TOPページ > 海外競馬情報 > 香港ジョッキークラブ、ワールドプールの顧客層の大幅拡大を標榜(国際)【開催・運営】
海外競馬情報
2023年01月23日  - No.1 - 1

香港ジョッキークラブ、ワールドプールの顧客層の大幅拡大を標榜(国際)【開催・運営】


 世界中のパリミュチュエル賭事業者と香港ジョッキークラブ(HKJC)の共同事業であるワールドプールは、2019年に12の競馬開催日を対象に開始された。2023年には少なくとも22開催日を対象とする予定であり、主催者はさらに高い目標を掲げている。

 HKJCのCEOウィンフリート・エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス氏は、「世界のトップ100・G1レースのすべてを対象にワールドプールを促進するというビジョンを持っています」と述べた。

 また、2022年の英ダービー(G1)で過去最高の発売金674万ポンド(約10億7,840万円)を記録するなど英国とは最も強い協力関係を築いていること、短期的には豪州とドイツを視野に入れていることを指摘した。さらにPMU(フランス場外馬券発売公社)との現在進行中の対話を"興味深い議論"としながらも"すぐには結実するとは思っていない"と語った。

 そしてブレスゲス氏は、「今後5年間で実現したいことは顧客層を大幅に広げることです。現在、取引の70%は香港からのものです」と付け加えた。

 UKトート社を含む主なプール賭事運営業者のあいだでは、出走取消や騎手変更のような情報のデータ受け渡しを標準化する新しいプロトコルに関する取組みが行われている。

 ブレスゲス氏は競馬ルールを完全に一致させることは"長い道のり"であると述べた。しかし、新しい鞭使用ルールに違反した場合の失格処分をレース後の裁定が完了するまで延期するというBHA(英国競馬統括機構)の最近の決定を歓迎している。そして、「着順がその日のうちに変更されないのであれば、馬券購入者は満足するでしょう」と述べた。

 一方、ブレスゲス氏は香港の競馬と馬券発売のコロナ禍の影響からの回復を注視し続けている。最近になってようやく、ハッピーバレー競馬場とシャティン競馬場に観客が戻ってきたところである。

 「2週間前からは、一般の人々が迅速抗原検査を受けることなく競馬場に入場できるようになっています。今回感染対策が緩和されたことは、私たちにとって非常に重要なことでした。スポーツイベントを行う際には雰囲気が重要であり、香港がふたたび開放されたことを示せて嬉しく思っています」。

 「テクノロジーへ投資したことは大きく報われました。とりわけ、競馬場が無観客だった時期や場外馬券発売所(OCB)が閉鎖されていた時期はそうです」。

 「アカウント登録者数は約220万人で、そのうち130万人が定期的に馬券を購入しています。問題は、OCBを閉鎖せざるをえなかったときに約30万人がアカウント番号を忘れてしまって、それらのアカウントを可能なかぎり復活させなければならなかったことです」。

 「また、的中馬券の払戻しを希望する人が50万人ほどいらっしゃいました。機会があれば払戻しをするためにアカウントを稼働してもらい、競馬場でもそうしました。そしてアカウント番号を忘れてしまった人のアカウントを使えるようにするとっかかりを作るようにしました」。

 「状況をがらりと変えられたのは、賭事アカウントを銀行口座と結びつけられるようになったからです。従来は送金に1〜2日かかっていましたが、"ファースターペイメント(Faster Payment)"というシステムでほぼ瞬時に口座間の送金ができるようになりました。この利用を押し進め、今では110万件のアカウントがこのシステムにリンクしています。HKJCはこの決済システムを利用している最大の事業者です」。

 「現在の馬券売上げの約90%がデジタル基盤を通じたものです。競馬場に来る人の中にも現金を使わない人は多いのです」。

 ブレスゲス氏は説明した。「コロナ危機への対応により、ほかの変化に拍車がかかりました。場外馬券発売所(OCB)の多くを体験センターに切り替えて、より若い顧客を引きつけようと考えています。OCBは今や典型的な香港スタイルのカフェと併設されており、朝食・ランチ・夕食がとれるところもあります。馬券を購入する場所というよりも体験センターです。すでに従来のOCBよりも多くの人が新たにアカウント登録しているのを私たちは目の当たりにしています」。

 香港の2つの競馬場でも同様に重点の置きどころを変えており、ブレスゲス氏はそれを「競馬観戦のあり方を変える大がかりな取組み」と表現している。

 そしてこう語った。「この2年間、一般の人々は競馬に参加できませんでした。そのため、習慣が変わってしまっています。最近開催された香港インターナショナルジョッキーズチャレンジと香港国際競走は、人々を競馬場に呼び戻すために価値ある提案を開始するための重要な機会となりました。というのは、定期的に競馬に行く人々にはオンラインでしか馬券を購入しない人々よりもはるかに高い定着率と活動率があると、すべての統計が示しているのです」。

 「だから競馬場での体験にいっそう親しんでもらえるよう、レジャーやエンターテインメントなど馬券購入以外も楽しみたい顧客のために、プロの馬券師向けのスペースの一部を転換するつもりです」。

 「おそらくどの競馬開催国もZ世代(1990年代半ば~2010年代前半に生まれた世代)を引きつけるのに苦労しているでしょう。ですから、デジタル分野からスタッフを迎え入れ、顧客戦略に焦点を合わせます。まだ誰であるかは言えませんが、大手デジタル基盤で働いた経験のある人です。Z世代は競走成績を読まないので、よりゲーミングに近い体験を提供しようと考えています」。

 「次世代は競馬商品(レース)だけに興味を持たないでしょう。エンターテインメントの要素もなければなりません。世界的に見ても顧客層の高齢化が顕著であり、ほかのレジャーとの競合に直面しています。競馬場での体験がなければ、ただのオンライン賭事ビジネスになってしまいます。これでは競馬の長期的な持続可能性を作り出せません」。

By Howard Wright and Bill Barber
(1ポンド=約160円)

[Racing Post 2022年12月19日「World Pool organisers set sights on 'considerable widening' of customer base」]


上に戻る