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2025年12月25日  - No.49 - 2

アジアパターン委員会がオーストラリアのブラックタイプ競走の格付けを決定 (オーストラリア)【開催・運営】


 レーシングオーストラリア(RA)は、アジア競馬連盟(ARF)がオーストラリアのブラックタイプ競走の管理権を掌握する動きを受け入れることとなった。これにより、次シーズン開幕前にアジアパターン委員会(APC)が格付けを決定する体制が整う。

 今回の動きは、オーストラリアのステークス競走格付け制度が機能不全に陥ったことを受けてのものだ。同国では2017/18年シーズン以降、機能するブラックタイプ委員会が存在せず、2012年以降、数十競走の格上げが行われた一方で、格下げは一度も行われていなかった。

 APCは10月の書簡において、APCの基本規則に準拠したブラックタイプ委員会が国内に存在しないことへの懸念に対して、12月5日までに適切な対応がなされない場合、この措置に踏み切る可能性があるとRAに対して通告していた。これを受けAPCは12月17日(水)にオーストラリアにおけるブラックタイプ競走の格付け管理権を掌握したと発表した。

 この措置は、オーストラリアにおいてAPCの基本規則に準拠したブラックタイプシステムを確立するまでの間の一時的な対応としている。

 ARFは、近い将来にそのようなシステムが導入されることを望んでいると表明しているが、もしその導入に失敗した場合、オーストラリアは国際セリ名簿基準書(ブルーブック)のパートII国に降格される恐れが依然として残っている。

 RAは、ロブ・ロリソン会長の声明で、ARFの決定を受け入れ、「この期間中はAPCと協力する」方針を示した。また、APCの基本規則を満たすシステムを採用しない場合「更なる措置が取られる可能性がある」ことも認めた。

 また同声明によれば、RAは「適切なステークホルダーから構成されるオーストラリア・ブラックタイプ諮問グループ」を依然として設置したい意向を持っていることが示された。

 一方で、業界関係者の一部は、APCがこの状況に対処するための具体的なメカニズムが判明するまではコメントを控えている。しかし少なくとも水曜日の発表は、オーストラリアのブラックタイプ問題の解決に向けた第一歩として、生産者、セリ業者、その他のステークホルダーなどからは歓迎される可能性が高い。この問題は、広く批判されているRA組織構造から生まれた州間政治対立の弊害であると多くの人に思われている。

 しかし、オーストラリアのように規模が大きく、影響力があり、歴史のある競馬開催国にとって、これは引き続き重大な問題である。

 同様に、これはレーシング・ニューサウスウェールズ(RNSW)にとっても大きな後退となる。同団体が前シーズン開幕以降に「格上げ」した18競走が、ARFの懸念事項に挙げられているためだ。

 RNSWは水曜日、ANZニュースの取材に対しコメントを控えた。競馬サイトBetsyは、RNSWのピーター・ヴランディスCEOが「今回の介入は、各州の競馬統括団体が一連のガイドラインを最終的に取りまとめるためのきっかけとなる可能性がある」と発言したと報じた。

 RAにおいて拒否権を持つもう一つの団体であるレーシング・ヴィクトリア(RV)は、このニュースを受けて、ブラックタイプ競走の決定権をオーストラリアに戻すため、独立したパターン委員会の設置を呼びかけた。

 第一段階として、APCはオーストラリアのブラックタイプ競走の精査と整合性を取るという膨大な作業に着手せざるを得ないだろう。これは、同国で機能するブラックタイプ委員会が不在だった7年間に実施されなかった格付けの見直しに取り組むことを意味する。ここでは、2012年を最後に一度も行われていない格下げされるべきだったレースの特定も行われる予定だ。

 水曜日の発表を受け、シドニーC(G1)を含むオーストラリアの複数の競走はG1の格付けを失う可能性がある。同時に、VRCダービー(G1)を含む他の競走も格下げの警告対象となっている。

 ARFはRAに宛てた書簡の中で、オーストラリアのレースの格下げが最後に実施されたのは2012年8月であり、それ以降79レースが格上げされ、うち7レースがG1に昇格したと述べている。

 同書簡でARFは、RAから提供された情報に基づき、「以下の7レースはAPC基本規則を満たしていないため、格下げ対象となる可能性がある」と指摘した。

 G1:ATCシドニーC、ATCザ・メトロポリタン、WATCレールウェイS

 G2:アデレードC、WATCダービー、MRCハーバートパワーS

 G3:ローンセストンC

 ARFはさらに、格下げの可能性について警告書の対象とすべき10レースを追加した。これにはG1のヴィクトリアダービー、クイーンズランドダービー、SAJCオーストラリアンオークス、WATCウィンターボトムSが含まれる。またG2では、ブリスベンCとコーフィールド競馬場で開催されるオータムクラシックも含まれている。

 ARFは水曜日の声明で次のように発表した。「ARFは、現在の特異な状況に鑑み、当面の間、APCがオーストラリアにおける全てのブラックタイプ競走の格付けに関する決定を行うことを通知します」

 「これは、APCが今後オーストラリアにおけるG1、G2、G3およびリステッド全競走について、格付けの変更(格上げおよび格下げを含む)の決定責任を負うことを意味します」

 「APCによる決定が行われた際は、国際競馬統括機関連盟(IFHA)の国際格付番組企画諮問委員会(IRPAC)に報告され、次いで、重要な決定事項が国際サラブレッド競売人協会(SITA)に報告された後、ブルーブックに掲載されます。IRPACおよびSITAに対しては、既に今般の決定について通知しています」。

