BHAのCEOに任命されたブラント・ダンシー氏には課題が山積(イギリス)【開催・運営】
チェルトナムフェスティバルは、英国競馬界にとって、束の間の休息となった。難題から数日間だけ逃れて、元来、競馬が愛されてきたその原点を堪能することができた。しかし、楽しい時間には終わりが来る。今こそ、競馬界が直面している様々な問題点について取り組むときだ。
その多くを担うのがブラント・ダンシー氏だ。チェルトナムフェスティバルの数日前に英国競馬統括機関(BHA)の正式なCEOとして任命された。本来、新任のCEOは着任後、山積みとなった書類の内容の把握から取り掛かるものだが、同氏は2024年12月に前CEOジュリー・ハリントン氏から暫定的にその職を引き継いでおり、それらの問題に対処してきた。
それ以降のBHAは、ダンシー氏がITVレーシングのマット・チャップマン氏との先週のインタビューで語ったように、競馬を振興し、新たなファンを獲得するため、業界戦略の施策に取り組んできた。
競馬場の観客動員数の回復は、こうした労力が実を結んだ成果の一つだ。「ザ・ゴーイング・イズ・グッド」と名付けたマーケティング戦略や「プロジェクト・ビーコン」による観客の調査から得た情報もこれに寄与している。しかし、グレート・ブリティッシュ・レーシング(GBR)を取り巻く状況は依然として不安定だ。長きにわたる上級役員の不在は、BHAが対処すべき問題であろう。
ダンシー氏の任命により、現在、BHAに対して切実に求められる幾ばくかの安定はもたらされた。しかし、当面の間は、常任の会長は不在であるし、新たな独立性の高い理事会に道を譲るはずだった理事らに囲まれ、かじ取りをしていかなくてはならない。
さらにダンシー氏は、BHAの中でおそらく最も影響力がある競馬場協会(RCA)の先行きが不透明な状況で職務にあたらなくてはならない。BHA会長だったアレン卿の辞任によりRCAは一種の危機を引き起こしたのだ。英ジョッキークラブやアスコット、グッドウッド、ニューベリー、ヨークといった主要競馬場が自分たちの影響力をより拡大させるよう、RCAに改革を求めたのだ。
競馬場の要求は、改革が満足のいくものでなければ、RCAを脱退するという明確な脅しをはらんだものであり、アリーナレーシング社(ARC)との間に衝突を招く公算も大きいと思われる。
こうした一連の動きは大きな混乱に発展する可能性がある。ダンシー氏とBHAは、よりによって、このような状況下で2027年の開催日割をとりまとめねばならないからだ。BHA自身は、現状の供給可能な競走馬の頭数を考えれば、開催数を減らすことが望ましく、かつ必要だとの認識を示唆しており、これには多くの競馬場も同意するとみられている。
こういった競馬界の政治情勢の中で、BHAの改革を進めることができるかどうか、これこそダンシー氏がこの数週間で、立ち向かわなくてはならない課題なのだ。
長期的には、生産頭数の減少に対応しつつ、競走馬の確保・維持に向けた施策が必要だ。そのためには英国競馬界の財政状況の改善が鍵となるが、ダンシー氏とBHAには財政面での課題も目白押しだ。
昨年の予算編成に向けた時期に展開された「競馬への増税ストップ」キャンペーンは、期待した結果をもたらした。レイチェル・リーヴス財務大臣は競馬の賭け金に対する直接的な増税を実行しなかった。
しかし、予算では賭事業者への大幅増税が決定され、大打撃を与えた。増税の第一弾は来月初旬に実行されるが、すでにブックメーカーがスポンサー契約の予算を削減しており、その影響は感じられ始めている。
競馬界と賭事業界の間にも修復すべき溝が存在する。賭事業者は、競馬界がギャンブル反対派に肩入れしているのではないかと考えているからだ。賭事を一括りにして悪いイメージを植え付けようとするキャンペーンに対して、BHAが馬券購入は一般的で正当な娯楽であると擁護することは、間違いではないだろう。
反対派が照準を定めている賭事広告については、政策当局が全面禁止を検討した場合、BHAとして競馬に対する潜在的なダメージを指摘する必要があるだろう。競馬を広域で放送するというビジネス上の観点からは広告の役割は重要だからだ。
また、アフォーダビリティ・チェック(経済力チェック)についても未解決のままだ。競馬界および賭事業者の双方がいわゆる「摩擦なき経済力チェック」の試用に関して、賭事委員会(Gambling Commission)の判断を待っている状態だ。同委員会の決断の遅れは、「摩擦なき経済力チェック」に関する公約が実際に実行されるのか、といった懸念を高めるに違いない。実行されない場合、さらに多くの賭事の売上が違法市場に回ってしまう可能性がある。
一つ良い点を挙げるとするならば、ダンシー氏が政府の違法賭事市場タスクフォースに属していることだ。裏目に出るような規制は避けるべきだと主張することができる。
このように、日常的な規制業務、競走馬や関係者の福利厚生の改善などBHA本来の業務に先立って対処しなければならないことは山積みだ。BHAの新CEOは、実に困難な課題に直面している。
By Bill Barber
[Racing Post 2026年3月16日「The daunting task and overflowing in-tray facing Brant Dunshea as he takes on the BHA hotseat」]

























