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2023年08月22日  - No.8 - 4

香港サラブレッド生産者連盟が発足(香港)【生産】


 この夏、香港サラブレッド生産者連盟(Hong Kong Thoroughbred Breeders' Alliance : HKTBA)が発足した。その初代会長であるアポロ・ング氏はこの動きが香港競馬界にどのように重要な発展をもたらすかについて語った。

HKTBAの発足について、またご自身のHKTBAとの関わりについて教えていただけますか?

 新型コロナが世界的に流行している最中に、HKBAについての初期のアイデアと枠組みが考え出されました。香港には生産地がありませんが、競馬界の熱心な参加者たちが少ないにせよある程度の馬を確保できるようにするために、世界中のサラブレッド・施設・牧場・種馬場に多額の投資をしてきました。しかしほかの競馬国とは違って、香港には関係者を代表するような生産者協会がありません。

 コロナ禍によって実際に会うことはできなかったものの、HKTBAの創設メンバーは連盟を結成する可能性について話し合ってきました。HKTBAの使命は、香港の馬主に生産についての知識を深める機会を提供し、競馬産業の将来の持続可能性を確実にすることです。

 商業的に実現可能な環境が香港にはないためにサラブレッドが生産できないことは理解しています。しかし香港がグレーターベイエリア開発計画に組み込まれたことで、とりわけ競馬の分野において予想もしなかったようなチャンスが今後生まれるかもしれません。実際、従化競馬場は香港ジョッキークラブ(HKJC)の競馬施行規程や規制に基づいて運営されています。

 今後10年~15年のあいだに商業的に実現可能な生産活動が行われるというのは時期尚早ですが、香港域内でも海外に向けても協力を促進するために準備するにはまさに今がうってつけの時期なのです。

 IFHA(国際競馬統括機関連盟)の会長でありHKJCのCEOでもあるウィンフリート・エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス氏には感謝しなければなりません。ブレスゲス氏にはHKTBAの発足に先立ち、このテーマについて多くのアイデアをいただきました。彼の世界中の生産界・競馬界に対する理解は誰にも負けないものであり、支援には感謝しています。

 私のサラブレッド生産との出会いは90年代にまで遡ります。趣味で種牡馬や繁殖牝馬のわずかな株を持っていました。それ以降、関心が高まり経験を積み重ねてきました。以前香港馬主協会(HK Racehorse Owners Association)の会長を務めたので、競馬界の人々は私のことをコーディネーターもしくは世話人だと思っています。そのためHKTBAの設立に向けて水面下で調整したり組織委員会の委員長を務めたりするのは私の務めです。幸いにもあらゆることがスムーズに進んでいます。

HKTBAの主な優先事項と目的は何でしょうか?

 世界中のサラブレッド生産界の向上に向けて、香港の馬主のあいだでサラブレッド生産に関する理解を促進し、世界および中国本土の生産者や生産統括団体との関係を発展させることです。

 HKTBAは非営利団体であり、執行委員会のメンバーは名誉職として、生産&競馬コミュニティに貢献しています。

HKJCには、現在生産者である馬主は多いのですか?

 繁殖牝馬を1~2頭所有しているような、趣味で小規模な生産を営む人はいるかもしれませんが、商業的な生産に積極的に参加しているHKJCの会員は15人にも満たないはずです。

香港の馬主は繁殖牝馬や産駒をどこで繋養する傾向にありますか?

 HKTBAの創設メンバーの中には、すでに豪州やニュージーランドに自らの牧場や繁殖牝馬群を持つ人もいます。彼らの馬はスタッフによりよく世話されています。私自身はクールモア・オーストラリア、ウィデンスタッド、ニューヘイヴンパークなどに繁殖牝馬、1歳馬、当歳馬を預けています。また交配のために北海道に繁殖牝馬を送ったりもしています。

そうすると香港や中国本土での生産界の発展につながる可能性はあるのでしょうか?

 現在のところ、グレーターベイエリアでは商業的なサラブレッド生産は行われていません。しかしこれまで述べてきたように、香港の熱心な競馬参加者たちがHKTBAを結成して、タイミングと状況が同時に整えばどうなるかは誰にも分かりませんよ。

 また、山西省の張月勝氏が率いる玉龍グループは世界中の生産界できわめて活発に活動しています。HKTBAの設立セレモニーに張氏からお祝いのメッセージをいただきましたし、彼と会ってさまざまな国や地域における知識を交換できることを楽しみにしています。

サラブレッド生産への興味はどこから来たのでしょうか?

 香港で25年以上血統分析を専門とする競馬ライターとして活動してきました。香港への輸入馬に関する本を24年連続(1993年~2017年)で執筆してきましたが、ライターという仕事は密室の中に閉じこもっていてはいけないのです。

 私は1993年には豪州とニュージーランドの1歳馬セールにすでに参加しており、1995年には最初の牝馬ボンマタン(Bon Matin 父セントジェイド 母スターシャイン)を手に入れました。彼女は私が所有していた重賞入着馬スターステータス(せん馬)の半妹です。彼女はなんとか資格を得てマジックミリオンズ社のセリに上場されたわけですが、私に"繁殖牝馬として繋養したい"という気持ちにさせました。その後はご存じのとおりです。

 私たちの一族はオーストラレーシア(豪州&NZ)で多くの牝馬を出走させ、かなりの勝利を収めました。それは、ガストオブウインド[オーストラリアンオークス(G1)優勝馬、ウィンクスを破った最後の馬]、サンダーレディ[G2勝馬、VRCオークス(G1)2着馬]、スターファッション[G3勝馬、オーストラレーシアンオークス(G1)2着馬]などです。私は現在、豪州各地とニュージーランドに8頭の繁殖牝馬を所有していますが、その中の1頭セイクリッドウィットネス(Sacred Witness)は世界チャンピオンスプリンター、サイレントウィットネスの全妹です。

香港での適性を考えると、どの種牡馬や血統が好ましいと思われますか?

 香港の今シーズンのチャンピオンサイアーはスタースパングルドバナーです。産駒には、硬い馬場に対応し、序盤から飛ばしていき(少なくとも先行勢のすぐ後ろのポジションを取り)、精神的にも肉体的にもチーク材のようにタフであることが求められます。スタースパングルドバナーはG1馬カリフォルニアスパングルや、我々が所有する中で最も成長著しいビューティーエターナル(Beauty Eternal)を送り出しています。

 もう1頭、香港に適した産駒を送り出す種牡馬はニュージーランドのパーインカント(Per Incanto)です。産駒の気性は悪くはなく、さまざまな馬場をこなす万能性があります。ダートでも芝でも、シャティンでもハッピーバレーでもちゃんと対応します。

 北半球でも南半球でも実績のある種牡馬ホーリーロマンエンペラーも毎年のように素晴らしい産駒を出しています。彼の産駒はあらゆる種類の馬場状態をこなし、いつもお行儀が良いのです。その典型は数年にわたって香港年度代表馬に選ばれたデザインズオンロームや、ダートチャンピオンのリッチタペストリーです。

 とりわけ際立つ血統を挙げるとすればデインヒルですね。デインヒルは香港で自らの偉業だけではなく、その産駒や孫によっても存在感が示されています。競馬ライターから引退する前に、香港の新聞に"デインヒル系"について30日間にわたって連載したこともあります。

By Tom Peacock

[Racing Post 2023年7月29日「'It is the right time to build a bridge to facilitate co-operation' - HKTBA sensing growth in Hong Kong breeding」]

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