 声明では更に、次のように付言している。「APCはオーストラリアにおけるブラックタイプ競走の決定プロセスを開始し、2026/27年のオーストラリア競馬シーズン開幕前にあらゆる格付け変更を確定することとします」

 「本措置は、オーストラリアにおいて2017/18年シーズン以来、適切に機能するブラックタイプ管理システムが存在しない状況下で採用されたものです。ARFはこの問題の解決に向け極めて忍耐強く対応し、多大な支援を提供してきましたが、今こそ行動を起こす必要があると判断しました」

 「ARFの権限下でAPCが実施する本措置は、あくまで一時的な措置として意図されたものです」。

 ARFは、ブルーブックにおけるパートI国であるオーストラリアが「近い将来、APCの基本規則に準拠して機能するブラックタイプ管理システムを確立し、APCによるシステム管理を終了させることを強く希望する」とした一方、「そのような解決がなされない場合は、取るべき他の措置を検討する必要がある」と述べた。

 最悪の場合、こうした措置によってオーストラリアがブルーブックのパートII国に降格となる可能性もある。この動きは、12月12日(金)に香港で開催されたARF会議においてオーストラリアのブラックタイプ問題が議論されたことを受けたものだ。

 ANZニュースが入手した10月のRA宛て書簡で、ARFはこの措置に踏み切ることを警告していた。同書簡で「APC基本規則に準拠して機能するブラックタイプ委員会の設置要請が満たされない場合」、APCは「効果的なブラックタイプ競走の格付け管理を回復する」ため、RAからの格付け申請を一切とりやめ、APC自らオーストラリアでの競走格付けについて決定を下す可能性がある、と記載されている。

 また、こうした決定には「APCの過半数の承認が必要であり、RAは投票権を持たない」と記されていた。

 水曜日のARF声明では、APCがオーストラリアのパターン競走における格付けを管理下に置くにあたり、このプロセスが適用されるかどうかは明確にされていなかった。

 10月の書簡でARFは、APCの基本規則において、G2以下のステータスに関する決定は各国機関が行うと規定されているものの、「例外的な状況」においてはその限りでないと指摘している。そしてARFは、自ら提示した一連の懸念事項について、その「必要な例外的な状況に該当する」との認識を示した。

 オーストラリア競馬業界が最も憂慮すべきは、香港を拠点とする ARF のアンドリュー・ハーディング事務局長が署名したこの書簡の結論部分である。「上記の懸念事項を解消するブラックタイプ制度を導入するまでの間、オーストラリアをパート I 国から降格させることについて、APCがIRPACにこれを承認するように勧告したり、さらにSITAにこれを批准するように勧告したりすべきではないという理由を、RA が提示することを求められる可能性があります」

 「ARF は、オーストラリアがブルーブックのパート I国から格下げされることは、RA だけでなく、オーストラリア、ARF 地域、そしておそらくはそれ以上の地域における競馬および生産界全体に非常に重大な影響をもたらすと認識しています」。

 このようなシナリオが現実となれば、オーストラリアはマレーシア、インド、パナマ、プエルトリコなどの地域と同等の扱いとなる。つまり、オーストラリアの全てのブラックタイプ競走が、国際的には単なるリステッド競走として認識されることになる。

 数多くの影響の中でも、業界関係者は、海外投資家がオーストラリア競馬への信頼を失うことによって同国生産界の価値が低下し、さらには北半球の種馬場が同国へのシャトル種牡馬の供用を控えるようになることを懸念している。

 ロリソン会長は水曜、ARFの決定に対し、RAはこの動きを十分に理解しており、当面の間はAPCと協力していくとともに、「オーストラリア・ブラックタイプ諮問グループ」を任命したいとの意向を表明した。

 「RAは、ARFが取った立場を十分に理解しています。この措置はIFHAからも全面的に支持されたものであり、APCの基本規則に準拠した承認済みのブラックタイプ競走のガイドラインや機能的な管理体制も存在しないために生じているオーストラリアでのブラックタイプ競走における格付け管理の欠如によるものです」

 「RAは、ARFによるこの重要な決定を非常に深刻に受け止めており、この期間中APCとの協力を約束します。APCの基本規則に準拠しAPCが格付けを決定する期間は特に定められていませんが、RAによるAPC基本規則に準拠したガイドラインの採用を優先事項として進めるというのがARFの立場であり、これを怠った場合には他の措置が取られる可能性があることを認識しています」

 「RAは、この問題の進展に伴い、適切なステークホルダーのグループから選出されたメンバーで構成されるオーストラリア・ブラックタイプ諮問グループの設置を引き続き希望しています」。

 RVは、RAと協力して危機を解決する決意を表明した。「オーストラリアのパターン競走およびブラックタイプ競走の格付け管理をオーストラリアに取り戻すための解決策について、RAとの協力を継続して取り組んでいきます」と声明で述べた。

 「我々は、オーストラリア競馬のステークホルダー--このスポーツに投資し支える人々--が、業界にとって実行可能な長期的な解決策の策定と実現に真摯に関与すべきだという見解を保持しています」

 「我々は、単なる諮問的な役割以上の権限を持ちブラックタイプ競走の基準と意思決定を監督する、適切な業界代表者で構成されるパターン委員会の設置をRAが検討すべきだと考えています」。

By Trevor Marshallsea

[Racing Post 2025年12月17日
「Asian Racing Federation seizes control of Australia's black type Pattern 'given exceptional circumstances']


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