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2023年01月23日  - No.1 - 3

ドバウィ、20歳でリーディングサイアーに(イギリス・アイルランド)【生産】


 歴史を作る存在と同時代を生きることは簡単なことではない。障害競走のリチャード・ジョンソン騎手は16年にもわたり驚異的なA・P・マッコイ騎手の二番手に甘んじたのちに、ようやく自らスポットライトを浴びることができた。

 サラブレッド種牡馬のランキングでは、ドバウィが同じく称賛に値し信頼のおける二番手の役回りを演じてきた。ガリレオさえいなければ向かうところ敵なしと見なされていたことだろう。

 ドバウィは英国&アイルランド・サイアーランキングで4度にわたり伝説の種牡馬ガリレオの2位となってきた。直近では2020年だ。このランキングは英愛の生産者にとって最も重要なものである。

 2013年まで遡れば、ドバウィは2度ガリレオの3位となっている。2021年にはガリレオが王座からすべり落ちたものの、生産界が7月に死んだガリレオの後継種牡馬としてフランケルに期待する中で、産駒の獲得賞金によるこのランキングでドバウィはまたもや銅メダルの位置に甘んじることとなった。

 長年待ち構えていた種牡馬がついにこの栄冠を獲得したことは、まさに正当かつ当然の結果といえるだろう。

 英国とアイルランドのカテゴリーで、ドバウィは27レースで実頭数23頭のステークス勝馬を送り出している。それには英2000ギニー(G1)を制した3頭目のドバウィ産駒となった不運なコロエバス(ゴドルフィンの自家生産馬)が含まれる(訳注:コロエバスは10月のG1ムーランドロンシャン賞で負傷して予後不良となった)。また英セントレジャー(G1)ではエルダーエルダロフが優勝し、プラチナジュビリーS(G1 ロイヤルアスコット開催)ではネイヴァルクラウンがクリエイティブフォースを率いて先頭でゴールインしドバウィ産駒のワンツーフィニッシュを決めた。ネイヴァルクラウンは新種牡馬としてキルダンガンスタッドで供用される。

 ドバウィ産駒の獲得賞金は現在のところ総額647万ポンド(約10億3,520万円)に上り、このランキングが確定するまでにはわずかな競馬開催日とマイナーなオールウェザー競走が残されているだけである。シーザスターズを抜いて2位となっているフランケルを約120万ポンド(約1億9,200万円)の差で引き離している。

 ガリレオが父サドラーズウェルズのあとにトップに君臨し、この父子が頂点に立つ時代が30年続いた。そして障害競走界では首位争いするのがブライアン・ヒューズ騎手やハリー・スケルトン騎手だけではなくハリー・コブデン騎手やボーエン兄弟などがこれから挑戦を仕掛けてくるのと同様に、種牡馬の世界も変化しやすい時代に突入しつつあるのかもしれない。

 首位3頭のどの馬も、高額賞金のマイル戦やミドルディスタンス戦を制する馬を送り出してきたかどうかを抜きに評価できないだろう。

ガリレオにしてもその点で無視して良いというわけではない。彼はクリテリウムアンテルナショナル(G1 1600m)を制したプラウドアンドリーガルを送り出している。それにアルファセントーリの初仔サターン(Saturn)などバリードイル(クールモアの調教拠点)から台頭しつつある欠点のない血統の多くの2歳もしくは3歳の産駒、そして優良ステイヤーのキプリオスなど古馬になっても現役を続行している産駒グループがいるのだから。

 このベテラン種牡馬は最終的には3年連続で最優秀ブルードメアサイアー(母父)となっている。この部門の常連となっていた故ピヴォタルを抑えての首位である。ガリレオがこの座をほかの種牡馬に譲り渡すにはあと数年かかるかもしれない。

 ドバウィが2022年に世界中で送り出したG1馬7頭のうちBCマイル(G1)を制したばかりのモダンゲームズは、2023年も現役を続行して活躍する可能性がある。BCターフ(G1)を制したせん馬レベルズロマンスも同様である[訳注:モダンゲームズはドバウィの2022年最高賞金獲得産駒である。通算成績7戦3勝(2着2回、3着1回、着外1回)。獲得賞金202万6,631ポンド(約3億2,426万円)]。

 2022年のドバウィの2歳産駒は大器晩成型に見えたが、インペリアルエンペラー(チャーリー・アップルビー厩舎)はシーズン終盤にニューマーケットで鮮烈なデビューを果たした。この馬はゴドルフィンの2020年ワールドベストレースホース、ガイヤースの近親である。また、牝駒ダンシングゴッデス(Dancing Goddess 母ウィンターライトニング)、タルジャマ(Tarjamah)、スターゲスト(Star Guest)などの2歳馬が、オールウェザーで活躍している。

 そして、ドバウィのもとを訪れた繁殖牝馬の質の高さにも注目したい。

 クールモアのノーネイネヴァーは2歳産駒ブラックビアードとリトルビッグベアを送り出してトップ10に入っている。またウートンバセットがアイルランドで送り出す産駒は徐々に浸透していくはずだ。しかしクールモアはポスト・ガリレオ時代の新たな種牡馬を発掘しなければならない。

 マンチェスターシティやチェルシーが若手を育てるよりも選手を獲得してきたように、"結果重視のビジネス"という決まり文句を改めて使うことができる。クールモアは5年後ではなく今すぐに看板となる種牡馬を必要としているのだ。

