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海外競馬情報
2025年05月29日  - No.20 - 1

賞金の削減を行ったフランス競馬の今後(フランス)【開催・運営】


 5/21(水)、フランスギャロの経営陣は、賞金と奨励金を合わせて年間2,000万ユーロ(約32億円)の削減を競馬の衰退の兆しと解釈すべきではないとのメッセージを報道陣に向けて発信した。

 かつて独占事業者であったPMU(フランス場外馬券発売公社)の財政状況が悪化の一途を辿る中、フランスギャロ会長のギヨーム・ド・サンセーヌ氏は、火曜日の評議委員会において、賞金とその他の運営経費で削減の半分をそれぞれ負担する計画を提出した。

 フランスギャロは2024年に2億9,230万ユーロ(約467億6,800万円)を関係者に還元し、2025年は1,500万ユーロ(約24億円)の赤字を見込みながらも、同レベルの賞金、馬主や生産者への奨励金、輸送費補助などを支払うことを約束していた。

 しかし、PMUの業績が今年の最初の数ヶ月で予測されたレベルよりさらに落ち込んでいるため、フランスギャロは2029年までに健全な財政状況を取り戻すことを目標として計画の修正を行った。

 フランスの馬券売上は、他の主要競馬国と同様多くの逆風に直面している。しかしサンセーヌ氏は、競馬というスポーツの持続性のために設定した他の目標は正しい方向に向かっていると述べた。2024年の競馬場入場者数は240万人と前年比16%増加し、先週の日曜日にオートゥイユ競馬場で開催されたパリ大障害では12,000人以上が観戦に訪れたと述べた。

 サンセーヌ氏は次のように述べた。「PMUが競馬に還元する資金が減っているという問題だけではありません。この1年半、私たちが取り組んできた多くのプロジェクトが実を結び始めています。それはフランス国内の現役調教馬の増加にも表れています」

 「海外から多くの若いスタッフが来ていることは、ここがいかに魅力的な競馬開催地であるかを物語っていると思います。また、繁殖の面でも海外から大きな投資がなされています。先週末にオートゥイユ競馬場で開催されたパリ大障害で見られたように、競馬場を訪れる人の数も増えています」

 「いま、我々には良い追い風が吹いています。PMUの業績が後退しているとしても、競馬と大衆との関係を再構築するという点でうまくいっている戦略を放棄してはなりません」。

 平地G1レースは現在の賞金水準を維持するが、賞金とは別に上乗せされる奨励金は25%から最大33%削減され、下級レースの奨励金は4%と最も少ない削減率となる。

 サンセーヌ氏は、問題の根源は2010年のオンライン賭事市場の自由化がきっかけだったとし、それ以来300万人の馬券購入者が失われたこと(その多くはライトファン層だった)、そしてロシアのウクライナ侵攻に端を発した個人の自由に使える支出への経済的な締めつけが、馬券売上を圧迫している決定的な要因であると指摘した。

 サンセーヌ氏は次のように述べた。「この2つが重要な要因ですが、すでに申し上げたように、売上の落ち込みにもかかわらず、私たちは自分たちに課した目標に向かって邁進しなければならないと思っています」

 「PMUの業績の陰に隠れて、すべてを彼らのせいにするわけにはいかないのです。私が着任して以来心がけてきたのは、すでに実を結び始めている近代化を進めることです。レースの質を高め、これまで縮小傾向にあった出走頭数も逆転し始めています」

 「賞金額の引き下げは、その流れを脅かすことになるのでしょうか?もちろんリスクはありますが、私たちはその脅威を打ち消すために、今回の改正を構築しました。私たちは野望を諦めるつもりはありません」。

 フランスは他の競馬開催国と同じ病にかかっているのだろうか?

 年間2,000万ユーロの賞金や奨励金が削減されても、フランスは競走馬の所有、生産、調教においてヨーロッパで最も収益性の高い国であることに変わりはない。

 イギリスは2022年以降、馬券売上が約20%、インフレ調整後で約25%減少している。理想的な運営が行われているという香港や日本でも売上の減少が見られている。

 法律や税制などは国によって大きく異なり、各国が抱える問題はそれぞれだが、主要開催各国が抱える問題には共通点がある。競馬ファンや馬券購入者の高齢化が進み、他のスポーツやゲームに賭ける選択肢が増えていること、ギャンブルに対する社会やメディアの考え方が変化していること、そして物価上昇による中低所得層の財布の締め付けなどが挙げられる。

 フランスギャロ副会長のフレデリック・ランドン氏曰く、フランスの賭事市場は「厳格すぎる」とのことだが、政府承認を目指してライブベッティング(競走中にも馬券の購入を可能とする)のコンセプトが開発中であるほか、テクノロジーへの大規模な投資も行われる。

 PMUとフランス競馬全体の妨げになり始めている構造的な問題は、おそらく他に2つある。

 ひとつは、複雑な馬券の種類に執着していることである。伝統的に、1日の売上高の約20%は「5連単」(1~5着までを順番に当てる馬券)によって生み出されてきた。かつて売上の多くを占めていた難易度の高い馬券は、シンプルさを求める若年層からは敬遠されていて、それが売上減に直結している。高難易度の馬券ほど控除率が高いため、その減少は非常に大きな影響を与える。

 現在の傾向を逆転させる上での2つ目の課題は、競馬のテレビ放送やストリーミングなどのメディア露出の低下だ。

 経費を負担することで平地競走と速歩競走は、競馬専門の無料チャンネルEquidiaを通じてほとんどのフランスの家庭に届けられている。しかし、より一般的なテレビチャンネルで競馬が放映されることは、年3、4回の目玉イベントを除いてほとんどない。

 地域評議会のフィリップ・ブシャール会長が水曜日に語ったように、競馬がテレビ画面上でいかに取り上げられていないかを考えれば、フランスが現在のレベルの売上げを維持していることは奇跡である。

By Scott Burton

(1ユーロ=約160円)

[Racing Post 2025年5月21日
「'We have everything in place to succeed' - France Galop comes out fighting after announcing €20m annual cut in prize-money」]


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