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2026年04月23日  - No.14 - 1

BHA会長の辞任で競馬場間の対立が表面化(イギリス)【開催・運営】


 書簡が届くこと自体は想定されていたものの、その届き方は明らかに想定外だった。

 英国競馬統括機構(BHA)がアレン卿の会長辞任公表後すぐに、英国の大手競馬場グループが爆弾の投下のような動きを見せた。

 英ジョッキークラブに加えて、アスコット、グッドウッド、ニューベリー、ヨークの各競馬場は、競馬場協会(RCA)のウィルフ・ウォルシュ会長に対して、「業界の改革支援」のための統治体制を緊急に見直すよう求める書簡を送ったと発表した。これにより、RCAは4月末までに組織改革案の提示をするように迫られた。

 アレン卿の就任の遅れと突然の辞任をめぐる一連の混乱は、業界内の不満を頂点までに高め、英国競馬の未来を巡る主導権争いへと発展した。

 公式声明

 RCAのCEOアレックス・イード氏にとって、3月3日は手荒い洗礼を受けた日となった。大手競馬場グループ(LIRG)の事務局長を務めていた同氏は、前日にRCAのCEOに就任したばかりだった。

 RCAの幹部はアレン卿の辞任後に、LIRGから何らかの連絡が来ることは予想していたが、これほど公然とした声明が出されるとは想定していなかった。それまで、英国の競馬場は、たとえ舞台裏で揉め事があったとしても、公の表舞台では常に足並みをそろえてきた。それが今や重大な問題になってしまったようだ。

 RCAは、書簡を広く拡散するというやり方に対する失望を関連する競馬場に伝え、組織のスタッフに悪影響を与えてしまうと苦言を呈した。

 書簡では、反旗を翻した競馬場側の意向が通らなかった場合に何が起こるのかについては、一切触れられていなかった。しかし、それもほどなく明らかになった。

 アスコット競馬場CEOのフェリシティ・バーナード氏が本紙に「脱退も辞さない覚悟です。軽い気持ちで言っているわけではありません」と語った。

 それ以降、競馬場の当事者はこの件について口を閉ざした。本紙はコメントを得ようと接触を試みたが、誰一人として応じなかった。

 しかし、もしアスコット競馬場とそれを支持するグループがRCAを脱退するという核オプションとも言うべき強硬手段に訴えることになれば、RCAの将来が大きく危ぶまれる。ひいては、ここ数か月にわたり不安定な情勢により麻痺状態に陥っている英国競馬の統治体制の混乱をさらに深めることになる。

 掲げられた指針

 英ジョッキークラブと(書簡に署名をしなかったチェスター競馬場を含めた)大手競馬場は、RCAとのやり取りのなかで具体的な提案を提示していない。

 しかし、指針をいくつか挙げている。これらの競馬場としては、RCA理事会がバランスの取れたものであり、「主要な」競馬場の意見が意思決定に反映される構造になることを確実にしたかったのだ。

 また、彼らはBHAが強いリーダーシップを担うことについて、改めて支持を表明した。いわば、かねてより熱望していたBHAに独立した理事会を設立する体制を支持した形だ。

 独立したBHA理事会の設置、つまり、競馬場や競馬関係者の代表者を含まない理事会の設置はアレン卿がBHA会長に就任する前提条件としていたものであり、英ジョッキークラブやその他の大手競馬場からも支持されていた。

 大手競馬場グループの一部には、(BHAが)独立した理事会を設置できなかったことについて、その責任の所在をRCAに求める向きがあった。一方で、そうではないと考える者もいる。RCAは独立した理事会の設立を支持していたが、アレン卿が辞任する原因にもなった開催日のデータ権に関する問題の取り扱いによって、設立が頓挫してしまったと考えているのだ。

 しかし、アレン卿の辞任が引き金となり、英ジョッキークラブや大手競馬場の積年の不満が一気に爆発した。

 書簡のなかで、競馬場側は、「競馬の未来を左右する意思決定に競馬場が効果的に関与できる体制を確実に整えるために」、RCAの統治体制を建設的に見直す必要があるとした。

 この要求は、英国競馬で極めて重要な位置にいる競馬場の意見が、RCAによるBHAや競馬関係者との施策策定協議で反映されないという不満や、小規模競馬場の意見がアスコット競馬場やチェルトナム競馬場の意見と同等に扱われているという声を反映したものだ。

