調教停止処分を巡るプレッチャー調教師の法廷での闘い(アメリカ)【開催・運営】
ニューヨーク州控訴裁判所は、殿堂入り調教師トッド・プレッチャー氏に科された2週間の調教停止処分を棄却した。しかし、決着を見るまでまだ長い道のりになりそうだ。
本件は、2022年7月にサラトガ競馬場で6着となった競走馬カペンシスの体内から基準値を上回るフェニルブタゾン、通称「ビュート」が検出され、ニューヨーク州ゲーミング委員会(NYSGC)が、プレッチャー師の責任を追及したことにある。現在薬物の規定や検査を管轄しているのはHISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)であるが、2022年当時はNYSGCがそれらを管轄していた。
ニューヨーク州薬物検査研究プログラムがレース後に採取された血液を解析すると、血漿から1.56μg/mlのビュートが検出された。カリフォルニア州のケネス・L・マディ馬分析化学研究所で分割されたもう一方の検体を解析したところ、1.8μg/mlの残留が確認された。当時のニューヨーク州の閾値は0.3μg/mlであった。
同州の裁決委員は同師に14日間の調教停止処分と過怠金2,000ドル(約32万円)を科した。この処分は審理官から妥当であると認められたものであり、最終的にはNYSGCの承認も受けている。
この処分に対して、プレッチャー師はニューヨーク州控訴裁判所に訴えを起こした。同裁判所は、全員一致で州当局が同師に下した違反認定を取り消し、再審理を命じた。
主な問題点は、プレッチャー師に対する証拠が各研究所からの報告書のみであったという事実だ。いずれの報告書についても、検査結果の正確性、検査方法の信頼性や科学分野での妥当性を保証できる証人がいなかった。その代わりに、NYSGC馬医療担当理事スコット・パーマー氏の伝聞の証言が証拠として採用されていたのだ。
控訴裁判所の意見書によると、本件では異議申し立てが適切なタイミングで行われていなかった。つまり、調教停止処分が下されてプレッチャー師がアンドリュー・J・モリーカ弁護士を雇うまで、異議申し立ての手続きがとられていなかったと指摘されているのだ。
伝聞証拠は、ニューヨーク州法に基づく行政処分の裏付けとして認められることはある。しかし、州控訴裁判所は手続きの公正性に疑問を呈した。
同裁判所は意見書の中で、「検査方法に関する科学的方法論について直接な異議申し立てが行われなかったものの、このような報告書を採用し、依拠したことは、申立人の訴えの本質である審理の根本的な公正性に疑義を生じさせるものである」とした。「確かに過去の多くの判例では『証明力が十分であり、単独で実質証拠の性質があると認められる場合に、伝聞証拠は行政判断の根拠となりえる』とされている」。
「しかし、行政機関が判断の基礎とした証拠の実質性を審査する裁判所は、正当な司法機能を果たすべきものであり、単に行政機関が下したものであることを理由にその判断をそのまま認めることはない。問題は、この報告書に単独で実質証拠たりうる十分な関係性や証明力があるかどうかである」。
裁判所の意見書によると、ニューヨーク州の検査機関は「検査方法を明示していない。また、カリフォルニア州の検査機関の報告書には検査方法が記載されているが、両報告とも、レース後の検体からビュートの残留や濃度を特定する検査として信頼性や妥当性が十分であるかについては何ら記載がなかった」。
したがって、裁判所はNYSGCによる違反認定が「根本的に不当な」方法で行われたと判断した。プレッチャー師は、別の公聴会で検査機関の調査結果に異議の申立てをする必要がある。一方、ニューヨーク州当局は、追及を断念しない限り、同師の違反を証明するための2度目のチャンスを手にすることになる。
By Dick Downey
(1ドル=約160円)
[bloodhorse.com 2026年3月12日「Pletcher Dodges NY Bute Finding But Faces New Hearing」]

























