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2025年05月22日  - No.19 - 2

ニューヨーク州の予算が可決され、競馬産業への支援を拡充(アメリカ)【その他】


 ニューヨーク州議会議員と州知事は、競馬場に数百万ドルの税制優遇措置を与え、ベルモントパーク競馬場に隣接するコーネル・ラフィアン馬診療所に先進的な馬の画像研究プログラムを導入するために資金を誘導するとともに、競馬の馬券購入者が的中馬券から得るべき正確な金額を手にすることを阻止していた100年来の制度を廃止する一連の措置に合意した。

 ようやく5月8日か9日に州議会議事堂で可決される見通しのニューヨーク州予算案には、ほんの数週間前から業界関係者がひそかに交渉してきた税制措置が含まれている。州のベッティング・ブレイケッジ制度(端数金の切り捨て)に不満を抱いてきた一部の馬券購入者は、何十年もの間州政府からの改善を求めてきた。

 本来4月1日の会計年度開始時点からの施行予定だった2,500億ドル(約36兆750億円)を超えるニューヨーク州予算編成の最終段階で競馬関連の条項は明らかにされた。いわゆる "歳入法案 "に含まれる競馬関連の条項は、同州の予算プロセスでは毎年そうであるように極秘に交渉され、5月8日(木)の夜、州議会で問題なく承認された。キャシー・ホークル州知事は、すべての合意事項に署名しこの法案を支持している。

パリミュチュエル方式の税率

 州議会で検討されている競馬関連法案は、ここ数週間で3つのトピックに拡大した。

 直近で浮上したのは、ニューヨーク州の競馬場に対して課せられるパリミュチュエル方式の税率を、州全体の競馬場が年間約500万ドル(約7億2,500万円)の利益をもたらす水準まで引き下げるという、ニューヨーク競馬協会(NYRA)が後押しする提案である。失われた税収を補うためにツケを払うのは、州外のADW(advance-deposit wagering, 口座開設型投票会社)である。

 1月にホークル州知事が州予算を提案した際、ニューヨーク州が競馬のパリミュチュエル方式による収入から徴収する方法について、控えめで歳入に影響を与えない形で税制を簡素化する変更が盛り込まれた。しかし4月になると、その内容はNYRAの働きかけを反映させたものに変わり、NYRAと州内競馬場に税軽減策を与えるものとなった。競馬場に対する税制優遇措置500万ドルのうち、NYRAがどれだけの恩恵を受けるかはまだ不明だが、少なくとも半分はベルモントパーク競馬場、サラトガ競馬場、アケダクト競馬場を運営するNYRAに支払われることになりそうだ。

 業界関係者によると、この税制変更により、州内競馬場と州外のADWの発売金に対する州税がより公平なものになるという。すべての税金と手数料を考慮すると、競馬場やオンラインから賭けられた州内の競馬場と比較してADWは発売金に対する税負担が依然として低い状態だが、その差は小さなものになる。

 ニューヨーク州の業界関係者によると、州内のパリミュチュエル方式による発売金の40%近くを扱う州外のADWの平均税率は0.25%で、NYRAが扱うすべての発売金の税率は1.1%であった。

 NYRAと州内の競馬場は、ニューヨーク州で取り扱う発売金に対して現行法より0.45%減の0.7%の税金を支払うことになる。

新たな高度画像診断技術

 最終的な予算案には、予想通り、ベルモントパーク競馬場近くのコーネル・ラフィアン馬診療所(コーネル大学獣医学部分院)に新たな高度画像診断プログラムを創設することが盛り込まれた。このアイデアは1年前、民主党主導の州議会で初めて浮上したが、2024年の予算協議で消滅した。民主党のホークル州知事と上院の同僚民主党議員は、最終的な財政交渉が始まる前の今年初めにこの案を取り入れた。

 提案では、この取り組みを受け入れたNYRAに対し、馬診療所の高度画像診断機器に200万ドル(約2億9,000万円)を投資するよう求めている。ニューヨーク州は、州外ADWに対する増税により今後3年間で約1,800万ドル(約26億1,000万円)の税収増を見込んでおり、それを運営資金に充てる考えだ。

 ホークル政権は1月、"サラブレッド競馬における故障と闘う"ための手段としてこの取り組みを支持すると述べた。NYRAは以前からこの取り組みへの支持を表明しており、このプログラムは「競走馬の安全性を高め、サラブレッド競馬の科学的研究を向上させる」ための「最新の高度画像診断技術」へのアクセスを拡大すると述べている。支持者によれば、この取り組みは他の競馬統括団体で採用されており、馬を衰弱させたり、その生命を脅かしたりするような健康問題を、獣医師が早期に発見することに役立つという。

 最後に予算案には以下の研究をコーネル・ラフィアン馬診療所の施設で行うことが組み込まれた。

・跛行の有無にかかわらずサラブレッド競走馬の球節部の骨折と骨折前病態の事例の特定

・「サラブレッド競走馬の立位CT、ポジトロン放射断層撮影(PET)、磁気共鳴画像診断(MRI)の感度と特異性をデジタルX線写真と比較する」研究

 このプログラムは3年間の研究プロジェクトで、コーネル大学獣医学部とニューヨーク州賭事委員会の責任者との合意に基づくものである。研究内容には、サラブレッド競走馬における致死性筋骨格系損傷の危険因子評価方法を改良する試みも含まれる。研究内容の最新情報は、毎年12月1日までに州知事と州議会(上院・下院)の指導者に提出され、3年間の研究期間終了後には包括的な最終報告書が提出される。3年経った後、このプログラムがどうなるかについては、予算案では触れられていない。

