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2023年10月20日  - No.10 - 1

パリ会議:「馬の福祉」と「社会的価値観」が中心的な話題(国際)【開催・運営】


 第57回IFHA(国際競馬統括機関連盟)年次総会(通称:パリ会議)は10月2日(月)、サンクルー競馬場で開催された。今年は「馬の福祉を確保すること」、「社会からの期待の変化を探ること」、「世界各地の競馬界の対応」に焦点が当てられた。
 開会と閉会の挨拶を行ったIFHAのウィンフリート・エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス会長はこう語った。「私たちは本日、馬の福祉というIFHA創設以来の主要な使命を続行しました。メンバー国は長年にわたって国内外で、競走馬を保護するために取り組んでいます。今年の会議はその一連の重要な活動に焦点を当て、それを土台としていく機会をもたらすものです」。
 「本日の会議では多くの革新的なアイデア・提案・共同作業について議論がなされ、元気をもらうことができました。サラブレッドの誕生から競走生活、そして引退後のアフターケアに至るまで、サラブレッドの生涯のあらゆる段階における福祉をさらに向上させ、IFHAの基準に対する一般的な認識を深めていける可能性があります」。
 オープニングセッションでは変わりゆく社会における競馬に焦点が当てられ、高名なキャスターのニック・ラック氏が司会を務めた。基調講演は国際馬術連盟(FEI)の馬倫理・福祉委員会の委員長を務めるナタリー・ワラン(Natalie Waran)教授が行った。
 ワラン教授はそのスピーチで、社会からの期待が変化する中で積極的に検討すべき馬スポーツの重要な戦略を示した。その中には、馬の福祉を向上させるために競技馬を直接扱う人々への教育の質を継続的に高めることも含まれていた。
 ワラン教授はこう語った。「動物に関する社会的価値観の変化は、多岐にわたる業界にさまざまな点で影響を及ぼしています。社会が個々の馬スポーツを区別していないことを認識することが大切です。スポーツに関わる馬に対して懸念が高まっていることを示すデータが十分にあります。競馬界はイメージと現実の両方に積極的に関与すべきです。そしてより充実した福祉を確保するために、変化への真のコミットメントを示さなければなりません」。
 基調講演に続き、競馬界の上級役員たちがパネルディスカッションにおいて、馬の福祉と競馬をめぐる状況を分かりやすく伝えるためのアプローチと戦略を共有した。登壇者は、リサ⁻ジェーン・グラファール氏(引退競走馬の再調教を行う慈善団体オードゥラデピストの事務総長)、ジュリー・ハリントン氏[BHA(英国競馬統括機構)のCEO]、ナジャ・トンプソン氏(ニューヨーク・サラブレッド生産者協会の専務理事)である。
 そのパネルディスカッションの後、米国のHISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)のチャールズ・シーラー会長が、アンチドーピング&薬物規制(ADMC)プログラムの実施状況のレビューや今後の方向性などHISAの最新情報を次のように伝えた。
 「HISAは連邦取引委員会の監督のもと、競馬界の関係者と連携して競馬の変革のために取り組んでいます。この取組みの要点は、馬をめぐるケアのエコシステムを構築することです。今後の米国競馬はワクワクするものになると考えております。守るべき豊かなレガシー(遺産)があることを認識しているのです」。
 午後のセッションは、JRA(日本中央競馬会)の伊藤裕参与による第40回アジア競馬会議についてのプレゼンから始まった。会議のテーマは『つなぐ、未来へ向けて疾走しよう(Be connected, stride together)』で、2024年8月27日~9月1日に札幌で開催される。
 これに続くパネルディスカッションには競馬統括機関や獣医学部門のリーダーが登場し、競走馬の保護について議論した。登壇者は、ジェームズ・ギヴン氏(BHA馬規制・安全・福祉担当理事)、ジョシュ・ルビンシュタイン氏(デルマー・サラブレッドクラブ会長)、ブライアン・スチュワート氏(香港ジョッキークラブ獣医臨床サービス主任)、ソニア・ウィットレック氏(フランスギャロ血統書&ドーピング規制部門主任)である。
 スチュワート氏はこう語った。「競走中に重傷を負ったり予後不良事故に遭ったりすることは統計的には非常に少ないのですが、さらに減らさなければなりません。競馬界は過去20~30年間にわたり、競走馬の福祉を向上させ、怪我の発生率を減少させるために多くのことに取り組んできました。しかし、まだまだやるべきことがあります」。
 「バランスを適切に取ることはトレーニングの一部になっていますが、テクノロジーが役立つこともあります。もし問題があれば正確な診断ができなければなりません。そしてその馬の今後の管理の指針としなければなりません。現在あらゆることが一体化しつつあり、大きな効果をもたらされるかもしれないという期待感をもっています」。
 午前中のセッションと同様に、午後も競馬界全体の教育の重要性が強調された。
 ギヴン氏はこう述べた。「私たちは"教育する"という言葉に何度も立ち返ります。テクノロジーだけを重視して、決断の責任をコンピューターに委ねないことが重要なのです。ホースマンシップをもって取り組むべきです。調教師だけでなく獣医師も同じですね」。
 今回のパリ会議の最後のセッションでは、利害関係者の関与の強化、とりわけ馬の福祉に対する一般の人々の関与と反応について詳しく考察された。英国ジョッキークラブのCEOネヴィン・トゥルーズデール氏はセッションの始めに、効果的な解決策とコミュニケーション管理に関してジョッキークラブが経験したことについてこう語った。
 「この件については一丸となって取り組む必要があります。業界として明確なメッセージを持ち、誰もが同じことをくり返すこと、それは英ダービー(G1 エプソム)の準備段階とレース後において、私たちにとって本当に重要なことでした。執拗なまでに、競馬というスポーツをより安全なものにし、そのストーリーを伝え続けなければなりません。説得できる観客がいることを統計は示しています。しかし、それは私たちが成し遂げている変化について明確に理解していなければ機能しません。動かずにじっとしていてもしかたありません」。
 ピエールポン・コンサルティング&アナリティクスのロバート・グリーン氏は、競馬界がどのようにしてデータに基づいた洞察を活用してより積極的な方針を策定するのかについて発表した。
 「データに基づく危機管理の洞察のためには、適切な観客を対象として正確な測定を行うことが必要ですが、それだけでは十分ではありません。ある状況において自分がどこから出発しようとしているのかを正確に知ることは重要ですが、問題や懸念について伝達するためのあらゆる方法を試してみることも重要です。説得の科学ですね。より良い未来を望むのであれば、おそらくそれを創造していく必要があるのでしょう。競馬のストーリーを語るのにより良い方法もあれば悪い方法もあります。どのようにしてストーリーをより良く伝えられるか入念に考えてみてください」。
 第1回パリ会議は1967年10月9日に、フランス馬種改良奨励協会により組織・主催された。1994年からはIFHAが主催している。JRAは2021年からパリ会議の公式パートナーとなった。今年のパリ会議には約40ヵ国から代表者が集まり、ほかにも競馬界の重鎮やメディア関係者が多数出席した。

By International Conference of Horseracing Authorities

[bloodhorse.com 2023年10月2日「Equine Welfare, Social Values Focus of IFHA Conference」]


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