TOPページ > 海外競馬情報 > パリ会議:「公正確保」と「ファン層拡大」が中心的な話題(国際)【開催・運営】
海外競馬情報
2022年10月20日  - No.10 - 1

パリ会議:「公正確保」と「ファン層拡大」が中心的な話題(国際)【開催・運営】


 40ヵ国の代表者たちが10月3日(月)の第56回IFHA(国際競馬統括機関連盟)年次総会(通称:パリ会議)に出席した。コロナ禍のもとでのバーチャル会議を経て、3年ぶりに顔を合わせての会合となった。

 講演者たちが会議プログラム通じて取り上げた2つの重要な課題は、「公正確保」と「ファン層拡大」だった。

 IFHAのウィンフリート・エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス会長は開会の挨拶でこう語った。「公正確保は競馬の基盤です。私たちが下した決断をすべて伝えなければなりません。コロナ禍により、ファンや馬券購入者が楽しんで競馬に参加する方法が本質的に変わりました。満足度の高いデジタル顧客体験が鍵であり、一般的なデジタル進化の傾向は、すべての業界関係者が新たな技術や行動に迅速に適応する必要があることをさらに強調しています」。

 一日を通じて、米国のHISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)、世界的に競馬の魅力を広げること、競馬界の気候変動への対応、コロナ禍で得た教訓などについてプレゼンが行われた。

 エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス会長は7月1日に安全ルールを施行したHISAについてこう述べた。「HISAの導入は、米国競馬界における規制アプローチの記念碑的な転換となります。IFHAは競馬ルールの国際的調和という重要な目標を追求しており、このアプローチを歓迎しています。HISAがルールを策定するにあたり『競馬と生産及び賭事に関する国際協約(通称:パリ協約)』を参照したのは重要なことです。すべての競馬管轄区における最高水準の公正確保の形成を支援する中でIFHAの影響力が示されました」。

 米国ジョッキークラブのスチュアート・S・ジャニー(Stuart S. Janney III)会長は1つ目のセッションで「米国ジョッキークラブは今後も人材と経済的資源を活用して公正を確保し、競馬を発展させていきます。私たちは熱烈にHISAの活動を支持します」と語った。

 続いて、HISAのCEOリサ・ラザルス氏がHISAの設立、現在の課題、今後の計画などについて概要を説明した。

 HISAの対話に続いて、リシ・パーサド氏によるトニー・パーカー氏(元バスケットボール選手・馬主)へのインタビューでは、ファンエンゲージメント(ファンとの深いつながり)に焦点が当てられた。その後の討論会には、PMU(フランス場外馬券発売公社)の最高マーケティング責任者であるエマニュエル・ヴァッシェ氏と、PMUの数々のキャンペーンを担当した広告代理店バズマン(Buzzman)のジュリアン・ルヴィラン社長が参加し、競馬への関心を広げるための革新的な手段を引き続き検討した。

 パーカー氏はこう語った。「誰もが競馬は億万長者のものだというビジョンを持っています。普通の人は馬の世界には参入できないと思っているのです。しかし実際はまったく逆です。どうすればそのイメージを変え、皆を引き込むことができるのでしょう?SNSを使って様々なことをやってみましょう。これまでとは何か違うものをもたらし、若い人たちや新たにやって来て競馬を見る人たちにもっと楽しんでもらいたいですね」。

 「SNSではそこにいる友人たちから『どうやって馬の世界に参入するの?』と聞かれます。もし心配だったりお金がかかりすぎると思ったりするのであれば、5%から所有すればいいのです。ゆっくりやっていけば馬の世界について学ぶことができます。より多くの観客を呼びたいのであれば、もっとたくさんのことをしなければなりません。彼らに向けて宣伝をしていかなければなりません」。

 その後のパネルディスカッションには、マッキンゼーのシニアパートナーであるクラリス・マニン-マレーズ氏と、BHA(英国競馬統括機構)の最高規制責任者であり報告書『英国競馬の環境サステナビリティ』を担当するブラント・ダンシー氏が参加し、気候変動について発表した。

 マニン-マレーズ氏は、「コロナ禍の前からスポーツにおけるサステナビリティ(持続可能性)への世界的な関心は高まっています。スポーツ産業には、サステナビリティに関する信憑性のあるストーリーを作り出すめったにないチャンスがあります。経済的にはまだ報われないかもしれませんが、消費者が正しい選択をできるようにする必要があります」と述べた。

 さらにJRA(日本中央競馬会)の理事長である後藤正幸氏、南アフリカ・ナショナル・ホースレーシング・オーソリティー(NHA)のCEOヴィー・ムードレー(Vee Moodley)氏、ジャーマンレーシング(Deutscher Galopp)の最高業務責任者であるダニエル・クルーガー氏がコロナ禍の影響について議論した。

 後藤氏は、「JRAがコロナ禍を通じて経験した最も重要なことは、競馬サイクルの価値連鎖(バリューチェーン)が止まってはいけないということです。生産・育成・調教・競馬のサイクルのうちどれか1つでも欠けると、歯車全体が止まってしまうのです。そのため、競馬統括機関はこのサイクルをいかに回し続けるかを優先し、状況に応じて適切な措置を講じる必要があります」と語った。

 会議の終盤には、レーシングヴィクトリア(RV)のカーリー・ディクソン総括部長(出資者・消費者・企業行動担当)が2023年2月にメルボルンで開催される第39回アジア競馬会議について発表した。

 総会では、エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス会長は競走馬理化学研究所(LRC)がIFHAの6番目の認証ラボになったことを称賛し、LRCの代理として後藤氏が任命証書を受け取った。

 パリ会議では9月に96歳で逝去されたエリザベス女王2世陛下を追悼した。エリザベス女王は競馬の最も偉大なアンバサダーとして熱心に国際競馬を支援され、世界中の競馬場の多くを訪問された。

 IFHAのウェブサイトでは、パリ会議のオープンフォーラムのライブ映像が配信される。会議が終了して数日以内に、ライブ動画の再生やプレゼンの視聴が可能となる。

By Andrew Chesser

[bloodhorse.com 2022年10月3日「Integrity, Fan Growth Focus of International Conference」]


上に戻る