凱旋門賞の華やかさの陰で深刻化するフランス競馬の課題(フランス)【開催・運営】
ダリズがフランス競馬の素晴らしさを世間に印象づけた翌日、ザラ・アガ・カーン王女が競馬界を代表して発言する場を与えられたのは、絶好のタイミングだった。
現在の英国と同様に、フランスでも凱旋門賞(G1)が一般メディアで取り上げられる機会は限られている。アガ・カーン・スタッズの傑出した牡馬が驚異的な偉業を成し遂げ、同レースが一層華やかなものとなったとしても、その状況は変わらない。
ザラ王女が講演を行ったのは、月曜日に開かれた国際競馬統括機関連盟(IFHA)年次総会(通称:パリ会議)で、競馬統括機関の関係者が集う重々しい雰囲気の場であり、世間の注目を集める可能性は、さらに低い。それでも、基調講演者としての王女の発言は、入念に演出されたもの、少なくとも戦略的に考え抜かれたものだったように感じられた。
華やかなブローニュの森――パリロンシャン競馬場が燦々と降り注ぐ陽光に包まれ、名士たちが華やかな正装で集ったその場所――でのひとときを終えたばかりの王女は、ファシネーターを脱ぎ、労働者風のベレー帽へと装いを変えた。
「人々は私たちの競馬産業を、シルクハットと燕尾服、帽子とハイヒールの世界だと捉えています」と王女は語った。「しかし、私たちが取り組んでいるのはそういうことではありません。私たちが守っているのは、本質的には地方の農業に根差した産業です。私たちは、今日ではあまり人気のない生産牧場での仕事を通じて、雇用やキャリアの機会を提供しています。私たちは土地を大切にし、動物たちを大切にしています」
「誰もが競馬の華やかな側面には目を向けますが、その産業そのものや、あらゆる過程で注がれる情熱には誰も目を向けません。種馬場から、昨日パリロンシャン競馬場で皆さんが目にした光景に至るまで、文字どおり何百人もの人々があの牡馬の世話に携わってきたのです。これは私たち全員が心に留めておくべきことだと思います」。
今回の発言は、フランス競馬が明らかに大きな圧力にさらされている中で、競馬界の内輪の世界を超えて世間に訴えかけることを意図した、鋭い問題提起だったように思われた。
週末に旅行者としてパリを訪れる私たちは、パリロンシャン競馬場で素晴らしい競馬が開催されたため、何らかの異変が起きていることなど気づかなかっただろう。しかし、華やかな表面の下では、英国の状況と同様に、競馬産業を支える収入をめぐって深刻な問題が生じている。ここ1年ほどで、PMU(フランス場外馬券発売公社)から競馬界へ還元される収益が大幅に減少し、この業界の財政状況がいかに危機的であるかが明白になってきた。
PMUからフランスギャロおよびルトロ(Le Trot:フランス速歩競走協会)への還元額は、2024年の8億3,800万ユーロ(約1,466億円)から2025年には8億300万ユーロ(約1,405億円)へと減少し、2026年は7億2,000万ユーロ(約1,260億円)前後になると予測されている。これは、わずか2年間で収入が14%減少することを意味する。どう見ても危機的な状況である。
内部での経費削減を織り込んでも、フランスギャロは今年、4,500万ユーロ(約79億円)の赤字を見込んでいる。周知のとおり、効率化に向けた取り組みは、地方競馬場の閉鎖の可能性に加え、平地競走と障害競走の混合開催の開催数削減や、一部の競馬場を平地または障害競走に特化させるといった合理化策にまで及んでいる。
PMUによってもたらされる自主性から、馬主・生産者向けの手厚い奨励金、充実した賞金、手頃な入場料に至るまで、フランス競馬モデルの多くの側面は、海外から羨望の眼差しを向けられてきたことを考えると、業界の根幹そのものを脅かす苦境に直面しているのである。その影響は、優れた競走馬の生産基盤として知られる、草の根レベルの生産現場にまで及びかねない。
こうした背景のもと、ザラ王女は巧みな競馬界を擁護する発言を行った。近隣諸国の競馬界が繁栄することは、私たち全員にとって重要である。この業界はもともと各国が密接に結びついており、これ以上縮小することは許されないからである。
ごく一部の関係者が有力な1歳馬セールで費やす巨額の資金が、業界の実情を反映したものではないことは、誰もが承知している。
競馬関係者の裾野が狭まり、競争が減少することは、業界が苦境を脱する助けにはならない。実際、フランス競馬界のトップレベルがいかに新たな人材を切実に必要としているかを示す状況が先週末にも見られた。
フランシス・グラファール調教師はまさに非凡な存在であることを証明しているが、対抗するフランスの有力調教師たちは、かつての勢いを失っている。ジャン=クロード・ルジェ調教師が引退し、アンドレ・ファーブル調教師も全盛期のレベルになく、クリストファー・ヘッド調教師も叔母のクリスティアーヌ・ヘッド調教師が到達した高みにまだ及んでいないなか、グラファール調教師は有力馬を独占し始めている。
この状況については今週初めにも本紙で触れたが、先週末、フランスで開催された競馬でフランス勢はどこにいたのかと疑問に思っても無理はないだろう。パリロンシャン競馬場での2日間を通じて、英国とアイルランドからの遠征陣営が、総額約1,000万ユーロ(約17億5,000万円)に上る賞金の大部分をさらっていった。
G1・G2競走計11競走のうち、グラファール調教師は凱旋門賞での圧巻の勝利に加え、ジャン・リュック・ラガルデール賞(G1)でもアミュージングリーを勝利に導いた。主要競走でほかに勝利を挙げたフランスを拠点とする調教師はエイミー・マーフィー調教師ただ一人だった。昨年の拠点移転以降、目覚ましい躍進を遂げている彼女は、大いに称賛されるべきである。
先週末、ほかに管理馬が上位入着を果たした地元の調教師もごくわずかであり、これは今夏を通じて見られた傾向である。今年フランスで行われたG1競走計25競走のうち、グラファール調教師以外のフランス人調教師が管理する馬が勝利したのは、ジャンロマネ賞(G1)でクリストフ・フェルラン調教師が送り出したアヴァンチュールただ1頭だけだった。
これは、ここ数年にわたって顕在化してきた明確な傾向がもたらした厳然たる帰結である。競馬界全体が抱える深刻な財政問題と相まって、フランス競馬界の中枢では警鐘がこれほど激しく鳴り響いているのも不思議ではない。
(1ユーロ=約175円)
By Richard Forristal
[RacingPost 2026年10月7日「It was France - but where were the French? How Arc weekend revealed an industry in crisis」]

























