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2024年02月21日  - No.2 - 6

テキサスA&M大学の馬の性発達異常の研究に助成金(アメリカ)【獣医・診療】


 テキサスA&M大学獣医学・生物医学部(VMBS)の性発達異常の研究に対し、米国農務省(USDA)から64万ドル(約9,600万円)の助成金が出される。性発達異常は一部の馬の生殖能力に影響を及ぼしている。

 この新たなプロジェクトは多様な生殖不能馬100頭を調査する。その中には生殖器に基づいた性別と染色体が一致しない馬が含まれる。

 これらの原因不明の異常を研究することで、馬の科学者と獣医師は不可欠な情報を得て、馬主に対しケアや治療に関する助言を与えることができる。

 VMBSの獣医統合生物科学部の教授であり分子細胞遺伝学研究所の所長を務めるテリエ・ロードセップ(Terje Raudsepp)博士はこう語った。

 「このプロジェクトにより、将来、性発達異常を適切に診断できるようになるでしょう。馬主に対して、馬に生殖能力があるかないかについて明確に答えられるようになるので、不妊治療に貴重な時間や人材を費やす必要がなくなります。また、ケアの質も向上するでしょう」。

研究対象となる3つのグループ

 研究対象馬は3つのグループに分けられる。各グループはそれぞれの生殖異常により生殖不能となっている。

 1つ目は生殖器官の発達が不十分な牝馬グループである。X染色体モノソミー(牝馬がX染色体を2本ではなく1本しかもたずに生まれてくる異常)の兆候であることが多い。

 ロードセップ博士は、「これは馬の性染色体異常において最も一般的なものであり、牝馬の不妊症の主な原因のひとつです。X染色体モノソミーであることが分かれば、馬主にそれを伝え、不妊治療を検討しなくてもよくなります。その牝馬はコンパニオンホースや乗馬として活躍できるかもしれませんが、繁殖牝馬になることはないでしょう」と述べた。

 しかしこれまでの染色体分析で、牝馬はX染色体モノソミーではなく、XX染色体の正常な核型(生物の染色体の数・外観)を有していることが判明している。ロードセップ博士とそのチームは、なぜこれらの牝馬は正常と思われる染色体をもっているにもかかわらず生殖管の発育が不十分なのかを解明したいと考えている。

 2つ目はX染色体もY染色体もあり正常な雄の核型をもち、さらにはY染色体性決定領域遺伝子(SRY)もしくは"雄性"遺伝子を有する牡馬グループである。しかしこれらの馬の生殖器は期待どおりに発達しなかった。

 ロードセップ博士は、「性染色体がXYでSRYがあれば牡馬であるはずです。しかしこれらの馬には雄の生殖器ではなく発育不全の卵巣があるのです。牝馬のようです」と述べた。

 3つ目は間性個体(訳注:雌雄の中間的性質を示す生物個体)のグループである。つまりこれらの馬は身体的特徴や生殖器官から雄か雌かを容易に識別できない。

 ロードセップ博士は、「しかしこれらの馬の染色体をまとめて見ると、正常な雌のXX核型が確認できます。つまり3番目のグループは牝馬であるべきなのですが、そうではないのです」と語った。

異常を特定

 ロードセップ博士とその同僚は、テキサスA&M分子細胞遺伝学研究所で20年以上にわたってこのプロジェクトのための遺伝子サンプルを収集した。この研究所は馬の染色体異常を馬主に知らせるために検査を実施している。

 これらの検査は、馬が生殖不能などの状態にあり根本原因が不明である場合にとりわけ有用である。

 長年にわたり遺伝子サンプルはさまざまな性発達や生殖に障害のある牝馬から収集されてきた。それによると性染色体異常のある牝馬もいれば、そうでない牝馬もいた。研究者ははっきりとした科学的説明ができないことを十分理解している。

 ロードセップ博士は、「私たちはほかの多くの動物についても研究してきました。ほかの種と比較することで、馬におけるパターンに気づくことができ、このプロジェクトにつながりました」と語った。

 どのような変異が異常を引き起こしているのかを理解するために、ロードセップ博士とその同僚たちは、ゲノム配列分析を使って、生物のDNAに含まれる各遺伝子のゲノムの特徴を調べる。

 ロードセップ博士は「20年前はこのような規模の研究を行おうとしても費用が掛かりすぎ、サンプルも十分には揃っていませんでした。今ではより優れた技術、研究結果と比較できるような一層多くの馬の健康データがあり、より多くの共同研究者がいます」と述べた。

 ロードセップ博士は分子細胞遺伝学研究所のメンバーのほかに以下の研究者とも協力した。

・ ブライアン・デーヴィス博士(VMBS獣医病理学部・小動物臨床科学部の准教授)

・ ライティス・ジュラス博士(VMBS動物遺伝学研究所の所長)

・ アラン・コンリー博士(カリフォルニア大学デービス校 馬のホルモン・プロファイリングを実施)

By Texas A&M University Press Release

(1ドル=約150円)

[bloodhorse.com 2024年1月30日「Texas A&M Gets Grant to Study Abnormalities」]


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