 ダーラムホールスタッドにいるドバウィにはここしばらく、クールモアの10頭以上の真のエリート牝馬が送り込まれている。即戦力とは言えないまでも、チームが彼の産駒を扱うことにいっそう精通するようになれば、やがてその産駒を看板種牡馬にできるはずである。

 ダーレミ・ロードデンドロン・エネイブル・ローレンスなどが2022年にドバウィのもとに送り込まれた。しかしフランケルが忘れられているわけではない。クールモアとダーレーはフランケルにも牝馬を送り込んでおり、ジャドモントは2023年の種付料を20万ポンド(約3,200万円)から27万5,000ポンド(約4,400万円)に引き上げるほどフランケルに自信を持っている。ドバウィの種付料もさらに引き上げられ35万ポンド(約5,600万円)に到達する。

 フランケルが欧州リーディングサイアーの座を維持したのは、驚異的な凱旋門賞優勝牝馬アルピニスタをはじめ、ホームレスソングス・ナシュワ・ウエストオーバーのようなクラシック勝馬、デューハーストS(G1)優勝馬シャルディーンに助けられた部分が少なくない。カーステン・ラウジング氏が所有する芦毛の万能馬アルピニスタ以外のすべての馬が来年も現役を続行して活躍することが期待されている。

 ドバウィは2023年1月で21歳となるために、少なくとも近年の130頭程度の多頭数への種付けをそれほど長く続けることは期待できない。マクトゥーム家も、そしてドバウィを交配相手に選べるような良血牝馬を所有する生産者も、彼を最大限に活用することを目指すことになるだろう。

 2022年のドバウィ産駒の獲得賞金総額が過去最高となることは、レーシングポスト・レーティング(RPR)のより詳細な種牡馬分析によってもお墨付きが与えられていた。RPR80以上(138頭:72%)、RPR 100以上(57頭:30%)、RPR 115以上(15頭:8%)とほぼすべての指標でリードし、さらに1歳セリでの牡駒・牝駒の平均価格と中間価格でも首位に立っていた。

 ドバウィはダーレーの種牡馬としてこれらの快挙を初めて達成した。またモハメド殿下にとって特別な重要性をもつ馬、父ドバイミレニアムのレガシー(遺産)を継続していることでダーレーの過去・現在・未来を象徴する存在となっている。ちなみに、この2頭には父子としてのつながりと同様にお伝えするのにふさわしいつながりがある。2頭の最盛期に鞍上を務めたのがフランキー・デットーリであるということだ。デットーリはドバイミレニアムでドバイワールドカップ(G1)、ドバウィで愛2000ギニー(G1)を制している。

 ドバウィの息子ニューベイはバリーリンチの新進気鋭の種牡馬であり、サフランビーチ・ベイブリッジ・ベイサイドボーイという優秀な3頭の産駒のおかげでランキングの6位に入った。ナイトオブサンダーはすでに優良種牡馬の地位を確立しており、今後トゥーダーンホットやガイヤースのような種牡馬に期待がかかっている。

 ハバナグレイ(父ハバナゴールド)が話題にならない日はほとんどないようだ。ハバナグレイは、スーネーション(父スキャットダディ)との注目された争いを大差で制し、現在までに36頭の産駒が勝ちあがり、産駒獲得賞金が100万ポンド(約1億6,000万円)強で、ファーストシーズンサイアーのタイトルを獲得した。

 フライングファイブS(G1)優勝馬ハバナグレイを管理したハーパー家のホワイツベリーマナースタッドには改めて敬意を表するべきだろう。またこの馬の種付料をリーズナブルな1万8,500ポンド(約296万円)に抑えた点も評価できる。

 上品なシユーニ(父ピヴォタル)はある意味、フランスで最も優秀な種牡馬だが、2年獲得していたフランスでのリーディングタイトルをフランケルに譲った。アルピニスタが達成した凱旋門賞とサンクルー大賞(G1)での獲得賞金は、600万ユーロ(約8億4,000万円)以上のフランケル産駒の獲得賞金総額のほぼ半分を占める。またオネストはパリ大賞(G1)を、インスパイラルはジャックルマロワ賞(G1)を制している。

 ドイツはアドラーフルークの後継種牡馬を渇望している。アドラーフルークは前年にこの世を去ったにもかかわらず難なくドイツのリーディングサイアーにふたたび輝いた。2022年に最も活躍した産駒は重賞勝ちを果たした聡明な牝駒インディア(India)である。

 ジャパン(父ガリレオ)や来年アウエンケル牧場で種牡馬生活を開始する凱旋門賞優勝馬トルカータータッソ(父アドラーフルーク)などが加わることで、ドイツ生産界が一新されるのを目の当たりにするのは励みになることだ。もう1頭のアドラーフルーク産駒、イキートスも早くから有望視されている。

 イタリアのリーディングサイアーに輝いたのは、ソシエタ・アグリコラ・ディ・ベスナーテで供用されているアルバートドック(父ディープインパクト)である。これまで2世代の産駒が競走年齢に達しており、2021年の覇者アルカノをわずかに抑えてのタイトル獲得になった。
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By Tom Peacock

(1ポンド=約160円、1ユーロ=約140円)

[Racing Post 2022年12月19日「From silver to gold: Dubawi's rise to land his first sires' title aged 20」]


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