カリフォルニア州の競馬施行者、エクスチェンジ賭事提供に難色(アメリカ)[開催・運営]
カリフォルニア州議会が5月初めからのエクスチェンジ賭事提供を承認したけれども、同州の競馬統轄委員会が本日サンタアニタ競馬場で開催された4時間の会合を受けてこの賭事形式を勧めることはないだろう。
エクスチェンジ賭事特別委員会(Exchange Wagering Ad Hoc Committee)関係者は、賭事客に馬が勝つ方にも負ける方にも賭けることを可能にし、通常最先端のインターネットを通じて行われる各馬へのオッズ割当てをすることによって胴元を演じることを可能にする賭事形式で、全体会合に勧告する構えではないと語った。
カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)のキース・ブラックプール(Keith Brackpool)会長は、「私はこの問題がまだ十分に煮詰まっていないと言いたいです。競馬界のかなり多くの重要人物から異論が聞こえてきています。エクスチェンジ賭事は不完全な状態で提供されるべきではありません」と語った。
5月までに提供開始を目指している唯一のエクスチェンジ賭事はベットフェア社(Betfair)によるものであり、同社はエクスチェンジ賭事の技術において世界的なリーダーである。ベットフェア社が所有する米国の会員制賭事(advance-deposit wagering: ADW)の運営会社TVG社(Television Games Network)のCEOスティーヴン・バーン(Stephen Burn)氏は、新しい賭事形式が競馬に新規賭事客、たとえば金融市場での取引を楽しんでいる人々を引き込むことを可能にするだろうと語った。
バーン氏は、「私たちは、株取引に焦点を合わせているウェブサイトをターゲットにした市場計画をすでに用意しています。ADWとは異なる方法でベッティング・エクスチェンジを売り込みたいと考えおり、私たちは新しい市場を必要としています」と語った。
ベットフェア社は5月初めにハリウッドパーク開催でベッティング・エクスチェンジ賭事の提供を開始したいとバーン氏は考えているが、2月9日の会合において同競馬場の代表者たちは誰も発言をしなかった。一方デルマー競馬場のCEOであるジョー・ハーパー(Joe Harper)氏は、同競馬場がベットフェア社と話合いを持ち、今年の競馬開催においてベッティング・エクスチェンジの少なくとも試験的提供の合意に達することを望んでいると述べた。
ハーパー氏は、「私たちはベッティング・エクスチェンジ賭事を支持しており、革命的な賭事であると考えています。この賭事は私たちを、これまで足を踏み入れたことのない市場に導いてくれるでしょう。競馬産業はどん底にあります。エクスチェンジ賭事の提供開始は小さな1歩です」と語った。
エクスチェンジ賭事を少なくとも現在の計画の下では支持しないとしているカリフォルニア州の2つの競馬場は、サンタアニタ競馬場とゴールデンゲートフィールズ競馬場であり、いずれの競馬場もストロナック・グループ(Stronach Group)により所有されている。ストロナック・グループを代表するスコット・ダルティー(Scott Daruty)氏は、競馬場オーナーはCHRBがこれらの競馬場でのエクスチェンジ賭事提供を認可するのであれば法的措置を考えるだろうと語った。
ダルティー氏は、ストロナック・グループのオーナーで傑出した馬主および生産者であるフランク・ストロナック(Frank Stronach)氏の意見に言及する前に、「私たちはそもそもエクスチェンジ賭事が台頭してきたこと自体が問題だと考えています」と述べた。そして、「ストロナック氏は、馬が負ける方に賭けることは、根本的に悪い事であると考えており、同氏はこの経済モデル自体に問題があるとしています。同氏は競馬が成功し発展するのを見たいと思っています」と語った。
ADW業者エクスプレスベット社(XpressBet.com)を所有するストロナック・グループもチャーチルダウンズ社のADW業者ツインスパイアーズ社(TwinSpires.com)も、パリミューチュエル賭事の収入を減少させ得るエクスチェンジ賭事の導入に反対している。代表者たちはその経済モデルと公正確保に関する懸念を述べていた。
