IFHAが気候変動及びサステナビリティサミットを初開催(国際)【開催・運営】
国際競馬統括機構(IFHA)は7月13日から14日にかけて、ポルトガル・ポルトで第1回「気候変動及びサステナビリティサミット」を開催した。本イベントには、世界各国の競馬界のリーダーやサステナビリティの専門家など、約50名の国際的な代表者が集まった。
サミットでは、競馬界に留まらずその枠を超えた気候変動及びサステナビリティ推進に向け、優良事例の共有、知見の交換、連携強化に焦点が当てられた。2日間にわたる大会の開会挨拶は、IFHA副会長のアンリ・プレ氏が務めた。
「本日は、IFHAだけでなく、サラブレッド競馬というスポーツ全体にとっても極めて重要な節目となります」とプレ氏は語った。「世界の競馬関係者が一堂に会し、気候変動及びサステナビリティに特化したフォーラムを開催するのは今回が初めてです。この事実そのものが力強いメッセージとなっています。すなわち、私たちが直面している課題は実在し、緊急性を要するものであり、共同での取り組みが求められているということです」
「サステナビリティとは、一度限りの取り組みや単一のプロジェクトではなく、リーダーシップ、革新、投資、そして何よりも協力を必要とする長期的な取り組みです。そこには当然ながら難しい決断やトレードオフも伴いますが、同時に効率性、レジリエンス、さらには成長につながる新たな機会も生み出すものとなるでしょう」。
プレ氏による開会挨拶に続き、リーダーシップ・パネルディスカッションが行われ、社会的な操業許可(SLO)、馬福祉に対する社会の期待、より強固なパートナーシップが持つ力などをテーマに、競馬界が直面する課題と機会について議論が交わされた。パネリストには、英国競馬統括機構(BHA)のCEOでありIFHA執行委員会委員および欧州・地中海競馬連盟(EMHF)副会長を務めるブラント・ダンシャー氏、持続可能な開発のための世界ビジネス評議会(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD)教育担当シニアディレクターのジェームズ・ゴム氏、欧州サッカー連盟(UEFA)社会・環境サステナビリティ最高責任者のフィリッポ・ヴェリオ氏が登壇した。
初日には4つの専門セッションが開催され、第1セッションの「異常気象現象の発生頻度と影響」では気候変動や異常気象が競馬および他のスポーツに及ぼす影響の概要と、オリンピックや国際馬術連盟(FEI)主催の馬術競技、競馬開催など、グローバルなスポーツイベントへの影響を軽減するための対応策が提示された。
登壇者は、BHA環境サステナビリティ部門責任者のケイティ・カー氏と、香港ジョッキークラブ(HKJC)の獣医師で獣医規制・馬福祉・防疫対策を担当するジェームズ・ミッツィ氏が務めた。
第2セッション「馬福祉とサステナビリティ」では、健康な仔馬を育てるための土地管理の重要性と、生産牧場が環境サステナビリティを日々の運営に導入するための実践的な方策が取り上げられた。さらに、気候変動が異なる地域への伝染病拡大の可能性に与える影響や、監視体制の強化およびワクチン開発を支える研究の必要性についても議論された。また、馬場状態と競走馬の負傷発症率との関連性、ならびに気象条件の厳しさが増すことで安全な馬場整備が一層困難になることについても検証が行われた。
登壇者は、アイリッシュエクワインセンター(Irish Equine Center)環境・栄養部門責任者兼アイルランドサラブレッド生産者協会(ITBA)牧場の効率・サステナビリティ委員会の委員を務めるアラン・クレイトン氏、ケンブリッジ大学馬感染症監視部門疫学・疾病監視部門長のリチャード・ニュートン氏、HKJCの馬福祉研究財団ディレクター兼中国本土獣医事業最高顧問のクリス・リグス氏が務めた。
第3セッション「持続可能なスポーツ施設:エネルギー、土地、水、生物多様性」では、ベルモントパーク競馬場やアスコット競馬場をはじめとする世界各地の主要な競馬場やスポーツ施設を取り上げ、それらがインフラや運営に環境サステナビリティの取り組みをどのように組み込んでいるかが紹介された。また本セッションでは、競馬場やその他の所有地を活用して、競馬が生物多様性の保全に貢献できる可能性についても議論された。登壇者には、アスコット競馬場コーポレート&インダストリーアフェアーズ責任者のウィル・アイトケンヘッド氏、ネイチャーブローキング社科学・自然資本責任者のラッセル・ガルト氏、ニューヨーク競馬協会(NYRA)副社長で事業運営・施設整備担当のグレン・コザック氏、ADAS気候変動・サステナビリティ担当マネージングディレクターのサラ・ウィン氏が名を連ねた。
第4セッション「競馬のサステナビリティへの歩みに、関係者、ファン、そして市民を巻き込む」においては、コミュニケーションと行動変容の重要性が検証された。社会的な期待が高まる中でサステナビリティについて誠実に発信することや、ソーシャルメディアの持つ影響力などが主なテーマとなった。登壇者は、HKJC総合サステナビリティ担当上級課長のジーン・ン氏、アイルランド競馬統括機構(HRI)施設整備・環境サステナビリティ責任者のヴィクター・クインラン氏であった。
サミット2日目には、WBCSDがファシリテーターを務める「業界連携ワークショップ」が開催された。戦略的シミュレーション、ファシリテーターによるディスカッション、共同演習を組み合わせることで、参加者が問題意識を持つ段階から、共通理解の醸成、さらには実践的な行動へと進めるよう構成された。
サミットの締めくくりとして、開会時のリーダーシップパネルにも登壇したブラント・ダンシャー氏が総括の挨拶を行った。
「この2日間の議論を通じて明らかになったのは、各国・地域の競馬統括機関はそれぞれ異なる環境問題に直面しているものの、私たちには『競馬というスポーツの長期的な未来を守る』という共通の目標があるということです。誰一人としてすべての答えを持っているわけではありませんが、私たち皆、それぞれ貢献できるものを持っています。それぞれの組織が、実践的な行動を起こし、そこから得られた学びを他者と共有する決意を持ってポルトを後にするならば、このサミットは真に価値ある成果を残したことになるでしょう」
「気候変動に国境はありません。そして、その解決策にも国境があってはなりません。国際的な連携を継続することで、世界の競馬のレジリエンスを高め、競馬が将来の世代にわたって発展し続けられるようにすることができます。このサミットは議論の終わりとしてではなく、長期にわたる国際協力の始まりとして記憶されるべきです」。
なお、本イベントの開催に伴い発生すると見込まれる温室効果ガス排出について、IFHAはその排出責任を果たすための対応策を検討し、その一環として、 『検証済みカーボンクレジット(VCCs)』197単位を償却した。これらのクレジットは、Climate Action Reserve(CAR)に登録されているメキシコの森林管理改善(IFM)による炭素除去プロジェクト「Bonos X-Hazil Ruta Sian Ka'an」から調達されたものである。なお、VCCs 1単位は大気中の二酸化炭素換算(CO₂e )排出量1トン分の削減・除去または排出回避に相当する。
IFHA, Unedited Press Release
[bloodhorse.com 7月15日「IFHA Holds Climate Change and Sustainability Summit」]

