 このプログラムによるスクリーニング(選別検査)は、「可能な限り」ベルモントパークとサラトガの両競馬場で実施され、研究プログラムに管理馬を登録した競馬関係者は、検査と高度な画像診断を無料で受けることができる。プログラム非登録馬もこの施設を利用することが可能で、馬主には検査と画像診断の実費が請求される。しかし、間もなく施行される法律では、コーネル・ラフィアン馬診療所はプログラム非登録馬のスクリーニング結果を分析する義務は負わないとしている。

 この措置によると、NYRAは9月25日までに、「競走馬の健康と安全をこれまで以上に確保する」ために、200万ドル(約2億9,000万円)を支払う必要があり、馬診療所での新プログラムのための設備購入にのみ充当される。

 コーネル・ラフィアン馬診療所の研究プログラムとニューヨーク州内の競馬場に対する減税措置の両方を補填するため、州外のADWはニューヨーク州に対する納税義務が全体で1.45%増加することになる。

 競馬産業の様々な部門と最終的な条件交渉を行ったジョセフ・アダボ上院議員(上院競馬・賭事・ゲーミング委員会委員長)は、ニューヨーク州内の競馬場と、ベルモントパーク競馬場の隣に設置されるスクリーニングおよび高度画像診断プログラムの両方を支援する方法として、ADWに対する増税を支持している。

 アダボ氏は税制改正について次のように述べた。「予算は生き物です。すべては善意から始まり、上手くいけば素晴らしいですし、上手くいかなければ修正しなければなりません」。

 税制優遇措置で州内競馬場を支援することについて、アダボ氏は、雇用と経済への波及的効果について競馬場施設の重要性を指摘した。上院が5月8日(木)の夜か9日(金)の朝にかけて最終予算案をまとめる会合に入る前の木曜朝、クイーンズ地区の民主党議員である彼は次のように語った。「正直に言いましょう。民主党であれ共和党であれ、これまでどの知事も、競馬産業に対して投資する方が投資しないよりも良いと考えて、財政が悪いときも良いときも、この産業を援助してきました」。

 アダボ氏は、高度画像診断プログラムは一歩前進であると述べ、「今日のテクノロジーを使って、競走馬にこの先に何が起こるのかを予測することができる」と話した。

 この税金の件について、サラトガ地区の民主党議員で競馬・賭事議会委員会の委員長を務めるキャリー・ワーナー下院議員の事務所にコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。

ペニー・ブレイケッジ(配当金の端数切捨て)

 さらに、今週州議会で行われた最終予算案では、ホークル州知事が今年初めに「時代遅れの概念」と表現した、競馬の賭け金に対する端数処理の残物が廃止された。この数十年来の制度では、馬券の種類と配当額に応じて、馬券購入者への払戻金が5セント単位から50セント単位で切り捨てられていた。これにより、毎年切り捨てられた何百万ドルもの額が収入として競馬場に流れていた。

 ニューヨークの新年度予算案では、ほとんどの馬券において払戻金を1セント単位で切り捨てることが義務付けられている。

 最終予算案では、競馬場内の発売金と場外発売金を区別するために、端数処理の重要な区別がなされた。場外発売金は1セント単位で端数処理しなければならないが、サラブレッド競馬およびスタンダードブレッド競馬を施行している競馬場は5セント単位で行うことができる。ただし、これらの「端数処理」から得られた収入は、州が設立した引退馬と保護馬のアフターケア基金に充てられなければならない。

 多くの州は払戻金を10セント単位で切り捨てているため、ニューヨーク州はすでにそれらの州よりも馬券購入者に有利な条件を提供していた。今回の改正でニューヨーク州は、ケンタッキー州と並んで、1セント単位で端数処理するという規則を改正した主要な競馬開催州となる。

 NYRA関係者は、この予算案が競馬に与える影響について称賛した。

 NYRAのデイビッド・オルーク会長兼最高経営責任者は、次のように述べた。「我々は、ニューヨーク州の経済と文化における競馬の重要性を反映した予算を推進してくれたホークル州知事とニューヨーク州議会に感謝します。競走馬の安全性に関する変革的な研究に資金提供し、賭事市場の経済性を近代化し、馬券購入者が長い間要求してきた還元を実現することで、2026年度予算は競馬を継続的な成功へと導くでしょう」

 「この予算で保証された取り組みに加えて、ホークル知事と州議会の立法指導者たちが掲げたビジョンを実現するために、NYRAは世界クラスの新しいベルモントパーク競馬場を建設中です。ニューヨーク競馬の未来は、かつてないほど明るいものです」。

By Tom Precious

(1ドル=約145円)

[bloodhorse.com 2025年5月8日「New York State Finalizes Encouraging Budget for Racing」]


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