豪州リーディングサイアーに4度輝いた種牡馬スニッツェルが22歳で死亡(オーストラリア)【その他】
これまでにG1馬を23頭、ステークス勝ち馬を160頭輩出し、豪州リーディングサイアーに4度輝いたスニッツェル(牡22歳)は、肝機能の低下をはじめとした加齢に伴う体調不良を呈して、6月11日に安楽死の処置が施された。
2017年~2020年シーズンにわたってリーディングサイアーの座に就いたスニッツェルは、様々なタイプのチャンピオンホースを12頭送り出し、トラピーズアーティスト(Trapeze Artist)、レディシェナンドー(Lady Shenandoah)、レッドゼル(Redzel)やシンゾー(Shinzo)など優秀な競走馬を輩出した。父のリダウツチョイス(Redoute's Choice)やフライングスパー(Flying Spur)、ノットアシングルダウト(Not A Single Doubt)といった他の名馬とともにアローフィールドスタッドに埋葬された。
同スタッドは、オーナーのジョン・メッサーラ氏が「どの観点からも、まさにドリームホース」と表現したスニッツェルの死を惜しみ、現在、後継種牡馬として供用する同馬の産駒を探している。
「牧場にとどまらず、この業界全体にとって非常に大きな喪失です」とメッサーラ氏は語った。「スニッツェルの代わりを見つけるのは難しいでしょう」
「牧場にとって非常に悲しい日になってしまいました。長い間、スニッツェルは健康そのものでした。肝臓に病気を抱えていたのは最後の数ヵ月間だけでした。ここ数週間で悪化の一途をたどり、ここ数日の間に、もう回復することはないだろうと察しました」。
アローフィールドに生前から偉業を称える銅像が建立されていたスニッツェルは、豪州のステークス勝ち馬を146頭輩出してこの世を去った。これは出走した産駒の10.4%にあたる。今年、マルフーナ(Marhoona)が産駒として3頭目のゴールデンスリッパーS(G1)勝ち馬となったことから、スニッツェルはここ3年で2度目、通算5度目の2歳リーディングサイアーのタイトルをほぼ手中に収めている。
デインヒル(Danehill)を豪州に導入し、リダウツチョイスを生涯、種牡馬として供用したメッサーラ氏は、スニッツェルが自身の直系であるこの2頭から特に優れた資質を「見事に」受け継いでいると話した。
「スニッツェルはとても多才な馬で素晴らしい気質をしていましたが、ほとんどの産駒にそれは継承されていると思います」と話した。「リダウツチョイス、デインヒルから続く血統には、素晴らしい気質が受け継がれており、スニッツェルはその代表格でした。三代にわたって供用できたことは、大きな誇りです」
「スニッツェルは受胎率も高く、気質も素晴らしくて、賢く手のかからない馬でした。しかし、特に優れていた点として記憶に残っていくのは、種牡馬としての多才性ではないでしょうか。産駒は短距離からマイルまでこなし、さらに距離を伸ばせる馬もいました。道悪も良馬場もこなし、2歳時から古馬になっても性別を問わず活躍しました。トップクラスの馬を何頭も送り出し、そのうち12頭がチャンピオンまで上り詰めました」
「非常に優れた競走馬を本当に数多く輩出する種牡馬でした。計算したところ、そのキャリアを通じて19日毎にステークス勝ち馬を輩出していたのです。結構、いい数字ですよね」。
スニッツェルへの信頼を物語るように、今年の1歳産駒の平均取引価格はキャリアハイの66万5,000豪ドル(約6,251万円)を記録した。これまでの最高記録であった2022年の53万6,000豪ドル(約5,038万円)を更新したのだ。
産駒の魅力や競走成績もさることながら、スニッツェルの気質の良さも際立っていた。
「スニッツェルは、牧場のみんなにとても愛されていました。あんなに優しい動物はいません」とメッサーラ氏は語った。
「種付け場では、いつも仕事に熱心で、受胎もとてもよく、完全たる紳士でした。非の打ち所のない完璧な存在で、どの観点からも、まさにドリームホースでした」。
スニッツェルは、1,631頭の出走馬から1,281頭の勝ち馬を出して、78.54%という並外れた勝馬率を記録し旅立っていった。同馬が遺した功績は後世に語り継がれるだろう。現在、豪州のブルードメアサイアーランキングでもキャリアハイの3位につけている。
豪州では、産駒29頭が種牡馬として供用されており、なかでも特に成功しているのがロシアンレヴォリューション(Russian Revolution)、トラピーズアーティストやシェイマスアウォード(Shamus Award)だ。クールモアでは、まもなく2シーズン目を迎えるゴールデンスリッパー(G1)勝ち馬のシンゾーのほかに、クールモアスタッドステークス(G1)勝ち馬のスイッツァランド(Switzerland)を今シーズンから導入する。
6頭いるアローフィールドの種牡馬にスニッツェル産駒がいないのは意外だが、メッサーラ氏は今後、状況が変わっていくだろうとの見通しを示した。
フランソワ・ノーデ氏が生産したスニッツェルは、リステッド競走を2勝したスニペッツラス(Snippet's Lass)の2番仔だ。ヤラマンパークスタッドが2004年のマジックミリオンズ社ゴールドコーストに上場し、ジェラルド・ライアン調教師が、のちに不祥事を起こす馬主のダミオン・フラワー氏の代理で購入した。同馬は競走馬としても最初から輝かしい成績を収めた。ウォリックファーム競馬場でデビュー戦のブリーダーズプレート(L)を3馬身差で飾り、3戦目にドゥームベン競馬場で現在のB.J.マクラクランSにあたるリステッドレースを6馬身差で制するなど、デビューから3連勝した。
3歳春のハイライトは、2005年にランドウィック競馬場で行われたアップアンドカミングS(G3)での勝利だった。種牡馬のキャリアが約束されたのは、3歳秋にオークリープレート(G1)で逃げ切り勝ちを決めたときだった。次戦のニューマーケットH(G1)では、テイクオーバーターゲット(Takeover Target)の2着に入っている。
6月7日に産駒のトランスアトランティック(Transatlantic)がイーグルファーム競馬場のスペアチーフH(L)を勝って、生前最後にブラックタイプ競走勝ち馬数が160頭に到達した。そのトランスアトランティックはストラドブロークH(G1 6月14日)で補欠2番手に控えており、スニッツェルは、産駒によるG1制覇の栄光をまたひとつ手にする可能性がある。
By Trevor Marshallsea/ANZ Bloodstock News
(1豪ドル=約94円)
[bloodhorse.com 2025年6月11日「Multiple Leading Australian Stallion Snitzel Dies at 22」]