女性として初めてニーナ・バルトロメイ騎手がドイツダービーを制覇 (ドイツ)【その他】
女性騎手として初めてドイツダービー(G1)を優勝した翌朝、ニーナ・バルトロメイ騎手は、自身とホーホケーニヒ(単勝19倍)が成し遂げた偉業の大きさをまだ完全に理解できていないと明かした。
決勝審判によって自らの騎乗馬がカール・バーク調教師の管理馬コンバージェントを短アタマ差で破り勝馬と宣言された直後、彼女は空を指差し、故人となった父のヴェルナー・バルトロメイ元調教師にキスを送った。その後に続いた涙と祝福には、信じられないという感情が満ちていた。
7月7日(月)ハンブルク競馬場において全レースの騎乗を控えていたバルトロメイ騎手は、レーシングポスト紙に対し「昨夜は眠れず、3時間ほどしか寝られなかったと思います。目が覚めても、まだ何が起こったのか理解できませんでした」と語った。
ダービーの主要なトライアル2競走において2度とも2着となっていたホーホケーニヒは、向こう正面では後方から3頭目につけ、内ラチ沿いを走っていた。しかし、残り400メートルでバルトロメイ騎手はホーホケーニヒを外に出し、驚異的なスピードでコンバージェントを差し切った。
バルトロメイ騎手は次のように振り返った。「ホーホケーニヒはいつも落ち着いていますが、昨日は特に冷静でプロフェッショナルでした。スタート前も上手くいきそうな予感を与えてくれました。スタートは計画通りに行かなかったので、状況に任せて対応しなければなりませんでしたが、それでも彼は最も優れていることを示してくれました」
「私が促すと彼は素晴らしい反応を見せてくれ、それは本当に驚くべき感覚でした。まるでホーホケーニヒが『今こそ私たちの勝負どころだよ』と私に伝えてくれているかのようでした。本当に素晴らしかったです」。
テレビのディレクターは、史上初のドイツダービー女性騎手誕生を確信しているようだったが、バルトロメイ騎手自身は、まだ信じられない様子だった。
「私たちが勝ったかどうかは分かりませんでした。一生懸命走って勝てたかなと思いましたが、結果は分かりませんでした。マーティン・セイドル騎手が最初に私を祝福してくれたのですが、彼は私が勝ったことを確信していました。しかし、コンバージェントの騎手は、彼が勝ったと思っていたので、私は確信が持てませんでした」
「折り返してキャンターで戻ってきたとき、観客が叫んでいるのが聞こえ、そのときに私たちが勝ったに違いないと認識しました。信じられませんでしたし、まず私は完全なショック状態に陥り、何が起こったのか想像することさえできませんでした。ショックが収まってから、さまざまな感情が押し寄せてきました」。
アマチュア騎手として急速に好成績を上げてきたバルトロメイ騎手は、ドイツダービーの直前にプロに転向し見習い騎手になるという賢明な決断を下した。プロのジョッキーになったことで39万ユーロ(約6,630万円)の優勝賞金の一部を手にすることとなった。
バルトロメイ騎手は、「4週間前にプロに転向し見習い騎手になりました。ドイツダービー前にステータスを変更しました。本当に良いタイミングでした」と述べた。
ホーホケーニヒの勝利は、ミュールハイムを拠点とするヤスミン・アルメンレーダー調教師にとって、今年2つ目のクラシック競走の制覇となった。彼女はこれからこの牡馬の将来のキャリアを計画する幸せな任務を担っている。レース後に開催された控えめな祝賀会においてもこの件は間違いなく話題に上ったであろう。
「今日も出走馬がいるので、昨夜はオーナーや生産者と食事に行っただけです。今日7月7日はニナの27歳の誕生日ですが、大騒ぎはせず落ち着いて静かにお祝いしました。今日も競馬はありますからね」とアルメンレーダー調教師は話した。
2025年の残りのホーホケーニヒのレースついて、アルメンレーダー調教師は次のように述べた。「今年はドイツに残ると思います。年明けの4歳になったら、海外遠征について検討できるでしょう。まずは休養させて、バーデン大賞(G1)に出走させる予定です。その後は様子を見て検討しますが、今年イギリスやフランスに遠征することは無いと思います」。
女性騎手の軌跡
ニーナ・バルトロメイ騎手は、女性騎手として初めてヨーロッパ・パターン競走に含まれる国のダービー競走を制した。
世界競馬史上初となる女性騎手のダービー制覇は、1971年のオランダダービー(ダインディヒト競馬場)で牝馬クレオパトラとコンビを組んで優勝したイナ・シュヴァルツカッヘル騎手によって成し遂げられた。その後1972年に、チェコスロバキアダービーでクラポムに騎乗して優勝したミラ・ヘルマンスドルフェロヴァ騎手が続いた。
シビル・フォークト騎手は、2021年にノヴェンバでドイツ1000ギニー(G2)を制し、ヨーロッパ・パターン競走のクラシック競走を優勝した最初の女性騎手となった。
2022年にはホリー・ドイル騎手がナシュワでディアヌ賞(G1)を制し、ヨーロッパ・パターン競走のG1クラシック競走で優勝した最初の女性騎手となっている。
By Scott Burton, James Stevens
(1ユーロ=約170円)
[Racing Post 2025年7月7日「'All the emotions came crashing in' - a birthday to remember as Nina Baltromei reflects on being first woman to win the German Derby」、Racing Post 2025年7月6日「Watch: agony for Karl Burke but ecstasy for jubilant female amateur jockey in historic German Derby」]