総額5億5,500万ドルを投資したベルモントパーク競馬場が再始動(アメリカ)【開催・運営】
現在、ニューヨーク競馬協会(NYRA)は、6月28日に行われるアケダクト競馬場での最後の競馬開催を目前に控えている。
その後、7月3日から9月7日にかけて注目はサラトガ競馬場へと移り、過去最長の46日間にわたる開催による毎年恒例の熱狂が繰り広げられる。
そして、NYRA71年の歴史において最も重要な瞬間となるであろう出来事が控えている。
9月18日に、ベルモントパーク競馬場は2023年以来初めてその門を開き、ニューヨーク市周辺の競馬を21世紀へと導くことになる。ニューヨーク州から4億5,500万ドル(約728億円)の融資を受けて競馬場を再構築し、規模は大幅に縮小したものの、超近代的なグランドスタンド/クラブハウス棟を建設した成果を、誰もが目にできるようになる。また、NYRAがさらに1億ドル(約160億円)を投じて改修した2つの芝コースとメイントラック(ダート)に、第4のコースとして追加されたタペタ(オールウェザー)コースも披露される。
「私たちが競馬ファンの皆さんに提供できるベルモントパーク競馬場での体験は、何世代にもわたって見ることができなかったものになるでしょう」とNYRAの競馬運営担当上級副社長であるアンドリュー・オファーマン氏は述べた。「すべてが一体となり、ニューヨーク市周辺における競馬の再生へとつながっていく様子を目の当たりにして、私は心からワクワクしています」。
ベルモントパーク競馬場が建て替えられるのは、1905年にニューヨーク市との境界に隣接するニューヨーク州エルモントの400エーカー超の敷地に建設されて以来2度目となる。
最初の建て替えは1963年から1968年にかけて行われたが、当時は競馬が隆盛を極め、他の賭事との競合もほとんどなく、1日あたり2万5,000人の観客動員が当たり前だった。
当時、NYRAはアケダクト競馬場やベルモントパーク競馬場で開催を行いさえすれば大勢の観客が押し寄せてきた。
現在、ニューヨーク市周辺の競馬は出走馬や競走数の確保に苦戦しており、観客動員数も1960年代のほんの一部に過ぎない。そうした状況下で、新たなベルモントパーク競馬場の開場は競馬界を活性化させ、建て替えにかかる巨額の費用を正当化し、敷地内のUBSアリーナと相互に価値を高め、競馬にふさわしい現代的な本拠地を提供するうえで極めて重要な節目となっている。
もちろん、それには適切に向き合うべき避けられないプレッシャーも伴う。
「私はこれをプレッシャーとは考えていません。むしろチャンスだと捉えています」とオファーマン氏は語った。「競走担当チームや関係者と話すと、彼らは皆、根っからの競馬ファンです。だからこそ、一生に一度あるかないかのプロジェクトに関われることに、むしろ光栄な気持ちと興奮を感じています。プレッシャーはつきものです。しかしそれが楽しいことならば、その興奮に意識を向ける方が、プレッシャーに囚われるよりもずっと簡単です」。
約1万人の観客を収容できる新スタンドは来春まで全面開業とはならない(オープン当日は5フロアのうち最初の2フロアのみ利用可能)が、9月18日からベルモントパーク競馬場での競馬は本格的に再開される。これにあわせてNYRAは、ベルモントパーク競馬場の開催をこれまで以上に収益性が高く魅力的なものにするため、いくつかの優遇措置を導入している。
ベルモントパーク競馬場では、一般競走の賞金が平均15%増額され、クレーミングの対象にならない未勝利競走の賞金は8万ドル(約1,280万円)から10万ドル(約1,600万円)に引き上げられる。アローワンス競走の賞金は10万5,000ドル(約1,680万円)および10万8,000ドル(約1,728万円)となる。
さらに、今開催から、ニューヨーク産馬限定競走の賞金は制限のない競走と同額となる。
歴史的な9月18日の競馬開催を盛り上げるため、同日の一般競走の賞金は50%増額される。そして、この日のハイライトとなるのが賞金100万ドル(約1億6,000万円)のジョッキークラブゴールドC(G1)の施行である。サラトガ競馬場からベルモントパーク競馬場に戻される同レースは、BCチャレンジシリーズ「Win and You're In」の対象競走であり、勝利馬はBCクラシック(G1)の優先出走権を獲得できる。
「このレースをベルモントパーク競馬場に戻すことは、特に2027年にブリーダーズカップがこのニューヨークで開催されることを考えると、非常に理にかなっています」とオファーマン氏はジョッキークラブゴールドCについて語った。「競走体系の観点から見ても、本競走はBCクラシックに向けた最終調整レースとしてベルモントパーク競馬場で開催されるべきです。ベルモントパーク競馬場での開催には少なくとも短期的には理にかなった理由があり、それがどれだけの関心を呼び起こすのかを見ていきます」。
競走馬の層を厚くするための更なる取り組みとして、NYRAは9月から「ビッグアップルボーナス」制度を開始する。これは、他地区からニューヨークへ競走馬を移動させた馬主や調教師に対し、最大8,500ドル(約136万円)を支給するものである。
規定によると、400マイル未満の距離から移動してきた馬は、秋開催での初出走時に3,000ドル(約48万円)のボーナスが支給される。この金額は、馬主へ2,000ドル、調教師へ1,000ドルと配分される。対象となる距離は、南は基本的にコロニアルダウンズ競馬場までである。