 実際のところ、「独立した小規模な」競馬場グループはRCAの理事会に3名の代表を立てているのに対して、英ジョッキークラブと大手競馬場から代表者はそれぞれ1名ずつ、計2名にとどまっている。しかし近年、理事会で課題に関する採決が行われたのは片手で数えられる程度だ。

 それにもかかわらず、3月3日にバーナード氏が本紙に語ったところによると、アスコットを含めた各競馬場はRCAの統治体制が「本来あるべき、あるいは持つべき発言権を我々に認めていないため、本来の目的を果たせていない」としており、「我々が検討したい事案や少なくとも調査を進めたい事案についても、一切具体化されていません」と批判した。

 募る不満

 英ジョッキークラブや大手競馬場の中には、戦略的事項に関して競馬場全体が一枚岩であるとBHA理事会およびサラブレッドグループ(TG)に提示されてきたことについて、憤りが広がっていた。

 大手競馬場は、競馬運営について、第三者から見えているよりも競馬関係者に共感する意見が多いと考えていたにもかかわらず、TGに反対する意見を競馬場全体の総意として提示されることに不満を感じている。

 確かに開催日割や競走数などに関して言えば、その通りだろう。大手競馬場の一部は、顧客の競馬離れを食い止めるために競走数が削減されるべきだと考えていた。2027年の開催日割は現在調整中であり、これが大手競馬場の行動にさらなる勢いを与えている。

 競馬関係者には、今回の書簡が英ジョッキークラブとアリーナレーシング(ARC)社との間にある、一触即発の緊張感によってもたらされたものだと考える人も少なくない。

 RCAでの意思決定には、過半数の賛成で済むものもあれば、定款変更のように75%以上の賛成が必要となるものもある。意思決定は一競馬場一票の原則で行われている。つまり、RCAの58団体のうち16団体を所有しているARC社は、事実上の拒否権を持っていることになるのだ。

 近年の両者の関係性は、ARC社が自社の放映権事業のために、英ジョッキークラブの運営している競馬場メディアグループから複数の競馬場を引き抜いたことから良好であるとはいえない。さらに最近では、英ジョッキークラブがARC社から幹部を引き抜いている。

 また、ある業界関係者によると、英ジョッキークラブがライバルであるARC社の事業の100%または一部の買収を検討していると12月に本紙が報じた際も、ARC社は不快感を抱いていたという。

 一会員一票

 RCAは設立当初から一会員一票の原則を貫いてきた。しかし、反旗を翻した競馬場は、RCAは1907年設立当初の単なる業界団体から変容を遂げており、現在の定款には、競馬運営の一端を担う重要な組織としての性格が反映されていないと考えている。

 さらに、一会員一票の原則には、競馬場間にある事業規模やビジネスモデルの顕著な格差も反映されていないと感じている。

 3月にバーナード氏は本紙に対し、「RCAの投票構造が一会員一票ですので、結局のところは特定の競馬場グループが意思決定を左右できる状況にあることを意味しているのです」と述べた。

 「もちろん、誰だって常に自分が所属する組織の利益になるような投票をするでしょう。私もそうします」

 「我々は革命を起こそうとしているわけではありません。競馬が進んでいく方向性をさらに的確に反映させるために必要な変更なのです」。

 かつてイギリスの首相を務めたウィンストン・チャーチルが「民主主義は最悪の政治形態である。これまで試みられてきた他のあらゆる形態を除けば、だが」と述べたように、RCAの一会員一票もうまく機能していないように見える。しかし、他に何かいい方法はあるのだろうか。

 反発する競馬場側に適した方法があるとすれば、競馬場の入場者数、重賞競走数、放映権による収入への貢献度、ITVの放映実績といった要素に応じて、競馬場ごとの投票に重みを付けることだ。これならば大手競馬場は影響力を強めることになるし、公平であると感じるだろう。

 ARC社がこれに合意するかはまた別の話だ。ARC社はすでに強大な権力や影響力を手にしており、みすみすそれを手放すとは考えられない。

 集客やホスピタリティに軸足を置いたビジネスモデルを採用している英ジョッキークラブや大手競馬場とは違い、ARC社は集客よりもオールウェザー競走を多く施行して得られる放映権収入に頼っている。

 ある関係者は、一会員一票の原則を全ての議案に適用する必要はないと話す。特定の議案に関して特定の競馬場が特別な権限を持つようにすれば、多数決によって否決されることを阻止できるのではないかと提案した。

