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2025年06月12日  - No.22 - 1

アレン卿のBHA会長就任が土壇場で延期される(イギリス)【その他】


 2024年11月にチャールズ・アレン卿が英国競馬統括機関(BHA)の会長に就任することが発表されて以来、彼のことを知る人々の間では、なんでまた彼はその役職に就きたいのだろうという疑問の声があがっていた。そして不幸なことに、現在、アレン卿自身が同じ疑問を抱えている可能性がある。

 過去の英国競馬の混乱と比べても、今回の混乱は非常に嘆かわしいものだ。おそらくBHAの広報部門は競馬の状況に関してもっと強い言葉を使っていたが、少しでもよく見せるような表現を探すよう指示されたのだろう。

 会長として選任された人物が就任前に会長職を辞退するかもしれないというのは大いに問題である。この事態が昨年11月ではなく、今起きているのは、アレン卿が競馬の熱心なファンではなかったということも一因だろう。もしそうであったなら、競馬のカバナンス構造が競馬スポーツの長期的利益よりも自身や組織の短期的利益を優先する人々によって歪められており、そのことに大いに悩まされることになると気づいたはずだ。

 とはいえ、求人広告が最初に発表された際、候補者は「自身が率いるスポーツを愛する者」であることが明示されていた。「候補者は、業界内の複雑な利害関係者の環境を考慮すると、競馬に関する積極的な知識と情熱を携えている必要がある」との文言が広告には含まれていた。アレン卿がもう気づいたように、その利害関係者の環境を「複雑」と表現するのは、むしろ控えめ過ぎる表現だったといえる。

 アレン卿の選出には、当然ながら多くの利害関係者が関与していた。競馬場協会(RCA)ウィルフ・ウォルシュ会長と馬主協会(ROA)チャーリー・パーカー会長がBHAの選考委員会に入っており、加えてBHAのラジ・パーカー独立理事とデビッド・ジョーンズ暫定会長も含まれている。

 選考委員会は、当初、会長には競馬に対する深い知識と情熱が必要だと考えていたが、明らかにその考えは誤りだったという見解にいたったのであろう。アレン卿は、そのどちらも持ち合わせていると主張しておらず、競馬への生涯にわたる愛好心からこの役職を引き受けたわけではない。彼は既に貴族院議員の地位にあるため、財政的な補償を必要としていないし、国家からの勲章を欲しているわけでもない。

 したがって、彼は新たな挑戦に意欲を燃やしており、本当にその役目を果たしたいと考えているとしか結論付けられない。しかし、彼はまだその役目を果たしたいと望んでいるのだろうか?もしそうなら、いつから始める予定なのだろうか?

 労働党の貴族院議員であるアレン卿が6ヶ月前に現職に任命された際、6月1日に就任すると伝えられた。先週のBHAの声明では、当初の予定だった就任日を6月2日に延期することが発表されたが、状況を考えると24時間の延期は何ら問題を解決していない。その声明では、アレン卿が「競馬に関する自身のビジョンを明確にするため、利害関係者と継続的に会合を重ねたい」として、任期開始を無期限延期する事も明らかになった。なぜ彼がBHA会長として正式に就任しながらその会合を持つことができないのかは説明されていない。

 明らかな結論としては、ポーカーゲームが展開されているということだ。

 アレン卿が英国競馬の運営方法に深刻な懸念を抱いていることは、以前から知られていた。また彼は、業界の主要人物との数多くの会合のなかで、利害関係者が彼に協力する用意がない場合、職務から退く意向を繰り返し表明してきたことも知られている。

 事態をさらに複雑にしているのは、利害関係者の間で一致が見られない点である。(馬主、調教師、生産者、騎手、厩務員が参加する組織)サラブレッドグループ(TG)ジュリアン・リッチモンド-ワトソン会長は6月1日(日)のレーシングポスト紙でアレン卿宛ての公開書簡を掲載し、BHAにさらなる権限を付与し、「賞金、日程、番組に関する決定を下すことができる自由で独立した組織」へと変革すべきだと主張した。リッチモンド-ワトソン氏はまた、「既得権益や短期的な利益に左右される勢力」の影響を嘆いた。

 彼の改革案には一定の合理性があったものの、TG内のすべてのメンバーが全面的に賛同しているとは限らない。正しいかどうかはさておき、多くの関係者は現在ROAがTGよりもRCAとの連携を重視していると見なしている。一方、これも正しいかどうかはさておき、主要な競馬場とつながりのある一部の人々は、RCAがアリーナレーシング社の立場や利益と過度に一致していると主張している。

 要するに、一部の利害関係者はアレン卿の新たなガバナンス構造のビジョンを支持しているが、他の者は現状維持を望んでいるということだ。また、英国競馬が政府との交渉において、アフォーダビリティチェック(馬券購入者の経済性チェック)の検証、賭事税制度、賦課金改革に関して説得力のある主張が必要なこの時期に、自らが任命したBHA会長にその職務は時間と労力に値するものであると説明できなかったことによって、深刻な信頼失墜を招いたという事だ。

 当面は、近い将来に数多くの課題に直面するこの業界が、永久的なBHA会長とCEOを獲得することを待つしかない。しかし、アレン卿が質問を続ける限り、私たちも質問を続けることができる。

 私たちは、なぜこの状況に至ったのかを問うことができる。BHA会長の選任過程において、選考委員会が一部の有力な候補者を排除し、意外な人物を優先した結果、その人物が後に再考する事態に至った点について疑問を呈することができる。

 また、この事態がBHA会長職というブランドにどれほどの損害を与えたかも問うことができる。そして、もしアレン卿が「この仕事は時間と労力を費やす価値がない」と判断するなら、果たして将来のまともな候補者は異なる見解を持つだろうか?

 彼が今やらないなら、誰がやるのか?このポーカーゲームにおいて、この不快な質問がやりとりされること自体がアレン卿の立場を確実に強化するはずである。

By Lee Mottershead

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[Racing Post 2025年6月1日
「The BHA better hope Lord Allen is playing poker - because if he doesn't take the job, who on earth would」]


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