ツインスパイアーズ社のブラッド・ブラックウェル(Brad Blackwell)氏は、「私たちは競馬産業に高い割合の還元を行うADWとわずかな割合しか還元しないエクスチェンジ賭事を比べるという危険を冒しています」と語った。
ダルティー氏は、「1頭の馬が勝つ方よりも負ける方を選ぶ方が絶対的に簡単です」と述べた。
ブラックプール氏はその懸念を認めたが、同氏はツインスパイアーズ社やエクスプレスベット社のような会社がエクスチェンジ賭事形式を開発するまで時間稼ぎをしているだけであると考える人もいると指摘した。
バーン氏が描いた経済モデルは、同氏が昨年12月にアリゾナ大学競馬産業プログラムの開催した“競馬およびゲーミングに関するシンポジウム”(University of Arizona Symposium on Racing and Gaming)で展開したものと同じである。的中した賭事客はベットフェア社に10%の手数料を支払う。同社は収益の60%を競馬産業に還元し、30%を自ら取り、10%は顧客へのリベートとしている。このリベートにより大口馬券購入者は5%の手数料で効果的に賭事を行うことができる。
ベットフェア社は現在までのところ、カリフォルニア・サラブレッド馬主会(Thoroughbred Owners of California)と合意に至っていない。カリフォルニア・サラブレッド調教師会(California Thoroughbred Trainers)とカリフォルニア州ホースメン協会(California Thoroughbred Horsemen’s Association)は、経済モデル、パリミューチュエル賭事の売上げ減少および公正確保に関する懸念を引き合いに出して、エクスチェンジ賭事に対して反対を表明した。
騎手組合(Jockeys’ Guild)の代表者は、エクスチェンジ賭事を支持する前に騎手たちに対する調査手順を整備するべきだと語った。
騎手組合を代表するバリー・ブロード(Barry Broad)氏は、「私たちは大きな懸念を持っています。馬が負ける方に賭けることを許容し始めれば、不正のチャンスが増えることになります。疑念は高まり、その疑念のかなり多くは騎手たちに降りかかります」と語った。
北米ホースプレイヤーズ協会(Horseplayers Association of North America)のジェフ・プラット(Jeff Platt)会長は、公正確保の懸念の中には大げさなものもあり、同会長は新しい賭事形式は既存および新規の賭事客にとって魅力的となるだろうと指摘した。
プラット会長は、一番人気の馬が負けて他の出走馬に賭けた者が利益を得るレースの統計的研究に言及し、「馬が負ける方に賭けるということはある意味現在のパリミューチュエル賭事においても起こっています」と語った。また同会長は、パリミューチュエル賭事とはちがいベットフェア社はリアルタイムで賭事プールのモニタリングを行っており、それぞれの賭事を行っている人々を把握していると指摘した。そして、「競馬場においては不正は匿名で行われます」と述べた。
プラット氏は、賭事客にオッズの固定を認めることにより、既存の賭事客の多くが嫌っている最終段階でのオッズ変動に対処し、賭事客がさらに儲かる方法を模索出来るようにし、現在競馬賭事には興味を示していない新しい顧客を競馬界にもたらすだろうと述べた。
CHRBの職員は、エクスチェンジ賭事を監視する手順の開発に関してBHA(英国競馬統轄機構)の理事と会合を持ったと述べた。そして、新しい賭事形式を監視するためには3人の追加的な職員が必要であると述べた。
CHRBのブラックプール会長は、職員はその手順の開発を続けるべきであると述べたが、ベットフェア社とTOCとの間での合意がなされていないのであれば、2月の定期会合のために計画を用意する必要はなくなるだろうと述べた。
By Frank Angst
(関連記事)海外競馬情報 2012年No.1「ベットフェア社、米国でのベッティング・エクスチェンジ賭事提供を説明(アメリカ)」
[thoroughbredtimes.com 2012年2月9日「California committee makes no recommendation on exchange wagering」]