 交渉の余地なき要求

 英ジョッキークラブと大手競馬場の書簡は、RCAに対して、将来どのような運営を望んでいるのか、具体的な詳細には触れていない。しかし、本紙の取材では、その後、彼らはRCAのリーダーシップに関する見解を明確に示しており、要求に関しては一切、交渉に応じないとのことだった。

 彼らの要求の最優先事項は一会員一票システムに対する反対意見に対処すること、また書簡にもあったように意思決定の際にスムーズさを欠くことなく、重要な意見が反映される仕組みを見つけることであった。

 また、競馬場の特長に応じた競馬への貢献度の違いを反映できるようにRCA理事会の構造刷新を要求している。

 さらに、RCAはBHAにおける独立した理事会設置を確約するよう求められている。

 本紙の取材によると、英ジョッキークラブはRCAに対して、要求は「明白であり、曖昧な点はない」とし、交渉の余地はないと伝えたという。要求が満たされなければ、RCAからの脱退も辞さない構えだ。

 近年、RCAが常に英国の全競馬場を網羅してきたわけではない。トウスター競馬場が2018年に閉場した際、同競馬場は会員ではなかった。プランプトン競馬場は、所有者のピーター・サヴィル氏が(RCAは)小規模競馬場の意見に聞く耳を持ってくれないとして2024年末に脱退した。

 しかし、万が一、多数の競馬場がRCAを脱退することになった場合、RCAに限らず、英国競馬界の統治体制にどんな影響をもたらすのかは全く不透明である。

 RCAは馬主協会(ROA)、サラブレッド生産者協会(TBA)、およびその他の免許を交付されている関係者とともにBHAを構成する会員でもあり、株主でもある。RCAはBHA理事会で会員が選出できる理事4名のうち2名を指名できるうえ、競馬賭事賦課公社(Levy Board)には代理人1名を送ることができる。さらにBHAの定款変更のためにBHA会員による投票が実施される場合は3票を投じることができる。

 このような定款の下、RCAは「英国において競馬場所有者の利益を代表するのに最もふさわしい組織」でなくならない限り、BHAの会員であり続ける。

 しかし、現行の定款では、「BHAの理事会が競馬場所有者にとって代理人として最もふさわしいと認定した別の組織を推薦、提案しない限り」、RCAはBHAから除名されない。

 定款が定めていないのは、BHA理事会が競馬場所有者の利益を代表する組織を決定する際の基準やプロセスだ。

 要求が満たされていないとして、英ジョッキークラブや大手競馬場がRCAを脱退することがあれば、英国競馬の統治体制に深刻な危機を引き起こすことになるだろう。

 BHA理事会の意思決定が、関与する競馬場の数や開催数などに基づいたものであれば、ARC社がRCAを支配するという構造は変えられず、全競馬場の代表者としての地位を維持するだろう。そうであれば、英ジョッキークラブや大手競馬場の居場所はどこにあるのだろうか。蚊帳の外から、どのように競馬界の将来戦略に対して影響を及ぼすつもりなのだろうか。

 一部の関係者が推測しているように、過去に競馬のガバナンスのために提案された計画が復活する可能性もあるのではないだろうか。それは競馬場とTGが英国競馬運営のために、新たな商業体制を組織するといったものになるのだろうか。

 RCAを巡る危機は、単に戦略面へ影響を及ぼすだけではない。というのもRCAは複数の競馬関連サービスを提供しており、とりわけレーステック社を保有している。

 「これは単にBHAの投票構造を変えるといった話ではありません。競馬界の根幹となっている運営側のサービスも致命的な打撃を受けてしまうということなのです」とある競馬関係者は語った。

 重要な期日

 今後数日間はRCAにとって、ひいては英国競馬全体にとっても、未来を左右する重要な意味合いを持つ時期になるだろう。

 RCAは反発する競馬場側の要求を満たすべく、提案をまとめつつ、組織が分裂した場合に備えて緊急時の対応計画を準備している。

 来たる4月30日、当事者である競馬場側はRCAの運営体制の見直しが要求を満たすものであるのか、それとも離脱をするのか、決断を下さなくてはならない。

 確かなのは、アレン卿がBHAから立ち去ったことが、当初考えられていたよりもはるかに大きく波紋を広げているということだ。

By Bill Barber

[Racing Post 2026年4月13日「Racecourses at war: inside the bombshell ultimatum that could plunge British racing into further chaos」]


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