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海外競馬ニュース
2016年03月03日  - No.9 - 2

帰国したウォーエンブレム、輸入規則に従い去勢(アメリカ)[その他]


 引退馬施設のオールドフレンズ(Old Friends ケンタッキー州ジョージタウン)で引退生活を送っているウォーエンブレム(2002年米国最優秀3歳牡馬)は、米国およびケンタッキー州の輸入規則に従って去勢された。

 ウォーエンブレム(17歳 父アワエンブレム)は日本で供用された後、帰国してオールドフレンズに入った。米国の輸入規則は、主に精液を通じて蔓延する細菌が原因の伝染性子宮炎(CEM)に輸入馬が罹っていないか判断するために、2頭の牝馬に試験的に種付けすることを義務付けている。CEMは米国で概ね根絶されているが、もし発生すれば検出・抑制は困難になりかねない。主として馬属に見られるCEMは、種牡馬と繁殖牝馬の両方の生殖能力に悪影響を及ぼす可能性がある。

 良く知られているように、ウォーエンブレムは日本で供用されているときには種付けに消極的であった。同馬は、ルード&リドル馬診療所(Rood & Riddle Equine Hospital ケンタッキー州レキシントン)の検疫馬房で1ヵ月過ごしたが、1頭の牝馬にも種付けしなかった。

 オールドフレンズの創設者で理事長であるマイケル・ブローウェン(Michael Blowen)氏は、次のように語った。「ウォーエンブレムはここで引退馬として繋養されるのであり、種付けすることは二度とありません。それでも連邦農務省(U.S. Department of Agriculture: USDA)は、CEMに罹っている非去勢馬が脱走したり、偶然に種付けしたり、人間が感染した精液を扱いCEMが蔓延することを考慮しなければなりません。CEMが再び米国中に蔓延したら、馬産業は多大な経済的損失を被るでしょう」。

 「USDAと協議を重ね、数人の獣医師にも相談しましたが、他に選択肢は見つかりませんでした。ケンタッキー州とUSDAの輸入規則に従い、ウォーエンブレムを去勢することに決定しました」。

 去勢手術はオールドフレンズで行われ、ルード&リドル馬診療所のブラッド・タナー(Brad Tanner)博士が執刀した。また、名高い馬麻酔医師であるホイ-チュウ・リン(Hui-Chu Lin)博士(オーバーン大学)が麻酔薬を投与した。

 ブローウェン氏はこう述べた。「ウォーエンブレムは術後、大物然としていました。完全に回復しています。去勢したことで、彼にふさわしい平穏でくつろいだ引退生活を過ごせることを望んでいます。専門知識を結集して手術を安全に成功させた獣医師の皆様に、オールドフレンズは感謝いたします」。

 2002年にケンタッキーダービー(G1)、プリークネスS(G1)、ハスケル招待H(G1)を制したウォーエンブレムは、2003年から吉田ファミリーの社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送った。

 13年間の種牡馬生活においてウォーエンブレムの種付け意欲を高めるために、種牡馬行動の専門家が指導して治療を施すなど、さまざまな努力がなされた。その一環として、ウォーエンブレム自身に相手の牝馬を選ばせたり、社台のメインの種馬場から比較的小規模で静かなノーザンファームに移動させた。

 しかし、それらの努力は結実しなかった。初年度産駒はわずか4頭しか生まれず、種牡馬生活全体でも119頭の産駒しか生まれなかった。すなわち、1年あたりの平均産駒数は9頭ほどであった。社台ファームのスタッフによれば、最後の産駒が生まれたのは2012年で、供用最終年には全く種付けをしなかった。

 ウォーエンブレムの産駒は少なかったが、能力があることが結果的に証明された。出走産駒111頭のうち80頭が勝ち上がり、産駒獲得賞金総額は3,530万307ドル(約40億5,954万円)に上った。

 最も優秀なウォーエンブレム産駒は、日本で2012年最優秀2歳牝馬となったローブティサージュであった。他の優良産駒には、G3馬のキングスエンブレム、ウォータクティクス、ステークス勝馬のシビルウォー、ブラックエンブレム、ダノンプログラマー、クランエンブレム、ショウナンアルバ、エアパスカルなどがいる。

By DRF Breeding Staff
(1ドル=約115円)

(関連記事)海外競馬ニュース 2015年No.42「ウォーエンブレム、ケンタッキーに到着(アメリカ)

[Daily Racing Form 2016年2月24日「Champion War Emblem gelded at 17」]


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