400マイル以上離れた地域(ケンタッキー州やカナダ、および国内のその他の地域を含む)から移動してきた馬は、初出走時に6,000ドル(約96万円)のボーナスを受け取ることができ、そのうち4,000ドルが馬主、2,000ドルが調教師に支払われる。
さらに、秋開催に3戦連続して出走した対象馬については、馬主に追加で2,500ドル(約40万円)が支給される。
「このビッグアップルボーナスに一般競走の賞金15%増額、そして真新しい施設とそれがもたらす興奮が相まって、馬主、調教師、騎手、そしてファンの皆さん全員にとって、ベルモントパーク競馬場でのレース体験そのものが一新されることを期待しています」とオファーマン氏は述べた。
これらの施策について周知を図るため、NYRAの競走部門は競馬関係者とインセンティブについて熱心に協議を重ねており、オファーマン氏は現段階の反応に満足していると述べた。
「私たちのチームが行ってきた初期の話し合いを踏まえると、競馬関係者からいい反応が得られると期待しています」とオファーマン氏は語った。「昨年は競走部門が各地を回り、全国の関係者との話し合いを重ねるように意識的に取り組んできました。より多くの調教師と直接顔を合わせるため、主要な全てのダービー競走の前哨戦やセリ会場に足を運ぶよう努めました。夏開催に移動してくる関係者や、冬はフロリダへ移動する関係者から寄せられたフィードバックは、今後の関心の高まりについて前向きな兆候を示しています」。
ベルモントパーク競馬場の新しいトラックとコース
オファーマン氏はまた、ベルモントパーク競馬場に整備された4つのコースが競馬関係者から歓迎されるとの見方を示した。
「4つの最先端の新しいコースが導入されることには、明らかな期待感があると思います。特に、大規模な芝コースについては、これまでベルモントパーク競馬場で利用できたよりもはるかに充実した規模となります」と同氏は語った。「さらに、サラトガ競馬場のコース構成に匹敵するメインのダートコースも整備されます。そしてもちろん、タペタコースは秋に芝から馬場変更されたレースの選択肢として全く新しい世界をもたらしますし、冬季競馬シーズンにどのような可能性をもたらすかという点でも期待が高まります。タペタコースがあれば、本来なら放牧に出されるような馬でも調教を続けることができ、現在ニューヨークで活動している調教師はもちろん、あるいは初めてニューヨークに挑戦したいと考えている調教師を含め、新たな関係者を惹きつけることができると信じています」。
オファーマン氏は、タペタコースでの本格的なレースは12月に始まる見込みだが、このコースを皆に知ってもらうために、時折タペタコースでの競走が組まれるだろうと述べた。
「冬シーズンに先立ち、タペタコースでの競走を数レース実施する予定です。これは、まずタペタコースの感触や特性をよりよく把握するためです。また、馬をこのコースで走らせるのにどの程度の時間や準備が必要となるのか、さらに競馬番組をどのように編成していくべきかを理解するためでもあります。定期的に開催するわけではありませんが、10月や11月になれば徐々にタペタコースでの競走を目にするようになるでしょう。おそらく週に2レース程度です。これは、冬が近づく中で、私たち自身がある程度経験を積むためです」と同氏は語った。
「現在実施している各種施策は、良質な冬季競馬を維持できるだけの充実した馬の層を厚くするため、馬の流入を促すよう設計されたものです。タペタコースへの移行という決定は何よりもまず馬の安全のためですが、加えて、芝やダートの馬も対応しやすいため、より多くの競走馬が出走対象となることも広く知られています。その結果冬季でもより多くの馬がレースに出走し、調教を続けることができるため、昨年よりも大幅に質の高い冬季競馬を提供できるはずです」。
秋開催では、11月27日から11月29日にかけて晩秋ターフフェスティバルも開催され、芝のステークス競走9競走(うち4競走はグレード競走)が行われる。11月28日には、マンノウォーS(G2)、そして3歳馬を対象としたジョッキークラブダービー(G2)とジョッキークラブオークス(G3)が予定されており、各レースの賞金は50万ドル(約8,000万円)となっている。
悪天候時の代替コースとしてタペタコースを利用できるため、このような番組編成が可能となっている。
「ジョッキークラブオークス、ジョッキークラブダービー、そしてマンノウォーSを11月末へ移すことで、シーズン最後を締めくくる象徴的な芝のチャンピオンシップを創出する機会を得ることができました」とオファーマン氏は語った。「マンノウォーSは現在G1競走ではありませんが、再度G1になる可能性を秘めた由緒あるレースです。そのため、ベルモントパーク競馬場にはこれまでなかった年末の大規模な芝での競走に向けて馬を呼び込む機会が生まれます。また、海外の競走馬を呼び込む上でも理にかなった場所だと思われます。時期の面からみても、カリフォルニアから馬を招くのと同じくらい、ヨーロッパからの馬を招くのも容易です」。
そして3か月後、ニューヨーク競馬の未来が現実のものとなる時、こうした取り組みのすべてが試されることになるだろう。
By Bob Ehalt
(1ドル=約160円)
[bloodhorse.com 2026年6月17日「NYRA Setting Bonuses, Purse Increases to Boost Belmont」]

























