの死は、生産界だけでなく、毎日彼に接してきた私たち全員の心にぽっかり穴を開けることでしょう。ドンアルベルト牧場と一緒に彼をゲインズウェイ牧場で供用できたことは大きな名誉であり特権でした。格と質が凝縮したような馬で、彼ほど素晴らしい気質をもつ馬に関わったことがありません。血統における影響力は相当なもので、特に健康な産駒を送り出しました。ゲインズウェイ牧場のスタッフは全員、彼がいなくなって寂しく思うでしょう」。

 ドンアルベルト牧場のオーナーであるカルロス・エレル(Carlos Heller)氏はこう語った。「彼がもういないことに心を痛めています。彼はあらゆる意味で私たち家族にとって特別な馬であり、米国でドンアルベルト牧場を設立してから初めて所有した影響力の大きな種牡馬でした。ゲインズウェイ牧場の家族と友人だけでなく、サラブレッドの血統にとっても大きな喪失です。生涯のどの段階においてもベストを尽くした寛容な馬として、いつまでも思い出すでしょう」。

 「彼はその名の通り産駒を通じて毎日拡大し続けるエンパイア(帝国)を作り出したと言えます。彼の生涯のわずかな部分ですが、関わることができて幸運に思います。信じられないほど利口で優しい馬でした。彼が居なくなって誰もがひどく寂しく思うでしょう。米国での晩年に送り出した産駒が今後数年間で彼の名前をもっと明るく輝かせることを望んでいます」。

 「この場を借りて、ゲインズウェイ牧場で彼に素晴らしいケアとサポートを行ってくれた皆さんに感謝を述べたいと思います。とりわけ、アントニー・ベック氏とそのチーム、そしてスロビス(Slovis)博士とジャヴァーニック(Javernick)博士に感謝したいと思います」。

By Eric Mitchell

(1ドル=約110円)

 (関連記事)海外競馬ニュース 2015年No.40「エンパイアメーカー、米国に帰国(アメリカ)」、2019年No.11「三冠馬アメリカンファラオの父、パイオニアオブザナイルが急死(アメリカ)

[bloodhorse.com 2020年1月20日「Prominent Stallion Empire Maker Dies at 20」]

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