競馬愛好家の著名人が新規ファン獲得の施策を語る(アメリカ)【その他】
アメリカ競馬のファンで著名人のグリフィン・ジョンソン氏とスティーブ・コナーキー氏が、新たなファンを獲得するための方法について自身の取り組みを交えながら、誰にでも実践できる様々なアイディアを提案した。
7月31日にニューヨーク州サラトガスプリングスで行われた米国ジョッキークラブ(The Jockey Club)主催の競馬に関するラウンドテーブルで、インフルエンサーのジョンソン氏は、ソーシャルメディアを使用し潜在的なファンを惹きつけるようなストーリーを発信することを訴えた。NBCニュースのチーフデータアナリストであるコナーキー氏は、実際に競馬場に人を連れていって競馬への情熱を共有する方法が依然として効果的なきっかけづくりであるとした。
両氏ともに、競馬の強みは関係者やファンの情熱であるとして、競馬を愛するすべての人に自身の情熱を他の人と共有してほしいと呼びかけた。
アメリカズベストレーシング社(America's Best Racing)の企画「スターダムに賭ける(A Stake in Stardom)」の一環で、ジョンソン氏はウェストポイントサラブレッズを通じて馬主体験を味わった。彼は、アーカンソーダービー(G1)勝ち馬でケンタッキーダービー(G1)にも出走したサンドマンの少数持分馬主の一人として名を連ね、これによりかねてからの馬への情熱をさらに深めることとなった。レースまでの数週間、動画やSNSでの発信を通して1,400万人のフォロワーに「王様のスポーツ」である競馬の舞台裏を紹介した。
ジョンソン氏の発信は2億人以上に届いた。チャーチルダウンズ社上席副社長兼ゼネラルマネージャーのマイク・ジーグラー氏は、この発信がケンタッキーダービーの発売金最高記録を樹立した要因の一つであるとした。
ジョンソン氏は、競馬には新たなファンにとって敷居が高いところがあると感じており、だからこそフォロワーが彼の体験を交えた競馬に関する発信を温かく受け入れたのだろうと考えている。同氏は、自身が競馬の専門用語などの間違いをしたことを認めつつも、フォロワーが競馬はとても楽しいもので、すぐにすべてを理解できなくても大丈夫だという一番大切な点を理解してくれた、と考えている。
「とても伝統的で、いわば『一部の愛好家だけの閉鎖的なクラブ』と思われている競馬に、これだけの全く新しい層の新たなファンが誕生したのです」とジョンソン氏は話す。「競馬は、家族に関係者がいたり、友人や家族に誘われたりしない限りは、なかなか入りづらい世界です」
「自分の周りに競馬関係者はいませんでした。子どものころに競馬場に行ったこともありませんでした。今回、本当に初めて競馬に関わることになったのです。皆さんが注目してくれたのは、競馬のことを本当に何も知らない人が出てきたぞと感じたからでしょう。はっきりと言ってしまいますが、まだまだ勉強中ですし、失敗もたくさんしました。言い訳をせずに受け止めています」と述べた。「競馬に初めて関わる人はこう思ってくれるはずです。『ああ、グリフィンと一緒なら大丈夫かな。グリフィンだっていつも正しいことを言っているわけではないからね』。それがこの企画の素晴らしいところですよね。毎朝5時半に舞台裏の厩舎エリアを紹介することから始めて、マーク・キャシー厩舎とサンドマンを披露します。そうして視聴者は馬主の気分を味わうことができるのです」。
これを機に、ジョンソン氏は同様の活動を行う契約をブリーダーズカップ協会(Breeders' Cup Ltd.)、キーンランド協会(Keeneland Association, Inc.)およびニューヨーク競馬協会(New York Racing Association)と結んだ。同氏はZ世代と繋がろうとする競馬界の努力を称えつつも、競馬関係者やファンに対し、競馬への愛をSNSで発信するように呼びかけた。
「多くの大物が一堂に会し、私たちのような若者の意見に対して真剣に耳を傾けてくれる業界は、競馬界のほかにはありません。この姿勢は、今の新たなファン層やホースマンとしての今日の自分たちのあり方を忠実に表していると考えます」と同氏は言う。「競馬を愛する人たちから本当にたくさんの話を聞かせてもらいました。その話を受け取って、今の若い子たちに伝えていけばいいだけなのです」。
ジョンソン氏は、サラブレッドの安全性の向上や引退後のキャリア選択肢を広げるといった競馬界の取り組みは適切であり、特に競馬が新規ファンに受け入れられていくという点において効果的だと述べた。同氏は、ソーシャルメディアはこうした取り組みについて伝えるだけでなく、競馬に対する愛や馬への愛情を語る場を提供してくれるのだと述べた。
「皆さんに知っておいてほしいのは、ソーシャルメディアは単なるツールに過ぎないということです。マーケティングができるツールです。それは若い世代がコンテンツを吸収する方法そのものなのです」と語った。さらに、こういった場でストーリーを語ることこそが、関心を惹きつけるのだと付け加えた。「それがどのような体験であれ、視聴者にその経験を追体験させることができるのです」。
NBCニュースで選挙の「情勢」を伝え、近年はNBCスポーツでケンタッキーダービーをはじめとしたレースの開催に先立って統計学的分析を披露しているコナーキー氏は、競馬場に人を連れてくることの大切さについて語った。既存のファンが、初めて来場した人たちに競馬の素晴らしさを知ってもらうための手助けができるのだ。
「ここにいる皆さんには言うまでもありませんが、この国には、今なお多くのファンを集め、活気にあふれ、伝統が深く根付き、誰もが最高の1日を過ごせる、そんな競馬場がたくさんあるのです」とコナーキー氏は述べた。「私はニューヨーク在住ですが、よく人にこう勧めています。『家族でモンマスパーク競馬場に行ってみなよ。ピクニックをして、子どもに20ドル渡して好きな馬に賭けさせてごらん。パドックで馬を見るのも忘れずにね』。冬になると、毎年、寒い北部から暖かさを求めてメキシコ湾岸に南下する友人たちを知っているので、いつもこう勧めています。『車でタンパベイダウンズ競馬場まで足を延ばして、屋外の席を確保してレースを観戦し、暖かい空気を満喫して、青々とした芝をその目に焼き付けるんだよ』と。そして、実感するんです。『なんてことだ。1月の半ばだというのに、こんなにも素晴らしい場所にいるんだ』と」
「訪ねたことがある競馬場や行ってみたい競馬場も宣伝していますよ。オークローンパーク競馬場、ボクシングデーのサンタアニタパーク競馬場や夏開催のデルマー競馬場などです。小規模の競馬場もお勧めしています。土曜日の夜にフェアマウントパーク競馬場へ行ってみたらとかね。とにかく競馬場へ足を運んでその目で見てほしい、といつも勧めているんです。それが競馬にとって最高の宣伝になると思うからです。競馬について興味がなく、全くの誤解をしているだろう人を競馬場に連れて行ってください。そして、帰るときには言わせるのです。『本当に素晴らしい経験だった』ってね」。
By Frank Angst
[bloodhorse.com 7月31日「Johnson, Kornacki on Facilitating Love of Horse Racing」]