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海外競馬情報
2025年10月09日  - No.38 - 2

競馬は閉鎖的な体質から脱却しなければいけない(イギリス)【その他】


 クリケットの「ザ・ハンドレッド(訳注:2021年に創設された100球制という新しいルール構成を用いたクリケットの大会)」を牽引した人物の一人によれば、競馬界は新規・若年層の顧客獲得に向け、これまでよりもはるかに抜本的なアプローチを取る覚悟が必要だという。

 同大会の商業戦略ディレクターを務めたロブ・カルダー氏は、10月2日(木)にヨーク競馬場で開催された競馬財団会議(Racing Foundation Conference)において、競馬は外部者からすると「閉鎖的な世界」に感じられることが多すぎると指摘した。そして彼は、昔ながらの考え方を持つ人々からの反対にもかかわらず、変革を追求したことで大きな利益をもたらした「ザ・ハンドレッド」と比較した。

 カルダー氏はプレミアシップ・ラグビー(訳注:英国内の15人制ラグビーにおけるクラブ最高峰のプロリーグ)の最高事業成長責任者も兼任している。同氏はリーグの名称を「ザ・プレム」としてブランドの再構築を行ったことで、わずか12ヶ月で100万人の若年層の新規ファンを獲得した経緯についても説明した。

 「ザ・ハンドレッド創設により、クリケットは根本から見直す大改革の過程を経験しました。昔ながらのやり方を守る人々は我々がやったことを嫌い、今でもザ・ハンドレッドを嫌っています。しかし、業界全体の市場規模は拡大し、テストクリケット(訳注:クリケットの試合形式の中で最も伝統的で格式が高い試合形式。投球数に制限はない)は盛況で、前回のジ・アッシズ(訳注:イングランドとオーストラリアとの間で行われるテストマッチシリーズ。テストクリケット方式で行われる)のチケットはこれまでにないほど早期に完売しました」。

 カルダー氏は競馬界に対し、従来の慣習に挑んでみるように強く促した。そして、「私たちは、神聖なものだと思っている全ての事柄を見つめ直し、もしそれを根本からひっくり返し、変えて、再構築したらどうなるだろうかと問わなければなりません。あなたは「プロジェクト・ビーコン」を見て次は何ができるかを考えるべきで、引き出しの中で埃をかぶらせておくことがあってはならないのです」と付け加えた。

 英国競馬統括機構(BHA)による「プロジェクト・ビーコン」は、競馬界でこれまで実施された中で最も詳細な顧客調査であった。

 カルダー氏はまた、競馬は、その独自のルール、伝統、そして専門用語によって、新規参入者を遠ざける危険性があるとし次のように述べた。

 「競馬は閉鎖的な世界だと感じます。専門用語が分からないし、競馬場でどこに(立って)いればいいのか分からず緊張しますし、なぜ一部の人が特定のエリアに入ることを許可されているのか不思議に思います。競馬を、その独自の複雑さに囚われてしまわないようにしてほしいのです」。

 UEFA(欧州サッカー連盟)、FIFA(国際サッカー連盟)、そしてラグビーフットボール連合といった団体のアドバイザーを務めるスチュアート・ロウソン氏は、若い顧客を惹きつける最善の手段は騎手のプロモーションであると、その会議で述べた。

 「スポーツ業界で25年働いてきましたが、騎手3人の名前を挙げるのも苦労します。競馬界は騎手をスターに育てる計画が必要です。なぜならそれが将来につながるからです。彼らを指導し、自分自身を売り込む方法を教えれば、新しい人々に競馬をアピールし、スポンサーを獲得することができるでしょう」

 「若年層顧客の獲得に向けた戦略は、成果が現れるまでに非常に時間がかかります。しかし、それを実行しなければ、競馬は崖から転げ落ちるように急激に衰退するでしょう。もし若者に訴求しようとするなら、コミュニティを育成することです。そしてコミュニティとは双方向の関係であるべきです」

 「ほとんどの子どもは9歳になるまでに初めて自分の携帯電話を持つため、競馬はそれまでに彼らの日常の一部になっていなければなりません。3歳から17歳の約90%がYouTubeを利用しており、競馬にとって、これこそが若年層に働きかけるための明白な入り口です」。

 新しいアイデアに対する競馬界内部からの抵抗について尋ねられた際、ロウソン氏は次のように答えた。「もしあなたがコースに出てハロン棒をメートル表記に変えたら、保守的な競馬愛好者は猛反対するかもしれませんが、彼らが競馬を愛している以上、そのことが原因で興味を失ってしまうことはないでしょう。競馬を根本的に変えてしまうわけではないのですから」。

 競馬財団は今回の会議の中心に若者を据えている。最高経営責任者のタンジー・チャリス氏は、競馬の長期的な健全性は、いかに効果的に次世代と繋がれるかにかかっていると強調した。

By Oliver Barnard

[Racing Post 2025年10月2日「Racing told to be radical and move away from 'closed shop' or risk alienating next generation」]


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